素人作家、「自作世界」で覚醒する。~スキルのある世界なのにスキルを覚えないんですが、どうなっているのでしょう?その代わり基礎パラメータが人の数倍の速度で上昇しているようです~(仮)
第18話 大晦日の夜、ダーンウェルの酒場にて
第18話 大晦日の夜、ダーンウェルの酒場にて
「街間移動クエスト」――。
これは、パラメータウインドウの仕様に合わせて、新たに冒険者ギルドが考案したギルド
何度も言っているように、パラメータウインドウは作戦行動中しか閲覧できない仕様になっている。
そのせいで、街から街への移動中にはクエストを受けていない冒険者も多くいるため、自身のウインドウを確認できないことになる。
これでは、せっかくのウインドウも宝の持ち腐れだ。
そこで、冒険者ギルドは、街から街へ移動する際のクエストを設けることにした。
クエストの内容は一様に、
『A街からB街へ移動し、その後、B街を出ること』
である。
行く先が決まっている冒険者に限るが、移動前にこのクエストを受けておくだけで、『作戦行動中』となるわけだ。
だったら、長距離移動するものを受けておけば、ずっと作戦行動中ではないか、と、いう指摘があるだろう。その点、冒険者ギルドも考えている。
移動区間は原則的に隣接拠点まで、ということになっている。
現在、ユーヒとルイジェンは、ケリアネイアを出る前に、ギルドでこの「街間移動クエスト」を受けている。区間は、「ケリアネイアからダーンウェルまで」だ。
よって、このダーンウェルを出れば、クエスト達成となる。故に、現在はまだ「作戦行動中」となるわけで、パラメータウインドウを閲覧することが可能なのだ。
ちなみに冒険者ギルドの設定する「拠点」というのは、冒険者ギルド支部がある場所を指しており、このダーンウェルにも支部がある。明日、この街を出る前に、新たな「街間移動クエスト」を受けて出発するのだが、この一見何も恩恵がないように見えるクエストには、実は大きな恩恵が隠れている。
冒険者たちがこのクエストを受け移動することで、現在世界中で活動している冒険者たちが今どの拠点にいるのかをおおよそ把握できるというものだ。
今でこそ、大規模な魔物の侵攻は起きていないが、そもそも冒険者ギルドは、世界中で起こる魔物案件に対処するために組織されたものだ。
現在でも、いついかなる時にでも緊急動員できるように冒険者の数や位置を把握しておく必要はあるわけで、不測の事態に対応する意味もあるというわけだ。
「なるほどねぇ~。本当にいろいろと進化してるんだぁ」
と、ユーヒは思わず呟いてしまった。
「進化してる? なんかまるで昔のことを知っているかのような言い方だな?」
「あ、ああ、いや、だって昔はそんなことは無かったんだろ?」
と、ルイジェンの突っ込みに慌てて返すユーヒ。
自分が地球という場所からやってきたということは話したが、信じてもらうまでには至らなかったわけで、その上、この「クインジェム」を創り出したのが自分だなんて言ったところで絶対に信じてもらえないばかりか、本気で精神異常者扱いされてしまうかもしれないので、それはまだ言ってない。
それにしても、スキルが全くないというのはどういう事だろうか?
やはり、クインジェムの住人ではない自分は、なにかしら他の人と違うところがあるのかもしれない。これも、
「ま、まあ、パラメータは順調に上がってるし、魔物との戦闘も少しずつ慣れて来てるし、ギルド本部に行くまでの間にスキルも覚えるかもしれないから、いまはあまり気にしないでおくよ」
と、スキルが増えないことについて、ルイジェンにそう告げておく。
ルイジェンもまた、スキル獲得にはいろいろと個人差もあるからな、と慰めてくれた。
「まあ、基礎パラメータが充分成長してるならしばらくは問題ないさ。むしろ、その方が好都合だ。他の冒険者たちがお前の成長速度を聞いたら、完全に羨望の的だろうさ――」
と、ルイジェンもニヤリと笑う。
「さあ、みんな! 今年ともお別れよ! 新しい年は、皆にとって幸多き年でありますように――!」
どこかのテーブルから女の人の声が店内に響き渡った。
「おお! さあ、みんなジョッキをもって立て! 乾杯だぁ!」
「おお!」
「よおし!」
「やろうぜ!」
と、一気に店内が活気づく。
ユーヒとルイジェンも、飲みかけのジョッキをもって、席を立つ。
「いいねぇ! やっぱ、新年を迎える時はこうでないとね! じゃあ、あたしが乾杯の音頭を取るよ!? いいかい――!?」
と、さっきの女の人がさらに声を張り上げる。
「よ! ダーンウェルの
「め・ぎつね!」「め・ぎつね!」「め・ぎつね!」「め・ぎつね!」
誰かがその二つ名を叫ぶと、一斉に唱和が始まった。
「ったく、うるさいよ、あんたたちは! 少しは黙りな! さあ、行くよ――!
「「「おう――!」」」
「新しい年と我ら冒険者の未来に――かんぱい!!」
「「「かんぱーい!!」」」
ユーヒも楽しくなって、目の前のルイジェンとジョッキをぶつけ合う。そしてさらに、周囲のテーブルの人たちともジョッキをぶつけ合ったあと、ぐいとエールを飲み干した。
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