第1話 気まずい空気の流れる1日
「弘貴起きなさい。学校に遅刻するわよ」
「はいはい。今起きます」
義母さんにそう声をかけられ、俺は渋々ながらベッドから起き上がった。正直今日は学校に行く気力も起きない。いっそのこと休みたいぐらいだ。
「おはよう父さん、義母さん」
「おはよう」
「おはよう」
「あれ?美亜は?」
「美亜ならもう学校行ったわよ」
よっぽど自分が起きてくるのが遅かったのだろう。義妹の美亜はもう既に学校まで行ってるようだ。
「弘貴も早く準備しなさい。お弁当は用意してあるから」
「ああ、ありがとう」
父さんと義母さんは、10年前に再婚した。その時、義母さんの連れ子として来たのが美亜だった。昔は仲もよかったのに、今はなんというかスゴくそっけない
…というより辛辣な態度を取られている。一体何があってこんなことになってしまったんだ?
そんなこんなで準備を済ませて学校に向かっている…のだが、いかんせん昨日のことを引きずってしまって行きたくないと思っている自分がいる。
城戸さんは同じクラスにいるから、学校に行ったら確実に顔を会わせることになる。今の状態では同じクラスってだけで居づらいし、そういう様子を見られるとクラスの奴らから質問責めに会うことも容易に想像できるので、少なくとも今日一日は、まともに過ごすことも出来ないだろう。
(今すぐにでも引き返したい…けど駄目だろうな)
うちの高校は無断遅刻、無断欠席にはとにかく厳しい。親に連絡はもちろん行くし、そんなことをするだけで内申に響くし、追加で過剰なまでの課題が出されることになる。大学進学のためや、勉強時間の捻出のために、これにはどうしても引っ掛かりたくない。うちの高校はこの辺でも屈指の難関校だから勉強に使える時間は多めに取りたい。
そういえばちゃんとした自己紹介がまだだった。俺は髙梨弘貴。高校2年生で、地元の有名進学校に通っている。成績は中の上くらい。部活とか委員会もやってない。容姿もこれといった特徴もなく、いたって平凡な男子高校生だ。ちなみに美亜は1つ下の高校1年生、成績優秀、運動神経もいい、容姿も綺麗で多くの人の目を引くという、兄という色眼鏡を抜きにしても凄い女の子だ。
そんなことを考えていても、現実は変わることはなく、もう学校についてしまった。教室に入ると、やっぱり城戸さんはそこにいる。お互い目があってしまい、気まずそうに目をそらす。城戸さんはクラスのマドンナ的存在で、周りにたくさんの人が寄ってくる。そんな城戸さんの行動を見ていた周りの人は、驚愕の視線を俺と城戸さんに向けてくる。正直、この雰囲気は苦手だ。教室に入って俺が荷物を机に置くと、周りの男子共が一斉に俺の元に来て昨日のことについてなだれ込むように質問責めをしてきた。正直気疲れしていたので、のらりくらりかわしつつホームルームという名の救済の時間が来るまで、ずっと耐え続けた。
こんなこともあってか、今日の授業にも身が入らず、休み時間にクラス中の男女問わず質問責めしてくるもんだから休める暇も無く、いつも以上に気疲れしてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます