怪しい男
私に声をかけてきた怪しい男はべらべらと聞いてもいないことを勝手に喋っている.
[ ~で、~なんだよ.聞いてる? ]
聞いてない.興味ない.
[ おーい. ]
うるさい.興味ないからほっといてほしい.
[ おーい. ]
[ 興味ないって言ってんじゃん.ほっといて. ]
思わず言い返してしまった.返された言葉はあまりいい言葉ではないのに男は喜んでる.変態なの?
[ やっと返事返ってきた.良かった~. ]
心底ほっとしたように、また他人事のように呟いている様子は路地裏という環境も相まってかなり気味が悪い.
[ 君.さっきの話聞いてなかったでしょ? ]
ばれていた.でも本当に今は興味がない.面白くない.
[ だからなに? ]
[ 折角俺がいい事話してたのに.聞いてないとか酷いね~. ]
どうでもいい.取り敢えずこの変な男から離れたい.
そう考えているとまるで私の考えを見透かしたかのように男が喋る.
[ 嫌なことあったんでしょ?服装から見て魔法少女みたいだし、ちゃんと聞いてくれなきゃ通報しちゃうかも.]
胡散臭い笑顔で心底楽しそうに話す内容は今の私にとって一番都合の悪いこと.
それを聞いて思わず動きかけた足が止まる.それと同時に驚きのあまり呼吸が止まってしまったかのような静寂が辺りに立ち込める.
元々人通りの少ない道だから静寂は元々ある.でもこんな急に静かになることってある、?
まるでこの空間丸ごと胡散臭いこの男に支配されているような.そう錯覚してしまうほどこの状況は不思議だった.
[ なんでそれを?て言うか誰?何が目的? ]
思わず早口で質問攻めしたのは無理もないと思う.
[ ほんとに聞いてなかったんだ.最初に名乗ったし話したのにな~. ]
聞いてくれなくて悲し~と男が言っているが全くそうは思えない.悲しんでいる様子はないし.
[ しょうがない.もう一度説明してあげる. ]
余裕ぶった苛々する態度.でも今は大人しく聞く選択肢以外無い.
―[ 俺の名は“色欲”-ラスト-.君を歪んだ正義から救いに来た男だよ.]―
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