悪の誘惑
目の前の変な男が変なことを言い出した.
歪んだ正義?救いだす?
意味がわからない.
[ どういうこと? ]
考えてもわからないことは聞くしかない.
[ 言った通りだよ.君を助けにきた. ]
なにこの人.厨二病?それとも変態?
取り敢えずこの人がおかしいのはわかる.
[ そんな怖い顔しないでよ.俺は君の味方だからさ. ]
[ 俺は、俺たちは悪の組織.君たちの敵と言ったほうが分かりやすいかな?]
ここで敵の遭遇は運がない.ステッキがないから戦えない.終わった.
[ ま-た勘違いしてるね?俺は君を倒しに来たわけじゃなくて、君を救いに来たんだよ. ]
嬉しいでしょ?とにこにこ笑顔で話す男.別に嬉しくもなんともない.興味ないし.
[ こんなところで座り込んでるってことはなにか嫌なことでもあった? ]
嫌なこと______
この数時間で色々な嫌なことが起きてしまった.
[ ほらほら、優しいお兄さんに話してみな? ]
こんな胡散臭い男が優しいわけがない.でも、この人だったら助けてくれるかもしれない.胡散臭いけれど好戦的な性格ではなさそうだし、何よりちゃんと私の話を聞いてくれている.
[ ___人が死んだ. ]
現にほら.ポツリと呟いた言葉も拾ってくれる.
[ ん、誰が?町の人とか?]
へらへらした態度のまま聞く様子はむかつくけど、聞いてくれるだけまし.
[ そう.私が失敗したから死んだ.でも私頑張ったよ?怪我だってしてさ、人庇ってさ、なのになんで責められなきゃいけないの? ]
そうだよ.私頑張った.頑張ったんだよ.町の人は気づいてくれなかったけど.この男、色欲なら気づいてくれるはず.
[ そうなんだね.頑張ったね.お疲れ様.]
にこにこした笑顔で頬に流れた涙を拭ってくれる.こんなに優しい対応されたのは初めてのこと.
[ 君は頑張った.いい子だね.そうそうさっきの話に戻るけど、、君を救いに来た俺の手をとってくれる? ]
急に畏まった態度で私に手を差し出してきた.変なの.正直迷ってしまう.裏切られてすぐに信じてもいいの?また裏切られない?
私の中の私が必死に引き留めようとしている.でもそんなのもう遅い.どうなろうと私には関係ない.
声に出すと後悔してしまいそうだから、声には出さず恐る恐る男の手をとる.
[ 俺を信じてくれて嬉しいよ.じゃあ君は疲れただろうから少しお休み.]
私の目に手が映り視界が真っ暗になったとたん私の体が力をなくしたかのように崩れ落ちた.
[ 魔法少女も大変だよね.まぁ、俺等悪役もそう変わらないけどね. ]
―最後に聞こえた言葉は誰の声だったかそれを判断する余裕はその時の私にはなかった.―
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