第6話 和解──忍び寄る影──

今日も学校に行ったら、相変わらず周りからの質問責めにあった。ましてや今日は他のクラスにまで噂が伝わっていたのか、昨日以上に多くの人数がクラスに押し寄せていた。俺も城戸さんも対応に追われながら、できる限り多くの人を捌いた。正直こういうのは精神的にも参る。


そんな激動の朝が過ぎて、1限目の準備をしている最中、城戸さんが俺のところに来た。


「髙梨くん、もし今日良かったら、放課後時間ある?」


「ん?あるけど、どうかした?」


お互い気まずい中で、会話もぎこちなかった。


「そっか。じゃあ、放課後屋上に来てほしい」


「ああ、分かった」


城戸さんから呼び出しがかかった。…あれ、俺あの時以降なんか呼び出されるようなことしてたっけ?もしかしてあの事今だに根に持ってるんじゃ?


そんなことを考えている間に、城戸さんは自分の席に戻って準備を進めていた。とりあえず自分も準備を進めて、本題は放課後にちゃんと聞くとするか。

***********************

授業も滞りなく進み、いよいよ放課後になった。俺は荷物をパパっとまとめると、急いで屋上へ向かった。屋上につくと、城戸さんは既にそこにいた。どれだけ速く移動したんだろうか?


「ごめん。待たせちゃった?」


「ううん、そんなことない。私もついさっき着いたところだよ」


そんな言葉を交わした後、静寂が訪れる。未だ気まずいのは変わらない。ただ、俺は今回、特に話すこともない。だから、城戸さんから話し出すのを待つだけだ。


そうしてしばらくしてから、ようやく城戸さんが言葉を発した。


「この前、私に告白してくれたよね?」


「あ、うん。そうだね」


「あれ、私振っちゃったよね。本当は…」


ここで一度、彼女が言葉に詰まった。先程の言葉からなんとなく伝えたいことは分かるが、俺から語りかけることはあえてしない。向こうからの言葉を待つだけだ。


「間違い…って言い方だと変かな。本当はものすごく嬉しかった。だけど、その時気が動転しちゃって、私がいつもしてるみたいに振っちゃったの」


そうだったのか…。俺はてっきり、本当に好意もなにもなく振られたものだと思ってた。


「それで私からなんだけど…、今すぐ付き合ってほしいって訳にもいかないと思うから、まずは友達としてから、一緒にいてほしいな」


驚いた。嫌われているどころか、まさか仲良くなりたいだなんて思ってもらっているとは。


「ああ、なら、これからよろしく」


「うん、ありがとう」


こうして、城戸さんとは友達になることができた。

***********************

「ヘヘッ、面白いところみーつけた」


「そういうことだったんだね。これはちょっと手強いかも」


「…どうやって私たちに意識を向けさせる?」


「気が早いな~カエデは。なにかそこまで惹かれる要素あるの?」


「うん」


「ねぇねぇ、どんなとこに興味があるの?」


「二人には秘密(私が先に手に入れるの)」


「なんかやましいこと考えてるだろ(あんな女に負けねぇよ)」


「まあ、いいんじゃない?(私なら、誰にも負けない)」


弘貴たちの様子を眺めていた女子3人組は、思い思いのことを考えながら話していた。

***********************

(帰る前に兄さんを見かけたから追いかけてきたけど、あれが城戸さんか)


放課後に兄さんを追いかけて屋上に行くと、兄さんと女生徒が話していた。数日前の話を聞くに、恐らくあの女子生徒が城戸という人だろう。


(なるほど、向こうは兄さんのことが嫌いじゃない。むしろ好意すら抱いているみたい。なら、先に兄さんを堕とすしかないみたい)


そう言って、私は作戦を練り直し始めた。

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