第2話 夕食は、海岸でBBQ!
いわゆるリゾート施設のようなものだ。
その中でも、海岸から見える海の景色が綺麗なのである。
「火加減の方はよろしい頃合いでしょうかね?」
「問題ないと思うよ」
和樹は海岸にパーティー用のBBQ専用の鉄板を設置しており、着火ライターを使い、炭に火をつけて鉄板を温めていた。
炭はパチパチの火を立て、程よく燃え上がっているのだ。
「では、お肉も焼いていきましょうか!」
智絵理が周りを見て、その場を仕切っていた。
「咲は何の肉から食べたい?」
「じゃあ、カルビから!」
和樹の隣にいる妹の
「カルビから食べるの? 最初は豚肉からじゃないか?」
「えー、私はカルビがいいんだけど。お兄ちゃんは豚肉派なの?」
「BBQの最初の定番としては、豚肉って聞くけどね」
「えー、そうなの? じゃあ、豚肉からかなぁ」
和樹は妹の隣で、鉄板の上に豚肉を敷いて焼き始める。
「んー、いい匂いがするね」
美味しく焼かれている、その豚肉の匂いに釣られ、和樹のところまで近づいてきたのだ。
「美味しそうね! 最初は豚肉からなの?」
「そうなの。お兄ちゃんがどうしても豚肉がいいって」
妹の咲は、玲奈の近くで言っていた。
「でも、好きなお肉の方がいいんじゃないの?」
「そうだよね」
「和樹くん。咲ちゃんだってそう言ってるんだし」
玲奈からも甘えた口調で言われる。
しかも、玲奈の胸元が和樹の右腕に接触しているのだ。
さすがに高級な二つのモノを当てられたら、断るという判断は下せなかった。
「わかったよ。咲はカルビだっけ?」
「そうだよ」
妹は、和樹が今手にしたカルビの入っている発泡スチロールを見て、瞳を輝かせていたのだ。
和樹は箸を使い、発泡スチロールからカルビを取り、鉄板の上に置く。
「涎が出てるぞ」
「え、で、でも! 美味しそうだし、早く食べたいよ」
「わかったから、ちょっと待ってて。焼けるまでもう少し時間がかかるからさ」
和樹は妹を上手に手懐けながら相手をしていたのだ。
「でも、お肉ばかりじゃ、ダメですからね。野菜もちゃんと食べないと」
智絵理と、その使用人の男性はカット野菜が置かれた即席テーブルの近くにいる。二人は串を持ち、その串の先端から野菜を刺していたのだ。
かぼちゃ、玉ねぎ。それからピーマンを中心とした野菜だらけの串刺し。
パッと見た感じだと色鮮やかで美味しそうに見えなくもない。
「これなら、手に持って食べられるでしょ!」
智絵理は皆に、そのベジタリアンが好みそうな串刺しを見せつけていたのだ。
「委員長。そういうのって、途中に肉を挟むものじゃないの?」
「そういうのもありますけど、私は野菜だけのを食べるのが好きなの。岸本さんもどうかしら? 別格の味を堪能できると思うわ」
「お、俺は後で食べるかも」
和樹は一応、軽く断った。
気が乗ったら、後で食べるかもしれない。
様子見しておく事にしたのだ。
「普通に美味しいと思うわ。私の家では農家もやっていたりするの。そこで取れた高級な野菜なの」
「そうなんですか! 私、それ食べてみたいかも!」
妹は乗り気で、その串刺し野菜に興味津々だった。
「咲さまも一緒に串に野菜を刺してみませんか?」
「はい。やります!」
咲は焼肉をそっちのけで、使用人の男性と一緒に串刺しの作業を始めていたのだ。
「美味しい!」
妹の咲は、焼きあがったカルビを皿に乗せ、それを近くの即席テーブルに置いていた。
テーブル近くで展開させた即席椅子に座り、焼かれたお肉と共に、ちょっとだけ焦げ目がついた串焼き野菜を片手に食べていたのだ。
