魔法がどろりと溶けるまで.

まほあめ

魔法少女の絶望

魔法少女が堕ちるまで.

理想と現実

アニメの中の魔法少女達はきらきらしてた.


魔法少女に助けられた人もにこにこしてた.


あくまでも理想.所詮はアニメの世界.


そんなの最初からわかってた.わかってた.


わかってはいたけど憧れは止められなかった.


でも現実は


魔法少女は全然きらきらしてなくて.


助けたはずの人にはお礼すら言われない.


こんな.こんな現実なら.


[ 魔法少女なんてならなきゃ良かった. ]


裏切りともとられる発言だが幸い騒がしい周りには聞こえていなかった.


[ あんたのせいでうちの娘が! ]


目の前のおばさんが私に唾がかかるのも気にせずに叫んでる.


私のせい? 違うでしょ. 私頑張ったよ?


今だってほら.


頭から血が出てる.


目の前のおばさんはそれにすら気づいていない.


馬鹿みたい. 目が見えないのかな?


[ もっと早く来てくれたら助かったのに ]


目の前のおばあさんが泣きながら言ってる.


それも私のせい? 私頑張ったよ?授業だって途中だったのに抜け出して.急いで変身してここに来て.


それなのに私のせいって言うの?


[ ママを返してよ! ]


小さい男の子が泣いている.


死んじゃった人は戻せないんだよ


戻せないのも私のせい?違う.私じゃない.私のせいじゃないよ.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.違う.


[ 違う. ]


思わず呟いた言葉と共になにか固いものが落ちる音がした.


何が落ちたのかはわからない.わからないけどその音が聞こえた瞬間私は走り出した.逃げ出した.


走って、走って、走って、あの街の人には会わない遠くまで逃げた.後ろで私を責め続ける人たちから目を背けて.


ついた場所は明らかに怪しい人通りの少ない町の路地裏だった.


普段なら怪しいと思ってしまう場所だが今の私には好都合.


衣装が汚れるのも構わず座り込み俯いた.


どれくらい時間が経ったのかはわからない.


荷物もなにも.武器であるステッキだって持ってない.


あの時落としたものはステッキだったらしい.


もう使うことはないからどうでもいいけど.


そう考えていると頭上から声が聞こえた.


[ お姉さんそんなところでどうしたの? ]


明らかに胡散臭い怪しい男.


―でも私にとってはある意味光だったのかも知れない―



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