第二の事件:毒ASMR殺人事件②
自宅マンションにある畳の部屋で、私はいつものようにマインドフルネスを行い、精神世界に入った。『毒ASMR殺人事件』の謎を解くために。
毒ASMR事件の犯人はクライム・フリークであるはずだ。そう思っていた。いやしかし、今精神世界で冷静になって考えると、クライム・フリークはカードを残すのが常ではなかったか?作品名に隠された奴の名前を見つけたときカッとなって、奴の仕業と決めつけたが、今回の毒ASMR事件はクライム・フリークによる犯行じゃないのかもしれない。だが、だとしたら誰がやったというのか?犯人は誰だ。あのASMR音を配信したサークルは反町電波研究所だから反町という名字を持つ者が犯人なのだろうか?いやそんな簡単なことではないだろう。助っ人として推理に参加した毒島さんが言うには交感神経と副交感神経が交互に興奮する音を延々と入れ込むことで不整脈を起こし、心臓に負担をかけ、心停止に追い込むらしいが、果たしてそれも科学的に可能なのだろうか?
毒電波というのは、歴史が深いが、中でも18禁の某美少女ゲーム作品で出てくるものが有名だ。そのゲームでは、毒電波が人々を狂気に走らせる要因となる。今回のASMR音は人々を死に誘うだけで、狂気に走らせたわけではない。そういや、死に誘う曲と言えば、検索してはいけない言葉で一役有名になった『暗い日曜日』という曲があった。この曲を聞くと聞いた人は自殺してしまうという都市伝説があるのだ。私も聞いたことがあるが、別になんともなかった。この曲も、今回のASMR音と違い、結局のところ死を直接もたらす訳ではない。
はて、ややこしくなってきた。
常闇で私は途方に暮れる。そこでふと気づく。
死をもたらす音の正体はもうどうでもいいのではないか?と。
そうこの世界には気で電灯を壊す奴がいるのだから何が起こってもおかしくない。
私はとにかく、事件の犯人についてこの精神世界で熟考することにした。反町電波研究所を私は反町の有名曲、「POISON~言いたいことも言えないこんな世の中は」から、POISONだけ取って毒電波研究所と読み取った。が、しかし、POISONだけじゃなくて、副題の「言いたいことも言えないこんな世の中は」からも何かとれるのではないか。言いたいことも言えないは要するに誰かが発言を止めるということだ。止める・・・止める・・・私はその言葉に引っかかった。そして、その原因に気づいた。止めるは英語でSTOPだ!!私は常闇の中にとある漫画を登場させた。ハロルド作石作『ストッパー毒島』だ。そう、私みたいな変な名前の人間が言うのもなんだが、毒島小狭という名前はなんか変だと思った。ストッパー毒島の主人公の名前は毒島大広だ!そう、簡単なこと。大きい広いという意味の大広という名前を反対にして小さい狭い、小狭という名前を作り出しただけなのだ。つまり、毒島さんの名前は偽名かつ私に嫌がらせをするためのものだったのだろう。そういや、シャンに男の友達が居るなんて聞いたことないし。
反町の名字をサークル名で使い、POISONで毒、その副題の一部、言いたいことも言えないで止める=STOPを表し、STOPと毒で、ストッパー毒島を連想させようとしていたのだ。そう、それは犯罪行為に対する自己顕示欲の現れだろう。自分の偽名を私に暗号で提示して、私がその暗号にさえ気づかないままこの難解な事件が迷宮入りしてしまう様子を陰で笑っていようとでもしたのであろう。だが、私が偶然、『ストッパー毒島』を読んだことがあったため、その企みは潰されたわけだが。
見えてきた。見えてきた。さすが精神世界。第六感がさえまくる。事件の犯人である毒島さんは自分を探偵と偽り、あたかも本当かのような推理を披露して私のマインドフルネス推理を台無しにしようとしたんだ。
私は、数時間後目が覚めて現実世界に戻ってきてから、毒島さんの電話番号を知り合いの警察官に知らせた。
数時間後、毒島さんは署に連行された。が・・・事態は思わぬ方向へ進んでいった。
毒島小狭はあくまで探偵ネームで、本当に探偵であり、シャンの友達だったのだ。
そして、驚くべきことに、今回の事件は、全て毒島さんとシャンのでっちあげだった。そう、シャンは、あたかも今回の事件が存在するかのように報告書にまとめていたのである。毒島さんが所属している探偵クラブの入会試験を、彼女は秘密裏に私に対して行っていて、それで私は存在しない事件の謎を追いかけさせられていて…つまり、私は自分の推理力を二人の手によって試されていただけだったというわけだ。
何はともあれ、事件は終結を迎えた。
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