第24話 え?姉さん?彼女さんの間違いじゃないの?

「…なるほどねぇ。二人してナンパに巻き込まれたと」


「ああ、それでまだ昼飯を食べれてないんだよね」


相馬と会ってから場所を移し、4人で座れる席を探してからそこに座って話している。その間に穂乃花と相馬と一緒にいた女性はスムージーを飲んでいた。


「んんーじゃあ、俺らで買いに行くか!一人にしてたらナンパに巻き込まれたんだろ?ならこの状況ならそんな状況起きないじゃん!」


「天才か!」


ちょっと悪ノリ気味にはなったが、相馬と一緒に昼飯を買いに行くことになった。ということで席を立ち、それぞれ声をかける。


「じゃあ、また買いに行ってくるね」


「うん、行ってらっしゃい」


「それじゃ、行ってくるから、姉ちゃんこの子と一緒に待っててね」


「うん、分かった〜」


そんな会話をして二人で買いに向かった。その中で二人の会話を頭の中で反芻していた。そんな中で、一つだけおかしいと思ったことがあった。


「というか!あれって相馬のお姉さんなの!?」


「そーだけどー。それが何かどうした?」


「今日最初に会ったとき、相馬の彼女に見えたんだけど!?何歳なの?」


「21だよー。というか、こんなこと話してるのが城戸さんにバレたらマズくない?」


「う、そっか。流石にこれ以上俺から触れるのはやめとこうか」


確かにこの話をし過ぎて万が一穂乃花にバレると割と真面目に身の危険を感じる。以前教室で凛斗が俺のことを茶化して穂乃花にキレられてて、その時にクラスが一瞬凍りついたっけか。俺の彼女ではあるけど、流石にそんな状態にはなりたくないかな。


「そうするのが吉だと思うよー。まあ、俺から話せば問題はあんまりないし、聞きたければ俺から話すよー」


「ほんと?なら聞きたいな」


とはいえ俺だって男だ。なんだかんだこういう他人のことには興味がある。向こうから話してくれるなら美味しいことしかないので、ぜひ聞かせてもらおう。


「そんじゃあ、姉さんの話だけど。さっき言った通り21歳で今大学3年生。こういう場所が大好きなんだけど確実にナンパされるから男避けとしてよく連れて来させられるんだよ。まあ、姉さんはなんだかんだ色々俺の手伝いとかしてくれるから好きだし。姉さんがちゃんと付き合うまではそういう男避けの役割を請け負おうかなって」


「なるほど。確かにすごい綺麗な人だったよね。確かにあれならナンパに巻き込まれてもおかしくなさそうだね」


「そういう弘貴たちもナンパされてるから人のこと言えないと思うよ〜。城戸さんが可愛いってのは学年中でも周知の事実だろうけど、城戸さんと付き合い始めて以降弘貴の事をカッコ良くなったとか思ってる女子がメチャクチャ増えてるらしいからね〜」


「嘘でしょ!?そんなことないと思うんだけど!?」


「その自分がかっこいいって自覚ないの、そろそろ改善しておいた方が良いんじゃないかな〜」


度重なる衝撃のカミングアウトを聞きながら並んでいる列の順番が来るのを待ち、順番が来てから四人分の昼食を注文し、受け取ってから二人の元へ戻った。


「ねえねえ穂乃花ちゃん、好きな人と付き合うってどんな気持ちなの?」


「ええっと、特別なことがなくてもただ一緒にいるだけで幸せな気分…ですね」


「へぇ〜そうなんだ〜。良いな〜私本当に好きって思える人を見つけられてないからな〜」


「き、きっと藍華さんなら見つけられますよ…」


そこには、中良さそうに話している二人の姿があった…いや、仲が良さそうなのは間違い無いんだろうけど、相馬のお姉さんの勢いが強すぎて穂乃花がちょっと押されている。


「はあ、またこんなことになってる。姉さん、そんなことしてるから友達もあんまり増えないんだよ」


「ええ〜でもこれが私だし〜。それにそーくんがいてくれれば友達はそこまでいらないし〜」


「…それで彼氏が欲しいとか、だいぶ強欲を極めてるよな。姉さんって」


「テヘペロッ」


「褒めてない」


そんな風に二人が話している様子を見ると、仲がいいんだなと感じる。とはいえ、クラスではいつも明るい相馬が割と低血圧気味に返しているのを見ると、多分そこだけはどうにかして欲しいのだろう。


