第21話 アルフレッドに二度目の恋をする
「どしたのアル君?」
「いや、どしたのって……ボクが言えたことじゃないけど容赦ないなと思ってさ」
「だって敵だよ? アル君いつも敵には容赦するなって言ってたじゃん」
「まぁそうなんだけどさ」
「ん~、ほら同性同士のスキンシップみたいなものだよ」
「同性……か」
何とも含みのある一言。
その反応にちょっとカチンときた。
「何だよ、それ……アル君は俺が元男のくせにって言いたいの? 女に暴力振るう元男だって言いたいの?」
「え?」
何だよ、何だよ!
今のアル君の反応!!
俺が誰のために戦ったと……
ヤバい泣けてきた。
クソッ!
好きだって言ってくれたくせに!
……
…………
………………
言ってくれ……言って……あれれ?
そういや、俺まだアル君に好きって言われてない!!
ア、アハハ……
「そうか、そうだよね。ごめん、こんな女もどきが出張って……彼女みたいな顔して……」
「は? リョウ? 何を言って……」
今、俺はどんな顔をしてんだろう?
どんな?
アハハ……
いいや、もう、どうでも……
好きになった男の子に振り向いてもらえないなら、どうでも良いよ……
「ちょ、リョウ……!!」
アル君が慌てたみたいに俺の名前を呼んだけど、知らない!
振り返ったって、辛くなるだ……
「あびゃう゛ぁう゛ぁう゛ぁう゛ぁあああぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ……」
お、おお……な、何が……起きた?
突然、身体を貫くみたいに走った電流。
「あ、ごめんボク言わなかったっけ? ボクの視界から消えたら電流が走るって」
「あ、あひぇ~、あ、あにょ、まじゅちゅはまら有効らったのでしゅか?」
「ん、やっぱり君に話してたよね。よかった」
「よきゃないわい、しびしびしてゆ!」
「でも、ボク解除した何て言ってないからボクのせいじゃないよね?」
「にゃ、にゃいぉ~……」
こ、この腹黒ショタ。
悪びれもせず……
「でも、とりあえず解除しなくて良かったよ。キミ、もし解除していたらボクでも追いかけるのが大変なくらい全力で逃げるつもりだったでしょ?」
アル君が俺を優しく抱き起こしてお姫様だっこする。
アル君の顔が近い……
「やだ……」
「え?」
「優しくしなくて良いから、どうせどんなに願っても振り向いてもらえないなら優しくするな!!」
「何を……」
「どうせ叶わないことぐらい俺が一番わかってるもん!! どうせ女にも成りきれない元……んむぅ!」
え!?
何が起きた?
電流で、俺、頭でもおかしくなったか?
何でアル君が俺にキスを!?
ちゅ……
地球の放つ明かりに照らされて、俺とアル君の唇の間に絹糸にも似たテラテラ光る糸が引く。
「何で……?」
「君は自分の思考の中で勝手に完結させて暴走する癖を直さないと駄目だと思うな」
「何が勝手に暴走だよ! だってアル君、俺を元男としか思ってないんだろ! 期待、させないでよ……」
「ああ、そうかゴメン。ボクの言葉が足りなかったからリョウを傷付けたんだね。ボクが言いたかったのは、キミがボクのために可愛らしい女の子に成れるよう努力してくれてるんだねって言いたかったんだよ」
「かわ……っ!!」
ぽんっ!
と、音が出そうなくらいに頬が赤くなり熱を帯びるのを感じた。
えっと、アル君は突然何を口走ったんだ?
また、俺の反応を見て楽しんでるのか?
「う~……」
「さっきボクのために使い慣れない女言葉というか、ちょっと変なキャラ使ってまでボクのために戦ってくれたよね」
「それはあの女がアル君を怒らせるようなこと言うから……っていうか、変なキャラとか言うな」
「変は変だと思うけど、なんかポンコツ感あったし」
「ポンコツ言うな」
「それに、ナチュラルに同性同士の戦いって言ったね」
「それは……ただ、とっさに……」
「でも、それはボクを思ってくれたから出た言葉だよね。そう思うのはボクの自意識過剰なのかな?」
「き、聞くな……」
「アハハ、ごめんごめん。でもそれだけ思ってくれてるのに、リョウはまだ心のどこかで自分が元男だったのを気にしている」
「だ、だって、それは……本当のことだから……」
「ごめん」
「え?」
「その不安はボクがキミに植え付けてしまった感情だ」
「そんなことない! ただ、ただ……ホントはどうしようも無く不安なんだ……」
「……リョウ、未熟なボクだけどちゃんというよ。キミのことが好きだ」
「す、え、あ……ふぁっ!?」
「泣き顔も、暴走して慌てふためく顔も、強がる顔も、何より、今の照れてる姿……ああ、全てが愛おしい。大好きだよ」
「え? …………あ、ああぁ……ふにゃあぁぁあぁぁあ」
「だから、無理して慣れない言葉なんて使わなくて良いから、リョウは
……
…………
………………
の、脳みそがとけしょう……
「………………」
「リョウ?」
「ひゃ、ひゃ、ふぁ、ひゃい!」
「えっと……その鳴き声は、ボクの告白を受け止めてくれた、ってことでオッケーかな?」
思わず頭が千切れそうな勢いで肯いてしまう。
ア、アル君が、アル君が……
イケ顔の超真顔で俺のことを好きだって言ってくれた!!
え、え?
何、これ?
幻聴?
幻?
それとも夢?
う、うたかたの夢?
もしかして俺、ホタルみたいにすぐ死ぬん?
「ア、アルくん、ほ、本当に俺のこ、んむぅ」
お姫様だっこされたまま、俺の唇がまたアル君に奪われる。
「これ以上余計なこと喋らないで。真実だけを受け止めて」
それはどこまでも優しい声音で……声音で……
俺はいま――
この少年に
心の底から
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