第20話:明日、デートしませんか?
「優雅くん!それ終わったら、今日はあがっていいよ?!」
皿に盛り付けていたところで吉川店長から声がかかる。
「3番の牡蠣和膳あがりました!」
チラッとキッチンの時計に目をやってからホールスタッフに声をかけ、
「え?1時間早くないですか?」
吉川店長に真意を問う。
「いや〜。今日間違ってシフト多めに入れちゃってさ?キッチンも割と余裕あったでしょ?」
確かに、言われればそのような気が。
「だから優雅くんはせっかくの金曜日だし、高校生として青春の時間を有効に使ってもらおうかな?って。
あぁ時給は当初のシフト分は出しておくからね?」
「いえいえ、働いてもいないのに、それは申し訳ないです。バイトも青春のうちだと思いますし」
と頑なに固辞する。
「いいのいいの。普段真面目に働いてくれているからホントに助かってんの!寸志には全然足らないけど、ランチ代くらいにはなるでしょ?甘えておきなさいな」
と、僕の肩をポンポンと叩く。
(めちゃくちゃ気遣いの人だな。なんで彼氏がいないんだろうか?貧乳のせいか?)
「ゆーがくーん?!いま失礼なこと考えてたでしょ!?」
ワントーン低めの声で怒られる。
「い、いえ!めっそうもございません!それではありがたく…」
言い終わるかどうかの言葉尻に被せて
「その代わりと言ってはなんなんだけれど、一つお仕事を頼むわね?」
「はい?」
「お姫様のご、え、い♡」
人差し指で僕の鼻をつつく。しかも、バチコンっとウインク付きで。
「姫の護衛ってなんですか!」
だいたい吉川店長の意図が読み取れるだけに、少し動揺してしまった。
「分かってるくせに〜。夏夜ちゃんを送ってあげてってこと。最近シフトが被ってる時は一緒に帰ってるんでしょ〜?」
(え?なんで知ってるの?こわっ!)
声には出さずに吉川店長の続きを待つ。
「綺麗なおねぇさんはなんでも知っているのさ〜♪
ルルル〜🎶」
(うざっ!)
「こら!いま、うざって思ったでしょ!早く着替えて帰りなさい!お姫様を待たせたらダメよ?!」
ポカリと頭を叩かれた後、背中を押しだしスタッフ控え室と促された。
「お疲れ様でした!お先に失礼します!」
着替えを終えてキッチンの先輩スタッフ全員に聞こえるように声をかけて店裏へと急ぐ。
駐輪場には松平先輩が待っていてくれていて、
「今日もおつかれさまでした!」
スポドリを差し出してくれる。
「ありがとうございます」
と返しながらパンタを解放して、それでは帰りましょうと声をかける。
「優雅くんも今日は上がるの早かったんですね?」
「吉川店長が間違えて今日のシフト入れすぎたらしいですよ?」
そうなんだ?とクスクス笑う松平先輩。
会話が一瞬途切れ…突然先輩が僕の袖を掴む。
「あ、あの優雅くん…あ、明日、デートしませんか?」
(え?いまなんて?)
突然の思考がまとまらずにポカンと口が空いたままの僕。
「明日は2人ともお休みですよね?一緒にお出かけしませんか?」
と尋ねる先輩の耳も赤い
そこから家までどう帰ったのかほとんど記憶がなかった
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