【解説】深夜零時の悲鳴

 物語冒頭で主人公が何をしていたのか、皆様は覚えているだろうか。

 彼はを脱いだところで女性の悲鳴を聞いた。そして洗濯かごからを取り出して着込み、部屋の背広を羽織って駆け出したはずだ。


 スラックスは履いていない。


〝「いいえ、知らない人です。暗くて顔までは……。……」

 と言いかけてから、唇を噛むような仕草を見せた。〟


――なお、下半身は……。


〝駆け出そうとすると、女性が俺の背広の裾を掴み、ぐいっと引っ張る。振り返ると彼女は伏し目がちに首を横へ振っていた。


「何故です? 俺の足なら充分……」

「そんな事をしたら、から」〟


――それもそのはず。下半身は……。


〝「大丈夫です、こう見えて私は訓練を受けた刑事です」

……、警察の方、だったんですね」〟


――なお下半身。


〝「と、大変なことになりますから」〟


――そう。大変なことになる。


〝(略)を眺めているうちにその意味に気付く。

 視界の端で。〟


――揺れている。ナニがとは言わない。揺れている。


 彼が無事に十四号棟まで辿り着けたのか。それはまた別のお話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る