【解説】密かな楽しみ
この物語は、あるVtuberに起こる悲劇の直前を切り抜いたものである。
解説編を読む前に真相へ辿り着いた読者の方は彼女を包みこんだ光についてどのように感じただろうか。
彼女を包みこんだ眩しい光は、部屋のライトなどではなく、燃え盛る炎。
――換気されている防音室からアパートの室内へ急激に酸素が入り込んだことによる爆発、(※)バックドラフト現象だった。
(※:可燃性ガスが充満した状態で酸素が急激に供給されると、爆発が起きる現象。ドアを開くなどして起きる)
彼女の部屋は配信中――失火か放火か定かではないが――、既に炎に包まれていた。ある程度の耐火性を備えていた防音室を除いて。
スポットクーラーは火事の熱を感じさせず、換気用ダクトは火事の煙を逃し、防音効果によって外の消防車のサイレンも届かなかった。
彼女の失敗は警報装置の取り付けをしていなかったという点に尽きる。
Wi-Fiやスポットクーラーの電源が落ちたのは、火事による停電が原因だった。
そして彼女は照明代をケチって、ノートPCの明かりだけで作業していた。
そのためバッテリーが生きている間、停電に気付けなかったのだ。
個人勢のVtuberさんが十万人もの登録者数をゼロから作り上げることは、生半可な気持ちで出来ることではない。きっと彼女はたゆまぬ苦労と努力を重ね、ようやくその地位を築いたに違いない。
しかし彼女は、そのすべては、燃え上がる炎とともに――。
せめて、彼女が命だけでも無事であることを祈るばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます