第5話

 テントから抜け出すと、それは満天の星に覆われていた。

 徐にカメラを空へ向けた。 


 ひと昔と違い、星と風景を一緒に撮る『星景』がジャンルとして確立されつつある。

 ただ今いる場所は、広い天空しなかい。


 カメラのシャッターを開けっぱなしにして長時間露光する。

 北極星を中心に星の軌跡が輪になる写真が撮れる。

 まるで星たちが追いかけっこをするように。


 煙草に火をつけ、ヤニを肺へと流し込む。

 はぁーっと吐き出すと、白い煙が星に吸い込まれるように昇っていった。


 明日の天気はどうだろうか。

 気休めにスマホで天気予報を確認する。


 曇りのち晴れらしい。

 なら大丈夫と思いたいが、明日のことは、明日にならないと分からない。


 150年振りと言われる自然現象。

 この土地は特殊で、朝日に雲が掛かると、空一面が虹色に染まるという。


 運が良ければ、見られるだろう。

 運が良ければ、もしかして俺たちのように……。


 アイツに口づけをした日、もうアイツとの接点はないと思った。

 卒業までアイツは俺を避けるようになったし、卒業後の進路は互いに知らなかった。


 それなのに、偶然アイツと街で再会した。

 いや、再会したというより、見つけたと言ったほうが正しいかもしれない。


 信心深いほうではないが、あれが運命というものなのだろうか。

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