第3話
はてさて、山を下りた僕ではあるが、そこからずっと歩くと帝都であった。
道のりについては省いてしまおう。ただ、村の外には、村の炭よりまともなものがあるかと思ったが、期待していたほどではなかった。
何かと言えば、母のような人が何人もいた。罵詈雑言や暴行に黙々と耐え、潰れた卵のように押し黙って仕事をする人々である。そういう人ほど僕を助けてくれたものだが、君が予測している通り、そのすべてとは別れを告げた。
今こうして指折り数えしてみると、案外あれやこれやとしたものである。漁師、豆腐屋、蕎麦屋に土建屋、研屋にハイカラな物売りだったり。
しかし長くは続かなかった。まあ、なんということなしだ。これまで君の思うとおりのことをしたからである。
断るが、別に助けてくれた人には一切していない。父と母をも焼き殺したのは事実だが、誰とも知らぬ薄汚い小僧を救って、宿と路銀と飯をくれた人である。
では誰を焼いたかといえば、それは極道を名乗っていたり、血縁者を名乗って居座る汚い男であったり、遺産を寄越せとせっつく醜い連中である。
寝ている間に忍び込み、路銀をもらって布団に火を巻く。あとはそこを離れておしまいだ。あとの人々がどうなったかなど知らないが、少なくとも虐げる者は減ったのだ。悪くはなるまい。
そんなこんなで帝都を訪れた僕は、新聞屋となったのである。
言ったことも無い横須賀なる地の知りもしないことを話せば、これまた不思議と歓迎された。
ああ、人というのは、真実なぞはどうでもよいのだ。僕の第二の失望である。
それから僕は出版社となり、筆を執ることとなる。
内容は戦争、政治についてであった。
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