さよなら、私の恋心

音夢

さよなら、私の恋心

 「私、先輩に告白しようと思う 」

彼女がそういったとき、私の心には成功しますようになんて想いよりも、なんでこんなにも可愛いのに恵まれているのに私から奪っていくの。と言う想いが強く渦巻いた。

 最初に彼女が好きだと打ち明けてきたときもそうだった。貴方よりも私のほうがずっと前から好きなのに。なんて性格の悪いことを思いついたくらいだ。

 そんなことも押し殺して彼女の欲しい言葉をただロボットのように言う。

 「そうなんだ、きっと貴方なら上手くいくよ 」

これに嘘はない。彼女は誰が見たって学年のマドンナで可愛い。先輩だって私なんかより彼女に惹かれるのも当然だろう。

 彼女が見ているような色づき輝いた世界と裏腹に味気のない白黒の世界にいるような感覚で一日を過ごす。そんなふうに時間に身を任せるままにしていると、とうとう放課後になった。

 「いってくる 」

と彼女が私にそう伝え、離れていなくなってしまう。

 バックを持っていつも通りつまらない世界を見ながら帰っていると、ふと明日提出の課題を忘れたことに気づき、学校に戻る。

 吹奏楽部の演奏や、体育館から聞こえる、ボールが床に当たる音を聞きながら校舎に踏み入れ、自分のクラスへと向かう。

 ふと、聞き覚えのある声が聞こえ、なんとなく気になり向かうと空き教室に男女二人がいた。見てしまったのだ、彼女と先輩が一緒にいたのを。彼女は耳を赤く染め、先輩は恥ずかしそうにそっぽを向いている。嫌でもわかってしまう。

 いや、気づいていたのだ。先輩が彼女に向けている笑顔の意味を、私には向けてくれないその笑顔の意味を。

 ふと、頬に違和感があり蚊でも止まっているのかと触れると、濡れていた。泣いているのかと自覚するとふにゃふにゃと視界が歪み、気づくと駆け出していた。二人に気づかれていたかもしれないけど、もうどうでも良かった。

 外に出て、止まらない涙を堪えるように上を見ると二人を祝うかのように雲ひとつない青空だった。

 やっぱりこの世界は私には眩しすぎるようだ。

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さよなら、私の恋心 音夢 @ne_mirr

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