第17話 爆弾処理?

これまでなんやかんやあったが、俺と城戸さんは付き合うことになった。なんだかんだ時間も遅くなってしまったので、二人で屋上から出て一緒に帰るがてら俺が城戸さんを家まで送り届けることにした。とはいえ、俺には一つだけ気掛かりなことがある。


「─さて、今はひと段落着いたからいいけども、この後が一番苦労しそうだなぁ」


「もしかして妹さんのこと?前会った時の雰囲気からして、すごく大変そうな気がするけど」


「実際そのとおりだもんなぁ。あれ以降、凄いことになってるし」


美亜はあの日以降、何かあれば俺に突撃してくるような状態だ。普通に考えて、そんな状態のやつに対して今のこの状況を説明して理解してもらおうとか、無茶を通り越して理不尽を極めているぐらいにはキツイと思う。


「ちゃんと順序立てて説明して、それでいて向こうが納得できるように説明するのがいいのかな?」


「それが出来てかつ素直に聞き入れてくれるなら苦労はしないんだけどな〜」


そんな話をしつつ歩いて十数分、城戸さんの家の前にたどり着いた。城戸さんの住んでいる家は一戸建てで、白を基調とした美しい外観だった。


「それじゃ、今日はありがとう。また明日学校でね」


「うん、じゃあね」


そうして城戸さんが中に入っていくのを見送り、姿が見えなくなってからそこを離れて家へと向かう道へ進んでいった。帰っている最中も、頭の中は帰宅後にどんな事をすればいいのかでいっぱいだった。


(とりあえず話してみるけど、上手くいくかは本当にわからないし、下手すりゃ暴走しかねないな)


俺が立たされている状況は、まるでテロリストに仕掛けられた爆弾を処理する爆弾処理班のような状態だ。どうにかなる事を願いつつ歩き続け、家に到着し、扉を開けると


「お帰りなさい兄さん」


案の定というべきか、明らかに不機嫌そうな態度を示しながら美亜が玄関で待ち構えていた。


「ただいま美亜。ちょっとそこどいてもらえるかな?」


「嫌です。先に、今日あったことについて事細かに話してもらえますか?」


怒ってる、バリバリ怒ってる。もう一つでも手順を間違えたら爆発する一歩手前まできてる。それが態度にも表れているように、いつもは少し砕けたような口調だが今はめちゃくちゃに丁寧語になっている。それでも、俺は臆さず続けた。


「じゃあ、せめて荷物だけは部屋に置かせてくれ。じゃないと落ち着いて話もできないから」


「…まあ、それぐらいならいいですよ。私もついていきますけど」


何とか認めてもらえたところで、靴を脱いで家に上がり、部屋に荷物を置きにいく。先ほどの宣言通り美亜もついてきた。早めに話をするために、クッションを取り出して美亜に渡し座ってもらう。俺もクッションを出して床に座り、ちゃんと美亜と向き合う形をとった。


「まあ、ある程度噂で聞いたとは思うが、俺が城戸さんに告白して、付き合うことになった」


「ええ、知ってますよ」


「やっぱりか。そのことに関して、美亜は何か思うことがあるのか?」


「それはもちろんあります。何で兄さんがあんな女と付き合うのか小一時間問い詰めたい気分ですが」


美亜の様子は相変わらずだが、話を続ける。


「それはまあ、何も言わなかったのはごめん。でも、これだけはわかって欲しいんだ。あくまでも俺からすると義理であっても美亜は妹だ。たとえ俺が何か感情を抱いたとしても、恋愛感情じゃなくて家族愛とか兄弟愛だ。だから今この感情はおさめてもらえないか?」


今出来ることとしては、最大限の譲歩だと思う。あくまでも妹、恋愛感情だとか、そんな感情を抱くことはあってはならないと思う。すると美亜の様子が変わった。意識がなくなったように脱力し、俯いたままでいる。急にそんな状態になったことにビックリし、心配して声をかける。


「お、おーい。美亜?大丈夫か?」


声をかけて、肩を軽くゆする。すると美亜がゆっくりと体を起こした。とりあえずマズいことにはならなくて安心した。すると、美亜がゆっくりと話し始めた。


「…うん。分かったよ。ひとまずは私もこの件については無理に関わらない。だけど、今だけはね」


「今だけ…?」


「気にしないで。じゃ、この話はおしまい。私は部屋に戻るから、これ片付けといて」


そう言って美亜が立ち上がり、クッションを投げつけてから部屋を出ていく。投げられたクッションを掴み、美亜が出て行った扉を見つめる。


(今だけ…爆弾はまだ危険を伴っていると)


導火線ギリギリのところで火は消せた。だけど次に火が付いたら爆発は免れない。美亜の感情だとか周りの目だとか、気にすることはたくさんありそうだが、いろいろ気をつけながらこれから過ごしていこうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る