罰ゲームで付き合っていたと言って振った彼女。俺が、えっちな美少女と付き合い始めた途端、手の平返ししてきた件――後日談
譲羽唯月
第1話 夏休みに見る海の景色
リゾートというだけあって、最高に景色が良い。
海の水が緑色に光って見える。
けれど、和樹は、その光景をしっかりと見れなくなっていた。
ゆえに、顔が赤く痛んでいた。
「あんなに殴らなくても」
和樹は、赤く染まっている部分を触ると痛む。
さすがに殴りすぎだと思う。
やはり、許さない方がよかったかもと一瞬思うが、元を辿れば、その原因を作ったのは自分自身である。
梨花のせいにすること自体が間違っているのだ。
でも、しっくりと来ない。
「岸本さま、容体はどうでしょうか?」
「だ、大丈夫です」
「では、私は屋敷に戻りますから、また何かあったらお呼びください」
「はい、ありがとうございました」
その甲斐もあって、大分痛みも和らいできていた。
和樹は使用人が立ち去った後、海岸のところに設置されたビーチチェアに座り、海の風が吹く、パラソルの下でゆっくりと過ごす事にしたのである。
夏休み。
西園寺家の別荘で過ごしているのだが、こんなにも素晴らしいリゾートで夏を満喫できている事に、和樹は感謝した。
夏休みの補習がないからこそ、この時間を過ごせているのだ。
夏休み前のテストを頑張った甲斐があるというもの。
リゾートの海岸に設置されたビーチチェアに座っている和樹は、サングラスをしたまま、海の上に存在する真っ赤な太陽を眺めていた。
そんな中、明るかった太陽の明かりが薄くなり、それから暗くなる。
何かと思っていると、女の子の声が聞こえた。
「和樹、そろそろ遊ばない?」
それは
彼女が和樹の前にいるからこそ、目の前が真っ暗になっているのだ。
「い、いいよ、俺は」
和樹は断った。
彼女は和樹の近くから離れる。
すると、和樹の視界が明るくなった。
目の前にあったのは、玲奈のおっぱいだったのだ。
それほどにデカく、視界さえも遮ってしまうほどだった。
玲奈はビキニ系の水着を着用しているが、爆乳な為、普通に谷間が見えている。
刺激が強く、海パンだけしか身につけていない和樹にとっては緊急事態だった。
「そういえば、怪我は大丈夫?」
「まだ痛いんだけど。梨花から殴られたところが」
和樹は椅子に座ったまま、赤くなっている頬の部分を見せた。
「そっか。じゃあ、もう少し休んでいた方がいいかも。でも、怪我は引いて来てるみたいね」
「さっき、応急処置をして貰ったからね。そういえば、他の人らは?」
「なんか、智絵理がクルーザーを出して。それに乗って島を一周するんだって」
「クルーザー⁉ 委員長って、なんでも持ってるんだね」
「凄いよね。和樹はどうする? 行く?」
「いいや、また梨花にあったら殴られるかもしれないし」
「そっか。じゃあ、私行くね。和樹、また後で」
「ああ」
和樹はビーチチェアに座り直し、まったりと過ごす事にした。
和樹の瞳には、玲奈が立ち去って行く後ろ姿だけが映っていたのだ。
「はあぁ、何も考えずに過ごせるのは贅沢だな」
「岸本さま。飲み物を持ってきました。こちらで良かったでしょうか?」
「はい。それでいいよ」
「では、コップに注ぎますか?」
「いいよ。それは自分でやるよ。それに痛んでいたところも良くなってきたから」
ビーチチェアをベッド変わりにしていた和樹は上体を起こし、西園寺家の使用人の男性からコップとキンキンに冷えたオレンジジュースの瓶を受け取る。
瓶の蓋を開け、和樹はコップに注いだ。
「岸本さまは、クルーザーに乗らなくても良かったのでしょうか?」
「今は一人で過ごしたいと思って。さっきから気にかけてくれてありがと」
和樹はオレンジジュースを飲んで気分を入れ替える。
