2章
第18話 迫るテスト、勉強デート?
城戸さんに告白して、美亜と話した次の日。学校に着くと、いつかの日と同じように、クラス中の男子から取り囲まれた。
「おい!城戸さんに告白して付き合い始めたってマジかよ!」
「あの騒動からよくそこまで漕ぎ着けたな!」
「どんな風に告白したか教えてくれよ!」
教室に入るや否や、一瞬で取り囲まれて質問攻めにあう。まさにあの時と同じようだ。ただし今回は前回みたいに責められるような聞かれ方ではなく、むしろ祝福ムードが強く感じられる。誰かに助けを求めようと周りを見渡すが、凛斗は笑ってスルーするし、恋人になった城戸さんも俺と同じように女子たちに取り囲まれていて、助けを求められそうにない。同じ状況の彼女に無言のエールを送り、俺は俺でこの状況に対して働きかける。
「分かった!話すから、まずは荷物を置きに行かせてくれ!」
そう言って急いで自席へ向かい、追いかけてきた男子達の相手をし始める。押し寄せる人の波をなんとか捌きつつホームルームが始まるまで耐える。そしてホームルームが始まる直前になると周りを取り囲んでいたクラスメイトたちは一様に席へ戻っていった。
「よっ、流石は今一番ホットな男。注目度が違いますなぁ」
「凛斗お前呪い殺されたいか。ヘルプ求めても何もしなかったこのクソ野郎が」
「まあまあ悪かったって。いやぁなんだかんだ嬉しいんだよなぁ弘貴に彼女が出来て」
おちゃらけた態度で話す凛斗を本当に呪い殺しかねないほどの視線を向けながら会話しつつ、ホームルームが始まるのを待つ。そしてホームルームが始まるや否や、担任からかなり重大な情報が発表された。
「えー2週間後に期末考査があります。近いうちに出題範囲や提出課題について各教科担当から説明があると思うので、しっかり勉強しておいてください」
その言葉が発せられた瞬間、担任が話しているにも関わらずクラス中から声が上がった。
「やっべ全然勉強してねぇ!」
「今回こそいい点取らなきゃ!」
「前回散々だったから今回落とすとマズい…」
「静かにしてください。とにかく、勉強はちゃんとしておいてくださいね。あとは…」
その後は特にこれといって重要な話もなくホームルームが終わり、担任が教室から出ていくとクラスメイトたちが一斉に仲のいいグループで集まって話し始めた。
「一緒に勉強しよ?」
「いいよー」
「頼む!数学教えてくれ!」
「またかよ…。今度学食1回奢りな」
「何度もすまん...!ありがとう!」
多くの人が仲のいい人たちで勉強会をするみたいだ。かといって俺はそこまで仲がいい人がいるわけでもないので、一人で勉強するかと考えていたところ、城戸さんがこっちに近づいてきた。
「ねぇ高梨くん、お願いがあるんだけどいい?」
「お願い?なに?」
俺たちが話し始めると、何故かクラス全員が会話を一斉にやめて俺たちの方を向いてくる。いや、なんでわざわざ会話しているのをやめてまでしてこっちを向いてくるんだよ。そんな事を思いながらも、城戸さんとの会話に集中する。
「えっとね、一緒に勉強してくれないかな?」
「勉強?城戸さんと俺が?成績なら城戸さんの方が俺より上だと思うんだけど?」
「うん、そうなんだけど、せっかくだから高梨くんと勉強したいな〜って」
そう言いながらはにかむ城戸さんを見ていると、不覚にも可愛いと思ってしまう。
(というか、彼女なんだから可愛いって思っても当然か)
そんな変な事を考えていると、周囲からの声が聞こえてくる。
「うわぁ、やっぱり付き合ってるんだ」
「城戸さんのあの顔…めちゃくちゃ可愛い…」
「ああぁぁ僕が先に好きだったのにぃぃ‥」
俺と城戸さんが付き合い始めたという事実を再確認する者、あの城戸さんを彼女に出来たという事実に対して尊敬の念を抱く者、勝手な言いがかりではあるだろうが、先に好きだったと言う者から向けられる嫉妬や憎悪の念など、様々な目線が突き刺さる。
(うわ〜この環境いづれ〜それに断れね〜)
実際、ものすごく魅力的な提案だと言うのも重々承知している。学年でも上位の成績を常に取り続けている彼女に勉強を教えてもらえるのならば、ほとんどの生徒は有無を言わさずにはいと答えるだろう。さらに俺は城戸さんの彼氏というこの上ない(?)大義名分を持っている。
「分かった。じゃあ早速今日から始めるか?」
「うん。放課後、図書室で勉強しよ」
会話が終わり城戸さんが席に戻ると、授業前にも関わらず一段とクラス中が騒がしくなった。
「おい!あの城戸さんが放課後図書室にいるみたいだぞ!」
「気になる…けど二人でいるのを邪魔するのはなぁ…」
「城戸さんがあれだけ嬉しそうにしてたら…ね?」
「しょうがねぇ、図書室の予定だったけど俺の家でするか」
