色欲の思惑
あの色欲が魔法少女の肩を持った.
悪の組織の幹部のなかで、強い部類に入り、へらへらとした態度を崩さない、喰えない男が誰かの肩を持つ.こんな光景は悪の組織の王に対して以外誰も見たことがなかった.
面と向かって言葉をかけられた憤怒は怒りで顔を真っ赤に染め上げ、他の幹部たちは面白げに、唯一強欲が頭を抱え、構成員たちは呆然と立ち尽くす.
議題にあげられている魔法少女さえも回りの雰囲気に圧倒され、言葉を発することなく立ち尽くしている.
そんななかで唯一普段と変わらぬ、王として崇められる少女だけ異様に目立っていた.
色欲の発言を裏切りと取り、不安げに色欲、魔法少女、王の少女の順に見詰める者もいれば、発言の意図、意味がわからず立ち尽くしたままの者もいる.
三者三様に色欲の発言に構成員達は反応した.
その様子を楽しげに眺め、余裕ぶった笑みを浮かべる混乱を招いた男.色欲は普段と変わらず今回の発言になんの意味もないと表すように立っている.
[ なんなのよ、なんなのよその発言、!まさか魔法少女側に寝返るつもり?そんなの絶対認めないわよ.どういうつもりか説明してちょうだい! ]
それに噛みついたのがこの女.顔を真っ赤にして、今にも暴れだしそうな雰囲気を纏いながら憤怒が色欲に詰め寄る.
[ どうしたもこうしたも、さっき説明した通りだよ. 情報や戦力がほしいから引き入れる.ただそれだけさ.そこに何か問題があるのかい? ]
ねぇ、ボス.と言葉を続け王の答えを求めるように王である少女へ視線を投げ掛ける.
説明を聞き、今にも色欲に手を出しかねない憤怒へ抑えろという意図の視線を投げ掛け、多くは語らなかった少女がついに話し出す.
[ 確かに.そこは利点だ.けれど、そこの魔法少女が裏切る可能性は?無いとは言い切れないだろう. ]
色欲の発言を否定するかのような発言に反対派の憤怒のテンションが見るからに上がる.
[ でも、情報は必要なことは確かだ.憤怒.そこまで否定するということは確かな情報源をお前は見つけたということか? ]
上がったところに、冷水のような指摘が入りみるからに憤怒が狼狽え、色欲の胡散臭い笑顔がさらに胡散臭くなる.
[ ぇ、っと、、.一応、あるにはあります、. ]
あからさまに狼狽え、冷や汗をかいた少女が一人.
にこにこと心底楽しげに胡散臭い笑みを浮かべた青年が一人.
意味がわからず戸惑う少女が一人.
不安げに見守る構成員たち.
その皆の視線を一向に受けながらも、堂々と、王としての威厳を放つ少女が一人.
―さぁ、ここから一人の魔法少女によって魔法少女全体の、悪の組織全体の運命が変わる―
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