読んでいて某国の影がちらつきました。
まぁ、十中八九モデルはあの国なんだろうなぁ、と……。
それはさておき、方や幼少期から盲目なまでに国の望むような価値観の教育を受けた少女、方や両親の教育やその仕事現場などから幅広い知識を得て、現実を知る少年。
この二人は大きく価値観が違うからこそ、求める理想や幸せといったものもまた異なります。
恵まれた立場にある読者視点からすれば、少女の望む幸せなど国によって作られたまやかしであり、少女の進む先には不幸しかないことがわかります。
ですが、それは相応の知識が身についており、様々な思想が許される恵まれた社会環境だったからこそ、そういう判断ができるわけです。
限られた知識や、その知識の幅を狭める社会環境で育ったならば、何が本当の幸せであるかも正しく判断できません。
つまり、本当の意味での幸せなど手に入るわけがなかった……この物語の結末は、ある意味少女が生まれた時点で決まっていたのかもしれません。
今一度自分の受けた教育と環境を見つめ直し、「幸せ」について考えててみることができる良い作品でした。