第6話 遠のく意識

 カタカタカタカタカタ……。

 休みなく手を動かしながらも、私は昨日の出来事について考えていた。


 昨日の夜、瑠璃さんからメールが届いた。


『今日はごめん。来月、ちゃんと話をしよう』


 私はそれに対して、何も返信をすることができなかった。

 何を言ったらいいか、わからなかったのだ。


 きっと私が何を言っても、変わらない。

 私は客で、彼は嘘の彼氏。

 彼の嘘の彼女は、私だけではないのだ。


 私がこれ以上欲を出してはいけない。


「来月……楽しみにしてたんだけどな……」


 ポツリと呟いた、その時だった──。


 ぐらり────……。


「っ!?」


 突然全身の力が抜け落ち、冷や汗がぶわっと吹きでて、私は思わずその場に蹲った。


「はぁっ……はぁっ……」

 呼吸が、苦しい。

 頭が、回らない。


 あぁ、だめだ。


 そう思ったのを最後に、私の意識は途切れた。





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