第4話 「手を拍てば下女は茶を汲む鳥は立つ、魚寄り來る猿澤の池」

  今回は3段受験者がいないので、2段受験者7・8名で終了でしたが、私の出番は6か7番目でした。

  演技をする私と安本のすぐ近く、相撲で言えば「砂かぶり」、ストリップ劇場で言えば「かぶりつき((舞台にかぶりつくようにして見る場所の意)劇場で舞台ぎわの観客席)」の位置には、キャプテン中村を筆頭に幹部4人が座っています。

  何しろ顔だけは真剣ですが、順番さえ間違わなければいい、という志の低さがモロに行動・身振りに出て、「NHK素人のど自慢」でいえば、鐘ひとつレベルの演技。

  幹部たちに目をやると、キャプテン中村は、目に手を当て大きく口を開いて天を仰ぐ、というオーバーな仕草で自分の気持ちを表現している。正直者の副将小松の両目は点になっている。主務の槇は部活の出納帳なんかを見始める、小山(こやま)は目を閉じて寝たふりをしている。

  終わって礼をすると、私の演技に感銘を受けたのか、或いは、よくもあんなレベルで審査に臨むものだと感心した(呆れた)のか、会場はシンと静まりかえっている。

  お二人の審査員も、こころなし(こちらの気のせいか)放心状態に見える。

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