「いいえ、身の回りの事をするのも私の務めですので。他にご要望がありましたら、お声かけしていただければ」
その使用人は不満な態度を見せず、笑顔を対応してくれているのだ。
「わかったよ。そういえば、今日の夜って、どこで食事をするんですかね? あっちの屋敷の方ですか?」
「今日は海岸で行うと智絵理さまと話しておりまして、それでよろしいですか?」
「海岸で? そういう事なら、それでいいよ。俺が決める事じゃないからね」
「では、失礼いたします」
使用人は再び屋敷へと向かって行くのだった。
和樹が椅子に座り、海の方を眺め、優雅にオレンジジュースを飲んでいると遠くからクルーザーの音が聞こえてきた。
島の周辺を移動しているクルーザーが、和樹の目の前を通過していたのだ。
遠目だとわからないが、40フィートクラスの大型クルーザーだと思われる。
価格的には普通に一億円するはずだ。
一般人は、まず乗る機会がないだろう。
お金持ちじゃないと購入できないほどの高級品。西園寺家なら一般的な乗用車を選ぶ感覚で購入できるのだと思われる。
和樹は椅子に座ったままオレンジジュースを飲み、遠目でそのクルーザーを鑑賞していた。
クルーザーには、和樹以外の四人が乗っている。
プラスアルファで西園寺家の操縦者もおり、計五人が搭乗しているのだ。
女の子らの楽しそうな声が聞こえてくるが、和樹はただ見ているだけだった。
本音で言えば乗ってみたかったのだが、今の和樹は一人でゆっくりと過ごしたかったのだ。
誰からも干渉される事無く、海岸で優雅に、夏の季節だからこそ出来る事を堪能したい。
そんな一心で、和樹はオレンジジュースを再度飲むのだった。
「お兄ちゃんも一緒にクルーザーに乗ればよかったのに」
「俺はちょっと一人でゆっくりとしたくて」
「そっか。でも、楽しかったよ。島の周辺を周っていたけど、景色も最高だったんだからね」
和樹の近くまで歩み寄って来た妹の
妹は楽し気に、経験してきた事を話してくれていた。
他の人らもクルーザーから降りて来たようで、和樹は椅子から立ち上がる事にしたのだ。
「岸本さん、そろそろ、準備を手伝ってもらえますか?」
お嬢さま風の水着を身に纏う
「今からって、海岸で食事をする準備ってこと?」
「知っていらしたんですね?」
「さっき、西園寺さんの使用人から聞いてて」
「そうですか。では、手伝ってもらえますか?」
和樹は頷いて承諾した。
今日の夕食はBBQらしい。
海岸まで鉄板や、焼くための食べ物を屋敷の方から持ってくる必要性があった。
一旦、皆で別荘の屋敷の方へと向かって歩き出す。
屋敷へ戻ると西園寺家の使用人の女性がいて、その彼女はキッチンスペ―スでBBQ用に野菜や肉をカットしてくれていたのだ。
使用人は、いつもの男性の他に、数名ほど島にやって来ているらしい。
和樹も皆と同様に手伝い、そのカットされた野菜が盛り付けられた皿を持ち、再び海岸まで向かう。
「……あのさ、怪我の方は大丈夫なの?」
屋敷を後に歩いていると、隣に
彼女はビキニ系の水着の上からアウターシャツを羽織っていたのだ。
先ほど、水着が取れたから、その対策として着ているのだろう。
「え? まあ」
「そう、じゃあ、良かったわね」
「他人事のように済ませるなよ。結構、痛かったんだからな」
「でも、元々はあんたが、変態行為をしたのが悪いんでしょ。それに、私の水着を奪っておいて」
「そ、それはそうなんだけど……」
「こ、今回は御相こってことで。それでいいでしょ!」
梨花は振り向くことせず、海岸まで向かって行く。
なんか、しっくりと来ず、和樹はモヤモヤしたまま梨花に追いつこうと若干早歩きになるのだった。
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