第5話 兄さん
10年前のある日、お母さんが再婚すると伝えられた。まだ小学校にも通い始めていないちびっこな私には、最初は言葉の意味が分からなかった。お母さんに聞いたら、新しい家族が増えるよと教えてもらった。私はものすごく嬉しかった。
お母さんは私のためにたくさん仕事を頑張ってくれていて、それが理由であまり私と一緒に過ごす時間が取れていなかった。おばさんの家に預けられていたから問題なく過ごせてはいたけど、家族の暖かさに触れるなんてことはほぼほぼ無かったから。
新しく家族になる人と会うことになって、そこで初めて兄さんに会った。お母さんの後ろに隠れていた私に、優しく笑顔で「よろしくね!」と声をかけてくれて、兄さんのことが好きになった。このときはまだ兄妹としてだけど。
兄さんは既に小学校に通っていて、私も保育園に行っていたから日中は会えなかったが、夕方になると兄さんが迎えに来てくれて、一緒に歩いて帰った。その後家で一緒に遊んでくれて、私は家族の暖かさを、そこで初めて知った。私が小学校に上がっても、兄さんは私と一緒に過ごしてくれた。
私が中学に上がる頃には、さすがに思春期ということもあって、兄さんにあまり話しかけたりとかもしなくなった。その時ぐらいから私は恥ずかしさを持ってしまい、兄さんにキツい態度を取り始めてしまった。
(本当は兄さんともっと仲良くしたいのに…)
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、兄さんは中学を卒業し、高校に進学、私は中3になって受験生になった。私は、せめて兄さんと一緒にいれる時間を増やすためにと、兄さんと同じ高校を受験するために勉強に励んだ。兄さんのいっている高校は、この辺りでも屈指の進学校で、志願者数も問題の難易度も他のところに比べて数段高い。私のこの時の学力だと、ギリギリ入学できるかもぐらいのレベルだった。それでも一生懸命努力して、その高校に無事に合格して、頑張った甲斐もあってか、主席で入学することができた。これで兄さんとまたたくさんお話しできる、そう思って私は新しい生活を始めていった。
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高校に上がってそれなりに過ぎたけど、そこまで話す機会は無かった。学年が違うから仕方ないかもしれないけど。かといって家で話すのもなんだか違う気がする。兄さんとは家で仲が悪い感じだから。
まだちゃんと話せないのはモヤモヤするけど、頑張って話せるようにならないと。
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