第6話 和解──忍び寄る影──
今日も学校に行ったら、相変わらず周りからの質問責めにあった。ましてや今日は他のクラスにまで噂が伝わっていたのか、昨日以上に多くの人数がクラスに押し寄せていた。俺も城戸さんも対応に追われながら、できる限り多くの人を捌いた。正直こういうのは精神的にも参る。
そんな激動の朝が過ぎて、1限目の準備をしている最中、城戸さんが俺のところに来た。
「髙梨くん、もし今日良かったら、放課後時間ある?」
「ん?あるけど、どうかした?」
お互い気まずい中で、会話もぎこちなかった。
「そっか。じゃあ、放課後屋上に来てほしい」
「ああ、分かった」
城戸さんから呼び出しがかかった。…あれ、俺あの時以降なんか呼び出されるようなことしてたっけ?もしかしてあの事今だに根に持ってるんじゃ?
そんなことを考えている間に、城戸さんは自分の席に戻って準備を進めていた。とりあえず自分も準備を進めて、本題は放課後にちゃんと聞くとするか。
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授業も滞りなく進み、いよいよ放課後になった。俺は荷物をパパっとまとめると、急いで屋上へ向かった。屋上につくと、城戸さんは既にそこにいた。どれだけ速く移動したんだろうか?
「ごめん。待たせちゃった?」
「ううん、そんなことない。私もついさっき着いたところだよ」
そんな言葉を交わした後、静寂が訪れる。未だ気まずいのは変わらない。ただ、俺は今回、特に話すこともない。だから、城戸さんから話し出すのを待つだけだ。
そうしてしばらくしてから、ようやく城戸さんが言葉を発した。
「この前、私に告白してくれたよね?」
「あ、うん。そうだね」
「あれ、私振っちゃったよね。本当は…」
ここで一度、彼女が言葉に詰まった。先程の言葉からなんとなく伝えたいことは分かるが、俺から語りかけることはあえてしない。向こうからの言葉を待つだけだ。
「間違い…って言い方だと変かな。本当はものすごく嬉しかった。だけど、その時気が動転しちゃって、私がいつもしてるみたいに振っちゃったの」
そうだったのか…。俺はてっきり、本当に好意もなにもなく振られたものだと思ってた。
「それで私からなんだけど…、今すぐ付き合ってほしいって訳にもいかないと思うから、まずは友達としてから、一緒にいてほしいな」
驚いた。嫌われているどころか、まさか仲良くなりたいだなんて思ってもらっているとは。
「ああ、なら、これからよろしく」
「うん、ありがとう」
こうして、城戸さんとは友達になることができた。
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「ヘヘッ、面白いところみーつけた」
「そういうことだったんだね。これはちょっと手強いかも」
「…どうやって私たちに意識を向けさせる?」
「気が早いな~カエデは。なにかそこまで惹かれる要素あるの?」
「うん」
「ねぇねぇ、どんなとこに興味があるの?」
「二人には秘密(私が先に手に入れるの)」
「なんかやましいこと考えてるだろ(あんな女に負けねぇよ)」
「まあ、いいんじゃない?(私なら、誰にも負けない)」
弘貴たちの様子を眺めていた女子3人組は、思い思いのことを考えながら話していた。
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(帰る前に兄さんを見かけたから追いかけてきたけど、あれが城戸さんか)
放課後に兄さんを追いかけて屋上に行くと、兄さんと女生徒が話していた。数日前の話を聞くに、恐らくあの女子生徒が城戸という人だろう。
(なるほど、向こうは兄さんのことが嫌いじゃない。むしろ好意すら抱いているみたい。なら、先に兄さんを堕とすしかないみたい)
そう言って、私は作戦を練り直し始めた。
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