というか、相馬、家ではそーくんって呼ばれてるんだ。ちょっと意外。


「ま、そんなことはさておき、昼飯にするか。こっちが俺で、これは姉さんの」


「あ、そうだね。はい、穂乃花」


「あ、ありがとう!」

***********************

四人で歓談しながら昼食をとり、今は組み合わせを変えて俺は相馬のお姉さんの藍華さんと二人でいる。穂乃花は相馬と一緒にいるので、ナンパには巻き込まれることはないないだろうし、相馬が穂乃花を口説き落とすみたいなことはしないだろうからそこら辺安心だろう。ただ、こっちは一つだけ不確定要素がある。それは…


「ねぇねぇ弘貴くんってさ〜、穂乃花ちゃんと初めて出会ったのはいつだったの〜?」


「えっと、俺ははっきり覚えて無かったんですけど、俺たちが5歳の頃に会ってたみたいです。そのとき穂乃花が発端で起きちゃった喧嘩の仲裁をして、そこから好きになってた感じですね」


「へぇ〜そうなんだ〜。なんだかすごいロマンティックだね〜」


そう、藍華さんの距離感がバグレベルに近いのである。それも、ただ近いだけじゃなく、当たり前にボディータッチをしてくる。多分、俺と穂乃花が付き合っているのもさっき穂乃花が話しているので分かっているとは思うが。


「あ、あの?なんというか、色々当たってるんですけど?離れてもらっても良いですか?」


「ええぇ〜でも、なんだかこうしていたい気分なの〜」


「いやだからって、ここまでしなくてもいいじゃないですか」


その、うん。藍華さんの体の色々が当たってるんだ。さっき穂乃花とウォータースライダーに乗った時にも穂乃花の体が当たっていて、それはそれでドギマギしていたのだが、(ちょっと失礼だが)あくまでも穂乃花は高校生。藍華さんは大学生、しかも21歳というなんというかこう…魅惑的な年齢の相手でプロポーションも抜群。普通の高校生でこんな状況になったら魔がさして手を出してしまいそうになること間違いなしだ。俺は穂乃花という彼女がいるので無理矢理抑え込めているのだが、理性はゴリゴリ削り取られていく。


(ヤバイヤバイ!なんとか耐えられてるけど、一瞬でも気を抜いてたら持ってかれる!それにこんな状況穂乃花が見たらたとえ仲良くなった相手とはいえメチャクチャにブチギレそうなんだけど!?)


「あの、藍華さんは親友のお姉さんということでそんな関係になる気はさらさらありませんし、なにより俺には穂乃花っていう大事な彼女がいます。なので一旦離れてください」


流石にこの状態をずっと続けているのもマズいと思うので、キッパリと拒絶の意思を伝えておく。


「…ちぇ〜、つまんないの〜。うまくいけばワンチャン堕とせないかな〜なんて思っちゃったんだけど〜」


「それって、俺を穂乃花から奪おうとしてたんですか!?」


「アハハ、冗談だよ〜。ごめんね〜からかっちゃって」


そうわざとらしく言いながら、少し残念そうな顔を浮かべて俺から藍華さんが俺から離れる。そんな様子を見ながら、俺はただ苦笑いを浮かべることしかできなかった。

***********************

「まーた姉さん手出してるし」


「また?よくナンパされるって言ってたけどどういうことなの?」


「いや、俺と関わりがある男子と一緒になる機会があると、あんな風に手を出すんだよね。だいたいは冗談だとかそんな感じなんだけど…あれワンチャンガチだな」


「え!?本気なの!?ちょっとそれは許せないなぁ」


昼食をとった後に組み合わせを変えて今は日野くんと一緒にいるけど、向こう側にいる弘貴くんと藍華さんがくっついているのを見ると、なんだかものすごく嫉妬しちゃう。一番大好きなのは私なのに…。


「あ、でも離れたね。キッパリ断ってたし大丈夫そうか」


「ふぅ、なら一安心だね」


弘貴くんのことは信頼しているが、あんな風に詰め寄られていると、『もしかしたら相手に流れちゃうんじゃないか』って心配になっちゃう。こういうのを重い女っていうのかな?