やはりさっきのことで話している生徒がほとんどだった。なんだか俺たちのことを気遣うような人が多い気がするが、気にしたら負けだとでも思っておこう。
「愛されてますなぁ〜弘貴さんよぉ〜」
「…ちょっと本気で殺してやろうか」
そんなことをお構いなしに茶化してくる凛斗には、あとでお仕置きでもしてやらないとな。
***********************
授業が全て終わって、ホームルームまで終わってから図書室に向かう。テスト2週間前になると、勉強する人達のために閉門時間まで図書室を勉強用の部屋として開放しているのだが、今日は何故か人が少ない。もしかしたら、俺たちの噂が色々な学年に出回って、それでうちのクラスメイトのように気を遣ってここじゃない場所で勉強する人が増えたのかもしれない。
そんな中でもここに来ている人は何人かいた。同じクラスの櫨本さん、倉科さん、平塚さんのいつものグループ。他のクラスや学年の人たちも何人かいる。そしてなぜかいる美亜…。
(もしかして美亜ストーカー気質あるんじゃねえか?いや普通に考えたらただ勉強しにきただけかもしれないし…。いやでも普通に家でも勉強できるからな美亜は)
そんなことを考えてたら、少し遅れて城戸さんが図書室にやってきた。
「遅くなっちゃってごめんね。ってあれ?今日人少ないね」
「うん、なんでだろうね?」
「わからない。だけど、人が少ないから集中して勉強できるね。それじゃ、始めようか」
そう言って二人で座れて勉強道具を机に広げても余裕がありそうな場所にいって勉強を始めた。最初はお互いに何も話さずに取り組んでいたが、朝からずっと気になっていたことを城戸さんに聞いてみた。
「…あのさ、城戸さんって、俺より成績いいよね?なんで俺と勉強を一緒にしようってなったの?」
「そ、それは…高梨くんは、私の彼氏…だから…」
「そ、そうか(聞いてて思ったけど恥ずかし…)」
恥ずかしそうに言いながら笑う城戸さん。あまりにも可愛らしいその姿に、何人かの生徒は男女問わず息を呑んでいた。
こんな彼女がいる俺は幸せ者なのかもしれないが、この先色々と大変そうだなぁ。
そんなことを思いながら勉強を進め、お互い得意苦手な教科は教え合いながら時間を過ごし、閉門時間ギリギリになるまで勉強を続けた。学校を出て、夏場で明るい時期とはいえ時間もそれなりに遅いので、今日も城戸さんを送って帰ることにした。
「2日続けて送ってもらってごめんね」
「いいよ、全然。むしろ女子を一人で帰らせるのも心配だから」
「うん、ありがとう」
「というか、これからも勉強して帰るんだったら今日みたいに遅くなるわけだし、これからも一緒に帰ろっか?」
「えっ、いいの?」
「もちろん」
話しながら、昨日通った道を二人で歩く。明日からも同じように勉強会をすることになったので、これから先の約束もちゃんとしておいた。
「そういえばさ、高梨くんって私のこと名字で呼んでるよね。私もそうなんだけど、付き合ってるんだし、よかったらこれから下の名前で呼び合わない?もちろん、無理にとは言わないけど…」
突然、城戸さんからそんな提案をされた。今までそんなことをしたことがなかったから、突然の提案にビックリして、どうするかを考えていた。正直、付き合い始めたばかりだからまだそこまでの関係にはなってないとは思う。だが、城戸さんが期待しているようなそぶりを見せていて、考えがものすごく揺さぶられている。そんな中、城戸さんがさらに追い打ちをかけてきた。
「やっぱり、ダメ…かな…?」
上目遣いでこっちを見てきた。流石にこんなことをされたら断るのも失礼だろう。
「分かったよ、穂乃花…これでいい?」
「うん!いいよ!弘貴くん!」
下の名前で呼んだ瞬間、パアッという効果音が聞こえてきそうなほどに満面の笑みを見せながら俺のことも下の名前で呼んできた。まあ、穂乃花が幸せならそれでもいいか。
「それじゃ、また明日ね!」
「じゃあな、穂乃花」
別れ際、あえて下の名前で呼んであげたら顔を赤くして一瞬で家の中に逃げるように入って行った。もしかして急に呼ばれるのは嫌だったのだろうか?
***********************
「もう、不意打ちは卑怯だよ〜」
別れ際、予想だにしていないタイミングで穂乃花って呼んでもらえた。下の名前で呼び合おうって提案したのは私なのに、不意打ちを喰らって一気に恥ずかしくなってしまった。ようやく付き合い始められたのに、こんなので恥ずかしがっていたら、もっと仲良くなるのに時間がかかりすぎてしまう。
(どんな状況で呼ばれてもいいように、頑張って耐性をつけて行こう!)
私は心の中でそう誓った。もっと弘貴くんと一緒にいたいからね。
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