第3話
とても嫌な予感がしていたのか。
何故だか視界が揺れるような、車酔いのようなその手の気持ち悪さだ。
僕は何故だか石を手放したくなくなった。
そこでぼんやりと、僕ら4人ではない誰かがそこにいると感じた。
背丈ゆえに子供のようだ。
僕はなんとなく察した。
「この石に触れちゃダメだよ」
歪む視界の奥には彼がいた。
確かにいる。
僕はえ?と言った。
「この石はあの世の石、だから絶対触れちゃいけないんだよ」
「僕もう触れちゃったよ」
彼はあーあ、と言っていた。
「ここは何もない場所」
と彼は言った。
「そうだ、君にとっての何もない場所ってどこなの」
僕は悩んだ末に、
「学校かな、勉強嫌いだし」
と言った。
「僕は国語が好き」
彼は言った。
それでも不自然な点が、明らかに小学生ではない。
年長さんか、年中さんかほどの年齢だ。
「僕は国語の授業を受けてみたかったんだ」
と彼は言う。
僕は冗談混じりに、
「僕の代わりに受けてよ」と言った。
彼は言った。
「僕の友達にも何人かそういう子がいてね、僕は勉強が好きだから大丈夫なんだけど、あと1人、誰かに石を持たせてくれる?」
僕は全く訳がわからなかった。
自分で聞いたものの分からなくなったのだ。
ちょうど勝田くんが近くにいるのだ。と思ったものの僕はやめておいた。
そんなことをしている間に僕は再び鬼になった。
結果的には三松くんが山川くんを選んだ。
不自然に石を持たせる彼の姿を私は見てしまった。
その様子を見ている彼も見てしまった。
僕はなんとも言えない気持ちになった。
それこそ彼がもしかすると犠牲になってしまうのでは。
何故だか自分よりも他人の心配をしていた。
僕は必死に階段を上がる。
一段一段と駆け上がる。
こんなこと先生に知られてしまっては彼らが怒られてしまうと。
僕は祠に辿り着いた。
僕は両ポケットに入れた石を置きにきた。
僕は何故だか手を合わせていた。
視界がだんだん歪んできた。
目の前に確かに男の子がいるのだ。
彼にありがとう届けにきてくれて、と言われた。
昨日は知らなかったが皆彼を見ていたのか。
「それと、僕に国語の授業を受けさせてもらってありがとう」
と僕はよく分からない反応をしていた。
が、僕はなんとなく察した。
「まともに受けない3人組か」
そう、授業中に山川くんはすぐに寝る。三松くんはおしゃべりをする。篠沢くんはすぐに絵を描く。
「石を触れちゃいけないよというのがずっと守られてきて、僕は授業を受けられないと思った。
僕たち3人は石に触れた誰かに乗り移ってまで授業を受けたいと思っていたんだ」
気づけば幻覚は3人になっていた。
「ようやく国語の時間に乗り移ることができたんだ君たちに!そしたら絵を描くわ、校庭へ遊びに行くわ、全部乗り移ることができなくて!!」
なんて彼は怒りながら笑っていた。
僕は彼らに戻らないと、と告げた。
今度色んなことを教えて欲しいと言われた。
彼らはまるで生きているかのように笑いながら手を振った。
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