第25話:松平先輩の吉川店長考察
今日のバイトは忙しかったせいもあったのか、あっという間に時間が過ぎ、松平先輩とサイクルショップに向かう時間になった。
バイトに来る時は降っていた雨も上がっていたおかげで傘を差す必要もなくなり、僕が2人分の傘を持って歩く。
「へ〜そうなんだ、末次さんがそんなことを?」
さきほどあった事を先輩にも話した。
「はい、その後の吉川店長の一言で台無しでしたけどね」
と簡単に説明。
「もう!吉川店長ったら」
とクスっと笑う。
「でもね?店長こそが一番スタッフ皆んなの事を考えてくれていて、本当に思いやりのある人だと思うの。
あのお年で店舗を任されて、私たちの分からないところで大変な苦労もされていると思うし、同じ女性としても憧れます」
そうなのだ。
僕たちのバイト先は飲食フランチャイズなのだが、どうやら周辺人口比で見る売上は全店舗のうちトップクラスらしい。つまりいつもふざけがちなあの店長はかなりデキる人ってこと。
「いつもイジってくるのをやめてくれればもっといいのに」
とワザとぶーたれると、
「いえ、違うと思いますよ?
そういうところも含めて凄いなあと。優雅くんをターゲットにしてはいますけど、おそらくそれでキッチンスタッフの空気はいつも最高の状態でしょうし、優雅くんはむしろ店長に愛されていると思います。(少し妬けるくらいに……)」
「ごめんなさい、最後の方聞こえなかったです。なんて言ったんですか?」
「別に大したことは言ってないから聞こえなくても大丈夫です」
慌てた素振りで、高速で首を横に振る先輩。
「そうですか?」
少し納得はいかなかったけど、敢えて突っ込まないことにした。
「そろそろ駅に着きますね」
「こちら側ではなく、駅向うのロータリーの右手側です」
「ドキドキしてきました」
少し松平先輩が軽やかに早足になった気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます