初雪

 冷え性持ちではない私は、友達や同僚のみんなと違って冬という季節が好きです。でも、凍えるような寒さの中に残されていたとしても平気、というわけではありませんよ。


 なんというか、雪が好きなんです。


 皆さんはもう、初雪を経験しましたか? 私の住む地方では十二月前に初雪が降ることがよくあります。今年は少し早かったですね。私の家の近くにも、夕方に初雪が降ったんですよ。


 関東や関西などの都会と比べ、かなり雪が積もる地方ですが、十一月の雪は歩行困難になるほど積もる雪ではありません。せいぜいスニーカーのゴム底が埋まる程度でしょうか。


 そんな、薄く積もった雪を踏みしめるのが、なんとも言えない年に数度の私の楽しみなんです。今日の初雪も、そんな踏み甲斐のある積もり方をしていました。

 自宅付近の停留所へ向かうバスの中で、窓の外に見える雪景色を見つめながら私は停留所から家までの間、誰にも踏み荒らされていないであろう道を独り占めすることが出来る。そう期待して浮かれていました。


 私の住む家は一軒家なのですが、父も母も既に他界しているため、部屋の使い道に困っています。兄弟もいませんし。

 客間なんか、もう何年扉を開いていないのか覚えてすらいません。


 そんな片田舎の一軒家の最寄りにある停留所へバスが到着すると、私は思い切りバスのステップからジャンプするように飛び降り、我が家へと向かいました。なんか、年甲斐もなく恥ずかしいですね。


 この停留所は利用者が少ないため、ほとんど踏み荒らされておらず、私は積もった初雪の踏み放題をしばらくの間、堪能していました。

 しかし、そんな嬉しい気分は長続きしませんでした。ウキウキとした気分で家の門をくぐると、残念なことに玄関に向かって一筋の足跡が既につけられていたのです。


 玄関ポストには不在票が置いてあり、通販サイトで購入した荷物が私の楽しみを奪ったのだとそこで理解しました。車さえ持っていれば、コンビニ受け取りにしたのになあ、と今更悔やんでいます。


 さて、お風呂が沸いたようなので、この辺りで失礼いたします。掲示板をご覧の皆さんも風邪を引かないよう、お体にはくれぐれもお気を付けください。

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