圭太兄

 とある爆弾を抱えているわたしは、暇さえあれば圭太のお部屋に居座ります。

 

 今もまさに圭太のお部屋に居座り中です!

 

 だって…やっぱり好きな人の側にいられるって幸せじゃない。

 

 

 でもね、圭太ってものすごく優しいし背も高くてビジュもいいのよね。

 

 だから…モテるのよ。

 

 だからわたしは、圭太に聞いてみたの。

 

 

「なんで圭太って、彼女いないの?」

 って。

 

 そしたら圭太ってば、

「それは…色々あって…てか、菜美華こそ告白しないの?」

 って言われたわ。

 

 

「告白…」

 

 そうよね…。圭太は、わたしの好きな人がお兄さんだと思っているんだものね。

 

 

「早くしないとさ、兄貴彼女できちゃうかもしれないよ?」

 

 なんていうのよねー。

 

 うん、べつにいいけど。

 

 

 なんて言えないわよね…。

 

 

 あぁ、わたしってば…なんでお兄さんが好きとか言ってしまったのかしらね…。

 

 

「それは…困るかな…?」

 って一応こたえたわよ…。

 

 

「そんなさー、困るとか言ってると………」

 

 

 ?

 

 圭太が廊下を見ていきなり固まったから、わたしも圭太が見てる方を見て固まったわよ…。

 

 

 みえてしまった…

 

 

 圭太兄の後ろに…みえてはいけない黒髪の女性の姿を…。

 

 

「け、圭太…にもみえるの?」

 

「あ…うん。そうだね」

 

 …

 

「おやおや、お二人さぁん!いつも仲がよろしくて〜。紹介するね、オレの彼女〜♡」

 

 って、圭太兄が嬉しそうに彼女紹介してくれたわ。

 

 

 あぁ、彼女か。

 

 みえてはいけない黒髪さんかと思ったわよ。

 

 だって、圭太ってばものすごい顔したんですもの。

 

「あ、兄貴の彼女さん…はじめまして。あの兄ちゃん…オレたち今取り込んでて…だから…その…」

 

 って、めっちゃ慌てる圭太。

 

 

「おぅ!イチャイチャタイムだな‼︎オレだって空気よめるよ〜。じゃ、そういうことでねー♡」

 

 と、お兄さんは彼女と部屋に入っていきました。

 

 

 しん…。

 

 イチャイチャタイムでは、ない。

 

 圭太兄…空気よめておりませんでしたね…

 

 そして…

 

 圭太は、何をそんなに焦っていたのですかね?

 

 

「あの…圭太?」

 

「あー‼︎ごめん‼︎」

 

 

 圭太がいきなり申し訳なさそうな顔でわたしに謝ってきたのよ?

 

「え?なんでごめん⁈」

 

 わたしは、意味がわからないから圭太に聞いてみると圭太は、

 

「オレがちゃんとフォローしてあげてなかったばっかりに…兄貴に彼女ができちゃって…ほんとごめん‼︎」

 

 って言ってきたわけよ。

 

 

 あぁ、また忘れていたわ。

 

 わたしは、圭太兄のこと好きって設定だったわよね…。

 

 

「あ、ううん。圭太は悪くない。悪いのは…わたしなの…。ごめんは、わたしが言わないといけない言葉」

 

「そんなことないよ。ごめんな…なんにもしてやれなくて。辛いよな…」

 

 なんていうのよね。

 

 優しすぎるじゃない‼︎

 

 そんなに優しくされればされるほど…申し訳ない。

 

 圭太兄のこと、好きってウッソーンって言えたら…どんなに楽でしょう…。

 

 

 いや、言ってよくない⁇

 

 今こそチャンス‼︎

 よね?

 

「あのね…実は、圭太兄のこと好きって言ったの…あれウソなの。今までウソついててごめんなさい。」

 

 ってきちんと謝ったわ。

 

 めっちゃ整列されている本棚くらいきちんと謝ったのよ。

 

 そしたら圭太ってば…

 

「強がんなって…。まぁ、菜美華は優しいからそう言えばオレが落ち込まないって思ったんだな。自分が辛い時にまでオレのこと考えてくれる菜美華は、めっちゃ最高だよ。兄貴は、見る目がないな。」

 

 って、眉をひそめて笑った。

 

 圭太…

 

 勘違いしてる…

 

 でも、わたしがはじめからかきちんと言わなかったのがいけないんだもんね…。

 

 反省…

 

 

 てか‼︎

 

 

 ドッキーん♡

 

 あの表情は、なによ⁉︎

 

 

 なんで圭太は、そんなにいちいちわたしをキュンキュンさせることばっかりしてくるのよっ‼︎

 

 

 そんな表情してきたら、ハートをぶち抜かれて当然じゃないの‼︎

 

 

 好き♡

 

 もう、圭太のこと…めっちゃ大好きって言って圭太のむねに飛び込みたい‼︎

 

 圭太兄じゃなくて、ほんとは圭太がずっと好きでしたって言いたい‼︎

 

 でも…

 

 でも、そんなことしたら大迷惑よね…。

 

 

 圭太…

 

 

「圭太…。ありがとう。」

 

 

 わたしの精一杯の気持ちをお伝えしたわ。

 

 

 そしたら圭太も、

「うん」

 ってこたえてくれたの。

 

 

「じゃあ…わたしそろそろ帰るね。夕方は、長風呂タイムに夕食に、歯ブラシにお肌のお手入れがあるから、大忙しなの」

 って笑ってみせたわ。

 

 失恋なんて、なんのそのって感じでね。

 

 

 まぁ、そもそもほんとは失恋してないんだけどね…。

 

 圭太が勘違いしてるし、いってもさらに勘違いしているからね…

 

 

 これ以上しつこく勘違い訂正しなくてもいいよね?

 

 ダメ…かな?

 

 

 やっぱりもうひと推しして、訂正するべき?

 

 

 圭太だけ、反省させたままって…どうなの?

 

 やっぱり言うべきよね!

 

 

「あの、圭太…。」

 

「なに?」

 

「わたし…ほんとに圭太兄のこと好きじゃなかったの。口からおまかせコースだったの。だから…ごめんなさい」

 

 って謝ったわ。

 

 

「ふっ、口からおまかせコースってなんだよ?菜美華は、ほんとに面白いね。まぁ菜美華にも色々あるってことだね。わかったよ、もしなんかあったら、いつでも言ってね。役立たずだけどさ。」

 

 なんてまた、申し訳なさそうに笑ったのよ?

 

 圭太は、役立たずなんかじゃない。

 

「圭太は、圭太は…」

 

 圭太は、わたしの一番大好きな人。

 

 って言ってしまいそうになったけど、頑張って飲み込んだわ。

 

 苦い薬飲むくらいムングってね。

 

 そして圭太に、

「圭太は、役にたつ‼︎」

 って言ってしまったわよ…。

 

「そっか!ならよかったよ」

 って圭太は、笑ってくれたからわたしはそのまま家に帰ったわ。

 

 

 グダグダな一日だったわ…。

 

 

 ダボダボの服を着て過ごす気分…ね。

 

 ホカホカの紅茶を飲もうとして、めっちゃぬるかった…みたいなね。

 

 ズボン前後ろ反対…みたいなね。

 

 あぁ、どうしたらいいのかしら…。

 

 

 好き…。

 

 

 そればっかりがエンドレスよ…。

 

 

 あーぁ…。

 

 

 どうしたものかしらね。

 

 

 

 続く。

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