第21話:寝癖?アホ毛?

そして翌日。

土曜日の朝、着信の通知を知らせる音で目が覚めた。


「優雅くんおはよう!起きてますか?」


え?松平先輩?

「おはよう…ございます。いま何時ですか?」


「8時ですよ〜!起きて下さ〜い。それから顔を洗うついでにオートロック開けて下さい」


(ん?オートロック?)

と、聞いたところで完全に目が覚めた。


(あ、デート…)


「少々お待ちください!」

 

慌ててオートロックを解除して顔を洗う。歯磨きに取り掛かると玄関のインターホンが鳴り、歯ブラシを咥えたまま玄関の鍵を開けた。


「おはよ!優雅くん!」

ま、眩しい。今日も最高の笑顔。


「おはようございます。まだ待ち合わせ時間ではないですよね?僕、寝坊してませんよね?

とりあえず中に入って待っててください」


招き入れて洗面所に向かうが、リビングには向かわず、とことこと付いてくる先輩。


「優雅くん!後ろハネてるよ?」

後ろから髪の毛を掴んでいじる。


「うわ、ホントですか!?寝癖?アホ毛?」

慌てて手に水をつけて直そうとする。


「こらこら、そんな風にしちゃダメです。優雅くん寝癖直しのウォーターか、ワックスはありませんか?」


「ワックス…ないですね」


「じゃあ仕方ないか、でも本当はだめなんだからね?」

と、お水につけたタオルをキッチンに持っていく。


ピッと音がして電子レンジが動く音がして、30秒ほどしてからパンパンとタオルを叩いてから寝癖を治してくれる。


「後はブラシッグして…ドライヤーは?」


「ありますけどあまり使ったことはないです」

と申し訳なさそうに答える。


「もう!優雅くん料理は凄いのに、自分のこととなるとどうしようもなく無関心なんだから!

今日はワックスと寝癖ウォーターも買いますよ!」

有無を言わさない口調でそう言った。

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