第17話 今さら明かになるユーヒの特異点※
「ところで、ユーヒ。パラメータの方はどんな感じだ?」
ルイジェンが、焼きそばをつつきながら問いかけてくる。
ユーヒのパラメータは徐々に上がっている。
先日のゴブリンとの戦闘のあと、ぐんと数値が上がったことも確認済みだ。
それを表すかのように、その後の戦闘時に明らかに「強く」なっていることを感じたほどだ。
「ん、まあ、上がってるよ。随分と戦闘も楽になったしね。【オーラット】や【ランデル】ぐらいならもうノーダメでいけるから」
【オーラット】は大型ネズミとでもいう魔物だ。【ランデル】はまあ、鹿だな。どちらも憑依型の魔物だ。そもそもこの地に生息している野生のネズミや鹿に憑依型魔物が憑依して魔物化したものだ。
憑依型の特徴としては、憑依対象へのダメージがそのまま憑依魔へのダメージとなるか、もしくは、魔素が集中している「
「それに、ゴブリンももう怖くなくなったし――」
「なるほど、な。確かにあのあとはゴブリンに出会っても落ち着いて対応してたもんな――」
と、あの体液まみれの一件の時のことを持ち出すルイジェンだが、この食事中にそのことはあまり思い出したくないから、さらりと流しておく。
「じゃあ、スキルの方もいくつか身についてるか?」
「スキル? いや、スキルはまだ、だけど――」
「うそだろ?」
「え? 嘘じゃないよ? ルイジェンだから話すけど、僕のスキル欄は空っぽのままだよ」
ルイジェンは焼きそばをつつく箸の動きを止めて、
「――それであの動き……、なのか」
と、
ユーヒはその言葉の真意がうまく読み取れない。「あの動き」というのはやはり、緩慢だったり、軟弱だったりという意味だろうか?
「ごめんね、なかなか剣の使い方が上手くならなくて。でも――」
ソードウェーブに行って『
「何言ってんだよ? そうじゃないさ! 逆だよ!」
「逆――!?」
「お前、スキルなしであんな動きができるって、どんだけ身体能力高いんだよ!?」
「へ? どういうこと?」
「あちゃー。基本的にスキルの話ってあまり冒険者間でしないから何も言わなかったけど、やっぱり、基本的なことぐらいは言っておくべきだったかぁ」
と、ルイジェンは頭を抱えてしまった。
そして、その晩――。
ユーヒは夜遅くまでルイジェン先生のスキル講座(初心者編)を受けることになるのだった。
ルイジェンの講義はいわゆる一般的な話として、現在のこの『パラメータウインドウ』の話をしてくれたに過ぎなかったが、それでもユーヒが全く知らない未知の情報なのでとても助かった。
まず第一に基礎パラメータについてだ。
「筋力・体力・知力・器用さ」の4つの基礎パラメータ。4つの数値の合計は個人差もあるが、だいたいレベル×1+4らしい。つまり、レベルが10なら、10+4で14というぐらいだ。
ユーヒの数値だが、現在、
レベル5
筋力4
体力5
知力4
器用さ6
で合計が20。つまり、レベル16程度の数値となるわけだ。
今となっては初期値をもう覚えてはいないが、これまでに2ポイント増や3ポイント増もあったように思う。
が、2ポイント以上増えるというのは本当に稀なことであるらしく、これまでに一度も2ポイント以上同時に上がったことがない冒険者など枚挙にいとまがないほどだという。
これが事実だとすれば、これまでのユーヒの成長速度は少し異常と言っても過言ではないかもしれない。
第二に、スキルだ。
パラメータが増えにくい代わりに、大抵の冒険者はこの「スキル」によってその能力を補完しているのだとルイジェンが教えてくれた。
スキルの獲得タイミングは様々だ。
例えば魔物討伐直後だったり、依頼達成直後、
基本的なスキルとして、「体力補完」や「体幹技術」、「各種武具練度」、もちろん、「各種魔法」もこのスキルにあたる。
そして、このスキルにもレベルが付与されていて、繰り返し反復することで上昇するのが通常だという。
最後に、レベルだ。
このパラメータウインドウが見れるのは作戦行動中のみということであるが、冒険者登録開始直後に「レベル1」となり、クエスト達成によってレベルは上昇する。つまり、レベルというのは基礎身体能力とは関係なく、皆、一様に「レベル1」から始まるため、レベル=冒険者熟練度と置き換えてもいいかもしれない。
ユーヒはケリアネイアを出たときはレベル4だった。が、このダーンウェル到着時、一つのクエストを達成することができた。それが、「街間移動クエスト」というものだ。
これは、便宜的に作成された冒険者ギルドの直依頼となっている。
この「便宜的に」というのは、パラメータウインドウが作戦行動中にしか見れないということと密接に関連しているのだ――。
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