第4話 睡眠時間。

 

 それからというもの、わたしは仕事から帰宅すると、ひたすら絵筆を持ってキャンバスに向かう毎日を過ごした。

 高校以来なので、かなり絵筆のタッチも怪しく、彼女直筆の絵の雰囲気からは、やはり一回り落ちる仕上がりになりそうだった。


「まあ、でも久々にしては頑張ってるんじゃない?」

「うん。自分でもそう思う。でも、あくまでトレースだから、可能になってるんだよ。こんな絵、絶対に今のわたしじゃ構想すらできないし、思いつきすらしないよ。それに思いついても絶対こんな形にできない。ムリムリ」

「そんなことないと思うけど。今からでも時間かけて努力すれば絶対できるって。だって"わたし"なんだから」

「……うーうん。そう言ってもらえるのは嬉しいんだけどね。自分のことは自分がいちばん分かってるつもり。それに今の仕事もだいすきだから真剣にやらないとね……あっ。今日はコレくらいにして、寝なきゃ。3時間寝れる……」

「そうだね。また明日ね"わたし"。おやすみ――――」




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