第24話:ガッカリだよ!
とりたてて甘い展開がそこにあったわけでもない初デート?は終わり、今日は日曜日。
2人ともバイトが入っていたが、午前中だけのシフト。
今日はあいにくの雨模様で、一緒に行くことを約束していた松平先輩と傘をさしながら並んで歩きお店に向かう。
その途中、
「アルバイトが終わったら何処か寄りませんか?」
と。
「そうですね、どこかでランチでもしましょうか」
「ランチは勿論なんですけれど…」
トートバッグの中からスマホを取り出し、スクショ画面を見せてくる。
「を?これはサイクルショップですね。パンタを買ったお店です。僕もよく利用している所ですよ」
「はい。やっぱりそうでしたか!
駅の方ですから、お家とは反対側なのですがよろしいですか?優雅くんと一緒に行きたいです」
傘を斜めにして上目遣いで聞いてくる。
「もちろんです!おともします!今日は午前中だけですし、頑張りましょう!」
とテンションを上げた。
日曜日ともあってキッチンはフル回転。
ホールの松平先輩の様子を伺うことも出来ず、もくもくと作業をこなす。
「優雅!6番と11番用のデザート!頼む!」
コック長の末次さんがテキパキと自身の仕事をしながら僕にも指示をくれる。
末次さんは大柄で見た目も少しコワモテで仕事に対しては厳しい面もあるが、スタッフ思いの優しい人で休憩時間などには冗談も言ってスタッフ皆を笑わせる。
店長よりもこの店は長いそうで言わば守り神的ベテランさん。僕と同じくらいの歳のお子さんも居るようで家庭でもきっと良い父親なんだろうという事が容易に想像出来る。
「わかりました!
デザートが終わったら、2番と8番の付け合せとスープします!」
ニヤリと笑う末次さん。
「お、わかってるじゃねぇか!要領が良くなってきたな!おいっ高橋!いつまでやってんだ!とっとと洗い終えてそこに新しい皿並べろ!」
今月からの入ったばかりの新人社員、高橋さんが注意されている。愛ある激励だ。ビジータイムは一分一秒を争うので仕事の要領を覚えるまでは大変だ。
頑張れ高橋さん、今を乗り越えて作業に慣れたらこの職場は良い人ばかりだから、絶対にもっと仕事が楽しくなる、僕がそうであったように。
殺到していた時間が少し落ち着き、まだ忙しなく動いている高橋さんの作業を手伝う。
(優雅くんありがと、助かるよ)と高橋さんは小声で言った。
「優雅くん、高橋を甘やかしちゃダメよ〜」
と、そこに店長がやってきた。
あ、やべ!という表情になる高橋さんと僕。
そこに助け舟を出したのはなんと末次さんだった。
「店長、これくらいは大目に見てやってください。高橋もまだまだ入ったばかりで要領を得ていませんし、逆に優雅は先々を考えて効率が良くなってきています。
それに今日は優雅は午前中までですし、午後から宮城がくるとはいっても、高橋にはこの後も踏ん張ってもらわないといけませんので」
「うん。わかってるわよ?全然怒るつもりもなかったしね。
単に優雅くんをイジりに来ただけだし!ね?優雅くん?」
とイタズラっ子のような表情に変わる店長。
「それならいいんです。ただ優雅をイジるのもほどほどにしてやってください」
と末次さん。
「分かってるよ〜!?
でも優雅くんは美人店長である私のストレス解消のためにイジられるのもお仕事のうちだからね〜」
腕を組み訳の分からないドヤ顔。
(何言ってんだこの人は!!
末次さんの言葉にジーンときたあとにこれだよ?ガッカリだよ!もうほんと台無しだよ!)
と思いながら、高橋さんと目を合わせて苦笑した。
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