第2話

そこで、一人の女子、岡田さんが席を立ち上がった。

皆が驚いていた。

「私、その話聞いたことある」

そうして何人かの生徒が口々に「俺も」「私も」と言い出したのだ。鷲尾くんらは不機嫌そうに見ている。

「みんな知っているよね。三松くんと吉川くんはあの場所の前でしてはいけないことをしたのかもしれない」

彼は深刻そうに言った。

天野さんが即座に、

「してはいけないこと?」と彼に尋ねた。

「あそこの神社の祠にある石を持ち帰ったら」

教室が少し恐怖に染まる。

「嘘だ」と山岡くんが言った。

「信じない方がいいよ」

なんて彼らが口々に言う。

勿論僕も知っていた。


「嘘じゃない」

「どうしてそんなことが言えるんだ?」

なんて山岡くんが言う。

「だって」

彼は何かを言おうとしてやめたようだ。

「でもとにかく、それが原因だと思うんだ」

勝手にやってろと彼らの声がする。

僕は再び窓の外を見る。

「勝手にしろ」

と彼らはぼやきながら言う。

今野くんが突然、

「それじゃあ」

と言う。あたりの皆はどうしたのと問う。

「これで3人目?」と言う。


もしかしたら、と鷲尾くんが三松くんの机の中を確認する。彼の机上は開かれたままのノートと教科書が。

鷲尾くんは一歩ほど引いて、

「ある」

と震えた声で机の中からパソコンのマウスほどの大きさの石を取り出した。

「ってことは」と山岡くんも大慌てで吉川くんの机の中を確認する。やはり同じような石が見つかった。

「宮原くん、すごい」

と女子生徒たちが言う。

逆に彼らは呆然としていた。

「この石は戻しに行かないといけない」

怖いね、などの声が聞こえてくる。それに応じて宮原くんは、

「そのいなくなった子が持っていた石は神社の中で供養されている」

とさらに不安を煽った。

「でも授業中だし」

といろんな声が聞こえる。

「僕が置きに行ってくるよ」

と言ったのは僕の親友、勝田くんだ。

僕は嬉しかった。

「僕の親友ももしかしたら。


その言葉が出てきた。やっと気づいてもらえたのだ。

僕も彼らと同じ、いない存在になっているからだ。

僕の目線からだと山川くんと三松くんもそこにいる。

要するに身体だけがあるのに皆が気づかない。彼ら2人と僕はいない存在と皆が認識してしまっているのだ。


「それじゃあ」

と勝田くんが教室を出ていくのが見えた。

僕はとても嬉しかった。

ここから阿魏神社となると走って5分ほど、

実を言うとこの校舎からも神社が見える。

僕はふと、昨日のことを思い出した。



勝田くん、僕、それと山川くんと三松くんの4人で鬼ごっこをしていたのだ。それこそ街を見渡すことが出来る高台に位置するこの神社。

私が鬼の番だ。

境内はとても広い、神社を模るように4つの大きな灯籠が置かれてある。その間を舗装された道があり、そんな所を行き来するように僕たちは鬼になったり、ならなかったりと遊んでいたのだ。

三松くん、彼が鬼になった時。その祠が目についたようだ。

彼は興味本位で石に触れた。

それはいけないよと僕が注意をした。

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