第二章 知る心、消える心
第22話 旅立ち
まいどおおきに!
リョウです。
嘘くさい関西弁で挨拶しましたが、今何が起きてるかというとアル君と二人で旅に出ることになりました!
旅です、らぶぃ旅行です!
ひゃっはー!!
……
…………
………………
すまない嘘なんだ……
ええ、うっそですよ~だ。
まぁ旅に出るのは本当なんだけどさ。
らぶぃ旅行とかじゃ無いんだよ。
旅に出るきっかけは決して前向きじゃないというか、強制的な旅になったとでも言えば良いのか……
もちろんアル君の未来にとっては大切な旅だから、疑いようも無く前向きだし、アル君の未来には当然俺が並んでいる訳だから、俺も前向きには受け止めてるんだけどさ。
旅に出る切っ掛けというか旅に出なければならなくなった過程がさ……
ま、まあ、大好きなアル君が隣に居れば俺はどこでも幸せ何だけどさ。
……
…………
………………
四日前――
『愛してるよ、リョウ』
『アル君、俺も……』
『この地球明かりの下で結ばれよう……リョウ、キミは永遠にボクだけのモノだよ』
『アルきゅん……ん……はぁ~……ひゃん!? そ、そこは弱いの、だめぇ……あん♥』
「ねぇ、ねえってば」
「あん♥ アル君ってばこんな所で~♥」
「聞けー!!」
「ひゃんっ!?」
……
…………
………………
現在――
「あれ、ここどこだっけ?」
「ねぇ、軽くトリップして記憶を捏造しているみたいだから修正しても良いかな?」
「ふぇ?」
突然、アル君が俺の回想に割り込んできた。
いま、俺は絶賛素敵なジト目を浴びています。
ふ、その目ご褒美です。
ご褒美ですがさすがにやめて!
そうやって俺のミスをほじくり返すの!
「真実はこれだよね?」
「ひゃあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁ……回想シーンは入れないでえぇぇぇぇ!!」
俺の絶叫が大自然の中に轟いた。
……
…………
………………
真・四日前――
「初めて……好きだって、ちゃんと言ってくれた。アル君、俺、ずっとアル君の隣に居て良い?」
「ボクの隣から居なくなるのが許されると思ってたの? 地の果てまでだって追い掛けるよ」
「ヤンデレなアル君もサイコー!! ハァハァ……ア、アル君……アル君……良い匂いだよ-」
「ちょ、リョウ? どうしたのさ、突然暴走モードになって!! あれ、前にもこんなことあった気が?」
「ア、アル君、アル君、アル君、ハァハァ……」
「ちょっと、さっきまでの乙女なキミはどこに行ったの?」
「俺、今心は猛烈に乙女だよ? アル君とえっちぃことしたくてたまりません!!」
「そんな肉食獣みたいな雄々しさは望んでない!! って言うか、リョウ!?」
「もう、アル君ってば緊張してるからってはぐらかそうとしないのぉ♥」
「じゃ、じゃなくて! キミ、血が出てるよっ!!」
「ふぇ? 俺いつのまに、破瓜なんて……アル君♥ もう俺の初めて奪っちゃったの?」
「違うと思うけどなぁ!!」
……
…………
………………
現在
恥ずかしい……
やらかした!
やらかした!!
またまたやらかした!!
う~、うぅ~><
「そんなこと思い出さなくてもぉ」
「発情していた時も可愛いかったけどさ、今の照れてるリョウの方がボクの可愛いリョウが戻ってきたって感じがして良いけどね」
「うきゅぅぅぅ、さらっとまたそんなこと言うし……」
頬が燃えるみたいに熱くなるのを感じる。
「まあ、男のボクが慣れろって言うのが横暴なのは理解している。でも、リョウもこれからずっと女の子で居るなら、身体のためにもある程度は慣れるというか気をつけないと駄目だと思うよ」
「ふぁい……」
まあ、何て言うかさっきの暴走は、ええ、こっちの世界に来て初めて女の子の日を迎えた時の暴走と同じです。
ちょっと情緒不安定になってたのもたぶんその影響だと思うですよ、はい。
ええ、その影響なんですぅ!!
