第8話 ファッションチェック?

「ん~どうしよ」


「どうしたんだ弘貴?普段悩むことの無いお前がこんなに悩んでるの」


昼休み、学食で食事を取りながら考え事をしていると、一緒に来ていた凛斗から質問された。


「この前の城戸さんと俺の関係あっただろ?あれの一件のことで」


「お、あの後何か進展でもあったのか?」


「昨日の放課後に城戸さんに呼び出されて、城戸さんと話したんだよ。で、向こうは正直に言うと振るつもりはなかった。それで友達から始めていこうってことになったんだ」


「…んだよそれ羨ましいだろうがコンチキショー!」


まあ、凛斗がこんなになるのもまあ頷ける。城戸さんは高嶺の花として学年の中でも有名だ。彼女を狙ってる男子の人数なんて、考えたこともない。


「ただ、本題はここからなんだよ。うちの義妹の美亜に相談に乗ってもらったお礼に、買い物に着いていくんだけど、美亜って可愛いじゃん?」


「なんだよこんなとこで義妹好き好きアピールかよ。他所でやってくれそんなことは」


「いややさぐれてるのはわかるけど話をちゃんと聞け。当然あいつに釣り合うような格好をしたいんだけど、どういう服を着たらいいか思い浮かばないんだ」


美亜も美亜で一年生のなかでは美人で有名だ。高校に上がってすぐから告白を何度も受けているみたいだ。どうやら全て断っているみたいだが。


「ねぇ、何の話してるの?」


「うわっ!城戸さんビックリしたよ」


「いやぁ、なんだか気になっちゃって」


突如、城戸さんが後ろから現れて話に参加してきた。昨日友達になったとはいえ、急に距離感詰めて来すぎじゃないか?


「妹と今週末買い物に行くんだけど、その時にどういう服を着ていったらいいか分からなくて、凛斗に相談してたところなんだ」


「義妹って、1年生の美亜さん?」


「ああ。妹とは言ったが、義理ではあるけどな」

「ふぅん。義妹さんとは仲がいいの?」


「いや、特にそういうわけじゃないと思うけど。今回買い物に行くのは、この前ちょっと相談に乗ってもらったお礼ってことで」


嘘は吐いていない。むしろ吐くメリットが存在しない。だから詰め寄られても平気だ。


「なるほどねぇ。ねぇ、今日か明日の放課後時間空いてる?」


「明日なら空いてる」


「よし。なら、明日の放課後に服選びしてあげる」


「ちょっとまてぇ!」


「弘貴お前なぁ。あえて黙ってたけど流石にこれは俺も許せないぞ」


「お前は勝手に黙ってただけだろ!そんなことで許せないとか勝手が過ぎるぞ!」


まさかの凛斗の裏切りである。なぜか俺を敵に回そうとしてくる。あとでちょっとシメておいて反省でもさせるか。


(というか、服選び⁉︎しかも2人で⁉︎どういう風の吹き回し⁉︎)


もっとも、さっきの凛斗の発言を吹き飛ばすぐらい、城戸さんの服選びの発言の方の威力が高すぎる。これって実質デートみたいな扱いになってしまうじゃないか。


(城戸さん、一体どういう意図でこんなことを言ってきたんだ?)



一方その頃城戸さんはというと…


(ああぁ誘っちゃったぁぁぁ!どうしようどうしよう一緒に来てくれるかなぁぁぁ!)


悶えていた。表情や行動に出してはいないが、めちゃくちゃに悶えていた。脳内では、小さな自分がのたうち回って転がりまわっていた。


昨日弘貴と和解してからずっと、幸せな気分で埋め尽くされ、普段なら毎日欠かさずやっている予習復習も、まともに手がつかなかったぐらいである。それだけ、昨日の出来事は破壊力が抜群だった。



そうこうしているうちに考えをまとめて、俺は城戸さんに語りかけた。


「うん、分かった。ちょっと恥ずかしいけど、お願いしようかな(美亜の横に立ってても恥ずかしくないように)」


「ホント⁉︎なら明日の放課後にね(ウレシイヤッター!)」


お互い違う考えを持ちながら、明日の放課後に買い物に行くことになった。


***********************

そして翌日、学校近くのショッピングモールに俺と城戸さんとで買い物に来ていた。


「とりあえず、普段はどんな服着てるの?」


モール内を歩いていると、城戸さんから声をかけられた。一応私服は持ってきているが、それが城戸さんのお眼鏡にかなうかは分からない。


「一応私服持ってきたのと、何枚か写真はあるからそれ見て判断して」


そう言ってカバンから持ってきた私服を取り出し、スマホを開いて私服姿の写真を見せた。個人的にはそこまでセンスが無いわけではないと思っているが、果たしt…


「うーん、悪くはないけどそこまでカッコいいとは言えないかな」


「ウソーン!」


撃☆沈☆。ものの見事に言われてしまいました。意外と傷つくものなんだね…。


「で、でも元がかなりいいから写真とか今持ってきてもらってる洋服に何かしらちょい足しするだけでも変わると思うよ」


「ア、ウン、フォローアリガト」


急にカタコトになってしまったが、まあ、うん。自信があったものを否定されると悲しいじゃん?まさにその状況に陥ったら誰しも絶対こうなるって。


「でも、元々の素材がいいから、何かしら少しプラスすると一気に変わるかも。なにが合いそうか見て回ろうか」


そうこう言いながらショップを見て回り、一通り良さげなものを試してそこからいくつかを絞って購入していった。今は近くのファミレスに入って少し歓談している。会話のお供に、俺はコーヒー、城戸さんはクリームソーダを飲んでいる。


「今日は付き合ってくれてありがとう。そもそもこんな風に誰かと外出すること自体が俺からすると珍しいから、そもそも服のセンスとか分かってなかったし」


「いいよいいよこのくらい。私だって楽しかったし。あと、センス無いとかいってるけど、もとが微妙だっただけで少しプラスしたりしたらすぐ良くなったから、そういうところ気を付けると印象がガラッと変わってくるよ」


「そう言ってもらえると助かるよ。少なくともこれで今週末は恥をかかないで済むと思う」


「そっか。楽しんできてね」


そう会話をしていると、なんだか城戸さんが少し不機嫌そうにしていた。なぜだ?

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