素人作家、「自作世界」で覚醒する。~スキルのある世界なのにスキルを覚えないんですが、どうなっているのでしょう?その代わり基礎パラメータが人の数倍の速度で上昇しているようです~(仮)
第20話 ユーヒ、港湾都市ハーツの発展ぶりに驚く
第20話 ユーヒ、港湾都市ハーツの発展ぶりに驚く
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「クインジェム」のおおまかな世界地図は、こちら↓
基本的には『レジェンドオブシルヴェリア』で使用したものと同じです。参考までに是非。
「クインジェム」世界全図(各国家の位置関係)
https://kakuyomu.jp/users/kyonagare/news/16817330648994581369
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聖歴1387年1月2日――。
ユーヒとルイジェンは北の港湾都市ハーツを目指すべく、ダーンウェルを出発した。
もちろん「
これにより、今回の道中でも都度パラメータウインドウを確認することが出来るというわけだ。
ハーツまでの距離は徒歩で約半日。
昨日、予定外の後れを取ってしまったため、今朝は朝一番でギルドへ向かい、その足ですぐにダーンウェルを出た。
今は昼前だが、ルイジェンによれば道半ば程は既に来ているという。
この分であれば、日が暮れる前には海が見えるだろうとそう言った。
冬のただなかとはいえ、レトリアリアは南方に位置するため、それほど寒くはない。ハーツ・ダーンウェル間の街道の標高も高くなく、周囲には森がただひたすらに続くのみだ。
この森の名は、「憂いの森」という。
二人が今歩いている「南北街道」は、レトリアリア王国が他国との交流を深める目的で東の大海に港町を建設するために拓いた道だ。「憂いの森」を切り拓き、レトリアーノから北へほぼ直線で道を敷いたのが始まりだ。
当時、ハーツは街というにはあまりに小さく、いわば定期航路の寄港地として最低限の建造物が建っていたにすぎないのだが、ルイジェンの話によれば、今は多くの人口を抱え、レトリアリアと各国を繋ぐ重要都市として位置付けられているという。
たしかに街道上には荷馬車、行商、また、衛兵を運ぶ馬車や街道衛士、冒険者、旅人などが途切れることなく行き交っており、ケリアネイアからダーンウェル間の街道の様相とは全く違っていた。
街道周辺の警戒態勢も非常に固く、街道上に魔物が現れることはほとんどないという。
「この街道に入れば、しばらくは魔物に出会うことはないからな。まあ、ゆっくり景色でも楽しみながら歩こうぜ?」
ルイジェンは頭の後ろに手を組んで完全に気を抜いているように思う。しかし、まだ冒険に慣れていないユーヒはと言えば、そんなに簡単に気を許す気にはなれない。
ゴブリンに対してはずいぶんと慣れてきたが、それでもあのすばしっこい動きと対峙する際、万が一急所に一突きでも貰えば、それこそ即死だってあり得るというのは大げさな表現でも何でもないのだ。
ルイジェンが言った基礎能力値の話だが、確かにユーヒは一般の人に比べてパラメータの数値が上がりやすい傾向にあるのかもしれない。
だが、熟練の冒険者であるルイジェンと比べれば、もちろん技術的にも身体能力的にも到底及ばないことに違いはない。
この世界で生き抜くためには、いついかなる時も気を抜いてはならないのかもしれないと心得ておいてしかるべきだ。
それに、ルイジェンほどの経験者なら、普段から周囲を警戒していて、見た目的には油断しているように見えても、実際のところは注意力を張り巡らしているのかもしれないのだ。
ガン――!
いきなり、ユーヒの隣で、おでこを抑えてしゃがみ込むルイジェン。
その鈍い音はそのルイジェンの方から聞こえてきたものだ。
「――ってぇ……。 なんだよ、この枝はよぉ!」
どうやら、頭を木の枝にぶつけたらしい。
まさか、ね? 本当に気を抜いてるのかよ!?
ユーヒはこの出来事からより一層周囲に警戒を怠ることはなくなった。
日が暮れ始める頃、ようやく大きな街並みが森の木々の間を抜ける街道の先に見える。すでに、明かりがついている建物も見受けられた。
「おお、見えたぜ? あれが港湾都市ハーツだ」
ルイジェンがようやく見えた街並みに反応して、歓声を上げた。
レトリアリア王国北部、東の大海に面するこの海岸線に1200年ほど前に新しい街が建設された。
それまでは、レトリアリアは他国との折り合いがあまりよくなく、唯一、旧ダイワコク政権領(現ダイワ国)との間に交流が在ったのみだった。
ダイワコク政権領南端の港町タンダとレトリアリア東部の港町ニアルタの間に就航していた渡り船が唯一レトリアリアへ入国するための手段であり、そこから西へ細い街道を数日歩くというルートしか存在しなかったのだ。そのルート上にケリアネイア(ユーヒが出発した町)が存在している。
その後、アルたちの活躍もあり、レトリアリアも他の五国との間で国交を正常化し、その証の一つとして、東の大海から西の大海へ、またその逆のルートを就航する定期船の船着き場として、ハーツの街の新規開拓がなされたという背景がある。
当時はただの船着き場しかなかった場所には、すでに大きな城郭都市が存在していて、その向こうに広がる東の大海が街並みの間にキラキラとした水面を覗かせている。
(これが、ハーツ――。凄い発展してる――。じゃあ、ソードウェーブもその他の都市もとても大きくなっているんだろうな――)
と、ユーヒはこれから訪れるまだ見ぬ街々に思いを馳せるのだった。
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