「とりあえず町まで急ごう。これ以上野宿するのは身体にも良くないし」
「う、うん……」
そんなこんなで俺とアル君は旅に出ている。
最初にも言ったけどらぶぃ旅行だったら良かったんだけどなぁ。
実際の所は強制的に旅に出なければならなくなったのである。
真・四日前PART2――
「リョウ!」
暴走する俺の一瞬の隙を突いて、俺の上にまたがるアル君。
やっぱりドSの男の子としては、女に組み敷かれてえっちぃことするより、攻めて責めて
うん、大丈夫。
俺も覚悟はとっくに決まってるから♥
「リョウ、出来上がってるところ悪いけど、今はそれどころじゃない」
「え……ええ!? せっかくお互いの愛を確かめ合って後は合体するだけなのに何故!? ちょっとの出血くらい大丈夫!!」
「大丈夫って、女の子初心者がそんな確証も無い自信を持たない」
「だってだってだってぇ~、それでも俺はアル君と深夜のマッスルドッキングがしたいの!!」
「ありがとう、なのかな? えっとさ、そう言ってもらえてボクも嬉しいし続きをしたいのは山々だけど……」
「だったら!」
「がっつかない。キミの身体が一番心配なのは確かだけど、とりあえずボクが今言いたいのは……」
アル君がちょっと疲れた顔で背後を見やる。
俺も追い掛けた視線の先では……
「ああ、俺とアル君の愛の巣がぁあぁぁあ!! 何てこった、メラメラと燃えてはる!?」
そう、視線の先では俺たちの家が目下大炎上中だった。
風穴の空いた壁からチラついて見えた炎は、瞬く間に火柱となって盛大に燃え上がり夜の闇を焦がさんばかりに煌々と赤が灯る。
「ログハウスは火災に強いからこんな燃え方はそうそうしないんだけど、風穴が煙突効果になったかな」
「何で……何、で? あ! あの痴ロンジョ!! 腹いせに家に火を放ちやがったな!?」
「大負けに負けて半分正解」
「え?」
「リョウ、思い出してごらん。さっきの戦い?」
「さっきの戦い?」
ニコニコ顔のアル君に嫌な予感が加速する。
「『
「え? えっと……」
「岩を投げつけて、強制的に魔術の詠唱を止めた時に炎の流れ弾が家の壁を突き破ったんだよ」
「あ、ああ!? そう言えば!!」
「詠唱中ならまだしも、発動した魔術を強制的に妨害したら魔術がどんな状態になるか、どこに飛んでいくか分からないから危険だって最初にレクチャーしたよね?」
「う、うにゃ~……」
「家、燃えちゃったじゃん。研究資料もあったんだけど……これは、お仕置きだな」
「お仕置き!?」
ヤバい、ときめく!!
「嬉しそうにしないの。言っとくけど何もしないよ!」
「ええ、何でぇ!? 何でさアル君!? おいたした娘へのお仕置きは世の常だよ!!」
「物欲しそうに言うなよ。リョウにはそれが一番のお仕置きだって知ってるからだよ」
「そんな~……でもでも、アル君だって、その気になってたからお辛いですよね?」
「また変な言葉遣いして。ハッキリ言っておくけど今はそれどころじゃないよ」
「俺はそれどころ扱いの女ですか……」
「すねないの。急いでここから離れないと」
「何をそんなに急いでいるの?」
「アルメリアがここに来たってことは、今まで隠れていたボクの居場所が帝国にバレてるってことだよ」
「え? あ、そうか」
アル君はかつて帝国の何て国名か知らないけど、その前進となる王国時代から仕えていた研究者にして宮廷魔術師だ。
しかも、幼くして世界最高峰の知恵と力を手に入れ、王国に帝国を名乗らせるまでに力を与えた希有な存在。
「もしアルメリアが独断で動いたんじゃ無ければ、帝国だってアルメリアが交渉に成功するなんて欠片も思っちゃいないはずだ。辺りの森に控えの部隊が居る可能性がある」
「それじゃ……」
「ここに居るのも潮時だったんだろうね」
「そんなぁ……俺とアル君の愛の巣だったのに。おのれ帝国!! 許すまじ!!」
「キミも半分原因だってこと忘れないでね」
「うきゅ~、それを言わないで……」
ぐぅの音も出ないご指摘。
「ま、逆に燃えて良かったのかもしれないけどね。世間には出したくない研究資料もあったし」
「でも、大切な資料だったんだよね?」
「大切と言えば大切だけど頭の中に入ってるから大丈夫だよ」
おお、すげぇ台詞だ。
世の研究員が聞いたら影でツバ吐きそうな嫌味だと思うですよ。
「ねぇ、とりあえずアル君はこれからどうするの?」
「旅に出ようと思う」
「え、旅?」
「そう旅。キミに発破かけられた時から考えていたんだ。ボクがもたらしたもの、ボクがしでかしたこと……それは世捨て人を気取ってれば償えることじゃないんだ」
「アル君……で、でも……それは……」
「ありがとう、。でも心配しなくても大丈夫。ずっと前から分かってたことだったのに今更決心が付いたなんて遅すぎるくらいだったんだ。この一歩を踏み出せたのは、キミがくれた勇気のおかげだよ」
「ア、アルくん…………ふぇ……」
やだ、何さこのイケショタ!!
格好良すぎて泣きそう。
自分の過ちを見つめ直すなんて誰にだって出来ることじゃ無い。
ましてやアル君の過去は俺の想像を絶する苦しみのはず。
それなのに、こんな力強い顔つきで宣言するなんて。
きゅ~♪
『男子、三日会わざれば刮目して見よ』ってヤツだな!!
もう! もう!!
アル君、格好良すぎじゃん♥
アル君の成長、お姉さんは嬉しいぞ♪
でも……
「ねぇアル君、その旅には俺も」
「あ、リョウは当然ボクと一緒だよ。拒否権は無いから」
「え、えへへ……うん♪」
もう、もう!! アル君てう゛ぁ!!
俺が言って欲しい言葉を先に言ってくれちゃって!!
ヤバい……
幸せすぎて俺の脳がヤバすぎる。
でも、俺こんな素直に喜んでたらただのチョロインみたいじゃん。
攻略難易度F、必要ステータス条件・攻略必要イベント無し――
みたいな……
俺はBAD END回避要員じゃないはず何だけどなぁ。
う~ん、ここはちょっと気を付けないと軽く見られてしまうかも知れないな。
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