「んー、お肉と一緒に食べる野菜は美味しいかも! ご飯もあったら、もっといいんだけど」
妹は和樹よりも一足先にBBQを楽しんでいた。
「では、別荘の方にありますので、お持ち致しますね」
「え、本当?」
「はい。少々お待ちを」
そう言って別荘の方まで駆け足で向かって行く。
使用人の男性は自分の事を後回しにして、身の回りの事を手伝っているのだ。
「私も食べてもいいかな?」
和樹の近くにいた玲奈も積極的にお肉を箸で拾い上げ、自身の皿によそっていた。
「和樹くんの分もよそっておくね」
玲奈は食事用の即席テーブルの上に、自身でよそったお肉の皿を置くと、和樹の分まで用意してくれるのだ。
「和樹くんも焼いてばかりじゃなくて食べないとね。お腹が減って来てるでしょ?」
玲奈の問いかけに応じるように、和樹のお腹が鳴っていた。
「我慢しないでね」
「そ、そうだな。俺も食べようかな」
和樹は一旦手を止める。
「後は私がやっておくわ」
智絵理は焼きあがった串刺し野菜を口に咥えたまま、鉄板の上にお肉を敷いて焼き始めていたのだ。
和樹らが即席椅子に座って食べ始めている時も、智絵理は使用人の男性と共に焼肉を焼いていた。
鉄板の方からは焼肉と、玉ねぎなどの野菜が焼きあがる匂いが漂ってきて、食欲をさらに掻き立てられるようだった。
焼く側もいいが、やはり、食べる側の方が一番楽しいと思う。
ご飯をお供に食べる肉は別格に美味しかった。
焼肉のたれをつけて食べていると、なおさら美味しい。
その上、太陽が沈む瞬間を、こんなにも綺麗な海を背景に眺められるのは幸せだと思う。
「この串刺しも食べ応えがあっていいな」
「そうだよね。お兄ちゃんは食べないかもって言ってなかった?」
同じテーブルに座っている妹は、一旦食事を終えた為、和樹の事を見ていた。
「それはまあ、外見的にな。でも、やっぱ、高級な野菜を使ってるだけあってさ。この野菜には鮮度があって、その上甘いし、野菜本来のうま味が滲み出てるって感じだな」
和樹はその串刺し野菜にかぶりつきながら、客観的な評価を下していたのだ。
「皆様方、まだありますので、ご遠慮なく」
「じゃあ、もう少しだけ。でも、少しお腹を減らしてから食べるかも」
「わかりました。岸本さま用に取っておきますね」
使用人の男性は手際よく鉄板の上で箸を躍らせながら、お肉の焼き加減を確認しながら、新しい皿に、そのお肉らをよそっていた。
「あなたも食べないとダメですよ。今日は頑張ってたんですから」
「智絵理さまが、そう言っていただけなるのなら」
「はい、これ。あなた用ですから。ご飯つきで」
智絵理が大きな皿にご飯とお肉を半々でよそっていたのだ。
使用人へのご褒美らしい。
「では――」
使用人は一旦作業をやめ、食事する事に専念していた。
「ん? そういや、梨花は? さっきから見てないけど?」
「確かにそうだね」
同じテーブルにいる玲奈も辺りを見渡し、首を傾げていた。
「そういえば、梨花は玲奈さんと一緒に別荘の方に行かなかった?」
「そうなんだけど。私が出る前には、中原さんはいなかったわ」
玲奈は数分前の事を思い出すような顔つきで話していた。
「そ、そうなんだ……」
「私。てっきり、中原さんがここにいると思って、別荘の中を確認せずに出てきたから」
「じゃあ、どこに行ったんだろ」
和樹は食事する手を止めた。
「俺、ちょっと見てくるよ」
「え? 今から? 夕暮れ時だし、危ないかも」
玲奈から引き留められる。
が、和樹は
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