第4話初めての冒険
アーロンと共に王都での魔物討伐を終えた翌日、王都の宿で一息ついていた俺の元に、新たな依頼が舞い込んできた。
「賢者様、実は近くの村で再び魔物が現れたとの情報が入っております。どうかお力を貸していただけませんでしょうか?」
使者が深々と頭を下げる。どうやら俺の「知識の賢者」としての力が少しずつ認知され始め、期待が寄せられているらしい。アーロンも依頼を聞いて、ニヤリと微笑んだ。
「どうだ、優人? さっそくもう一仕事やってみるか?」
「うん、やってみるよ」
俺たちは再び冒険の支度を整え、依頼された村へと向かうことにした。今回の相手は、どうやら「バジリスク」という魔物らしい。体が巨大な蛇のような姿をしており、視線を合わせると石にされるという厄介な能力を持っているという。
「バジリスクか……あの視線をどうにかしないと、こっちが危ないな」
俺は古書で読んだバジリスクの情報を思い出し、どうやって戦えばいいかを頭の中で整理していく。
数時間後、俺たちはバジリスクが出現したとされる村の近くに到着した。村は閑散としており、人影が見当たらない。緊迫感が漂う中、俺とアーロンは村の奥へと進んだ。すると、突然、低いうなり声とともに地面が揺れた。
「来たな……!」
アーロンが剣を構え、周囲を警戒する。その瞬間、草むらから鋭い瞳をしたバジリスクが現れた。体長は軽く5メートルを超えており、硬そうな鱗が体を覆っている。
「気をつけろ、あいつの目を見ると石になるぞ!」
俺はアーロンに警告を発し、自分も視線をそらすようにした。だが、戦闘中に目をそらし続けるのは難しい。何か手を打たないといけない。
「くそ、どうするか……」
俺は知識の魔法を発動し、バジリスクの弱点に関する情報を引き出す。すると、頭の中に「対バジリスクの魔法」というページが浮かび上がった。
「アーロン、少し待ってくれ!」
俺は自分の手に魔法の力を集中させ、新たな呪文を唱えた。
「光よ、反射の盾となれ!『ミラーシールド』!」
すると、俺の手のひらに透明な光の盾が現れた。これは、バジリスクの視線を跳ね返し、その効果を無効化するための魔法だ。アーロンもそれを見て目を丸くする。
「すげぇ、そんな魔法も使えるのか!」
「これでバジリスクの視線を防げる。さぁ、行こう!」
アーロンと共にバジリスクに向かって突進する。俺はシールドを構えながら、アーロンが攻撃しやすいようにバジリスクの動きを牽制した。シールド越しに見えるバジリスクの目は鋭く、威圧感がすごいが、今の俺には恐怖よりも戦意が湧き上がっていた。
アーロンがバジリスクの横腹に剣を振り下ろし、鱗の隙間に刃を突き立てる。バジリスクは怒りに満ちた叫び声を上げて暴れ始めたが、俺はシールドを使って攻撃を防ぎ続けた。
「優人、もう一押しだ!」
アーロンの声に応えるように、俺はシールドを前に突き出し、さらにバジリスクの顔面に近づけた。その瞬間、バジリスクの視線が反射され、奴自身の目に当たった。
「グオォォォ……!」
バジリスクは視線を浴びて自分自身が石化し始める。驚いた様子で暴れまわるが、徐々に動きが鈍くなり、ついに完全に石と化して静止した。
「や、やったか……」
俺は大きく息をつき、安堵の表情を浮かべた。アーロンも剣を収め、俺に向かって親指を立てる。
「お前、すごいじゃねぇか。さすが賢者様だな!」
「いやいや、君がいなかったらとてもじゃないけど倒せなかったよ」
俺たちは互いに労いの言葉を交わしながら、村へと戻ることにした。村人たちは俺たちの帰還を待ちわびていたらしく、歓声を上げて出迎えてくれた。
その夜、村人たちに感謝され、ささやかな宴が開かれた。アーロンと共に村人たちと食事を楽しみ、彼らの温かさに触れていると、俺は次第にこの異世界での生活に馴染み始めていることに気づいた。
「優人、お前が来てくれて本当に良かったよ」
アーロンが杯を交わしながら言う。その言葉に、俺は少し照れくさくなりながらも、笑顔を返した。
「ありがとう、アーロン。君がいなかったら、俺はここまで来れなかったと思う」
「いやいや、お前は十分やれてるぜ。これからも一緒に頑張ろうな」
俺たちは互いに拳を合わせ、次なる冒険への意欲を高めていった。これまで一人で心細かった俺にとって、アーロンのような仲間ができたことは心強い限りだ。
翌朝、村を出発し、再び王都へと戻る道中で、俺たちは一人の少女に出会った。彼女は弓を背負い、鋭い目つきで俺たちを見つめている。
「あなたたちが、噂の賢者様と剣士のアーロン?」
俺は驚きながら彼女に答えた。「そうだけど……君は?」
「私はリサ。このあたりで弓の使い手として知られているわ。あなたたちが最近、魔物退治で活躍してるって話を聞いて、興味が湧いてね」
リサと名乗る少女は、冷静な表情の中にどこか情熱を秘めた目をしている。どうやら彼女もまた、俺たちに興味を持ち、仲間に加わろうとしているようだ。
「リサ、お前も俺たちと一緒に来るのか?」
アーロンが尋ねると、リサは堂々と頷いた。
「ええ、私の弓が役に立つなら、喜んで力を貸すわ。ただ、試させてもらうわよ。どれだけあなたたちが本当に実力を持っているかをね」
リサの挑戦的な態度に、俺とアーロンは顔を見合わせた。どうやら、彼女はただの仲間ではなく、俺たちの力を見極めるために一緒に戦おうと考えているらしい。
「よし、リサ! 俺たちの実力を見せてやろう!」
アーロンが自信満々に拳を振り上げると、俺も自然とやる気が湧いてきた。こうして、俺たちに新しい仲間が加わり、三人での冒険が始まることとなった。
王都に戻った俺たちは、リサの存在によりさらに力を増し、新たな依頼に挑む準備を整えていった。彼女の弓の腕前は確かで、俺たちの戦いの幅を広げる大きな助けとなりそうだ。次なる冒険に向けて、俺たちは互いに信頼を築き、さらに強くなっていく。
新たな仲間と共に進む道の先には、どんな試練が待っているのだろうか。俺は胸の中で湧き上がる期待と共に、異世界での冒険を続ける決意を固めた。
続く
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異世界図書館で得た知識で、なぜか賢者として祀られてます arina @arina-t
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