「…ああいうの見てたら、城戸さんは浮気したいとか思う?」


「はあ?」


突然、日野くんからそんな質問をされた。


「日野くん、私には大切な彼氏がいるの。分かるでしょ?そんな人に浮気を勧めるとかどんな神経してるの?私からは絶対にしないし、相手から声をかけてきたって絶対にお断りだから!」


おそらく揶揄うつもりで言ったのだろうけど、あまりにも洒落にならないので、ちょっとキツめにかつ威嚇するように言っておいた。


「ごめん、流石に冗談だよ。悪かった。それより、僕らも話してるだけじゃなくてどこか遊びにいこっか」


「謝ってくれるなら別にいいんだけど…。でもまあそうだね!時間がある限り楽しもう!」


さっきはちょっとだけ変なこともあったけど、それは忘れて、今は今でその瞬間を楽しもう。

***********************

「今日はなんか変に付き合わせちゃってごめんね」


「そんなことないって〜。弘貴達に会えて楽しかったし〜」


「そうね〜。私も穂乃花ちゃんと仲良くなれて嬉しかったわ〜」


「藍華さん、いつか一緒に遊びに行きましょう!」


その後もみんなで遊び尽くし、いつのまにか日も暮れる頃になったため、俺たちは解散する運びとなった。出口を出て別れる直前までそれぞれ語らい、満足したところで帰路についた。


「楽しかったね〜」


「そうだな。相馬達に会ったのは想定外だったけどな」


「あ、そのことなんだけど。弘貴くん、藍華さんに言い寄られてたよね?あれは一体どういうことかな〜?」


「うぃ!?そ、それは…」


「言い淀むってことは、絶対何かやましいことあるんでしょ!私という彼女がいるというのに!」


「ご、ごめん!何も無かったって!だから許して!」


今日は色々あったけど、この一夏の思い出にはピッタリだったな。




《ちょっとおまけ》


「姉さん、弘貴のことを見てどう思った?」


「そうだね〜。そーくんが言ってたとおり、やっぱり私好みの良い子だったな〜」


弘貴達と別れ、姉さんと帰路についた。話している内容は、先ほど会って一緒に遊んだ弘貴達のことだ。


実は今回弘貴達を誘った理由として、姉さんが希望した部分がかなり大きい。ここ最近クラスの中で一番熱々なカップル。そんな話を聞いて色恋が大好きな姉さんが釣られないわけがない。『二人がどんな雰囲気か見てみたい』そんな姉さんの希望を聞き、父さんの力も借りて入場チケットを二人分渡した。話しかけたのはそれなりに時間が経ってからだったが、最初から二人の様子は観察させてもらっていたのはここだけの話。


「あ〜あ、私もあんな彼氏ができたらな〜」


「じゃあ、いっそのこと奪っちゃうってのは?」


あえて姉さんに意地悪な質問をさせてもらう。僕みたいな人間、本当なら色恋沙汰には首を突っ込んじゃいけないのに。


「それは一回考えたよ〜。だけどね、彼は確固たる意思を持っているし、穂乃花ちゃんとも仲良くなったからね。そんな子が大事にしている男の子を取ろうなんて、後からどれだけ大きなバチが当たるか分かったもんじゃないよ」


はじめはいつものような緩やかな雰囲気を纏いながら話していたが、途中からそれは鳴りをひそめ、普段見ることのないキリッとした表情に変わった。その目は、何かは分からないが決意を固めたように見えた。


「そっか…なら、僕も応援するよ。できる限りのサポートもするし」


「ん、ありがとね。そーくん」


思い出したくない過去は見ないふりをして、僕は今に向き合うことを決めた。

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