第3話 自然の不思議な力

次の日の朝。幸壱こういち登華とうかは日課であるランニングをしていた。


2人は今、この町にある見晴台みはらしだいに続く坂道を走っている。


「見晴台、到着~。」


そう登華は元気な声で両手を広げる。


「相変わらず、いつでも元気だねぇ。

君は。」


そう幸壱が登華の後ろから声をかける。


「幸壱君だって、もう死にそうになりながら、この坂を上ってないでしょ?」


そう登華が言葉を返す。


「…まぁな。でも、そんなに元気バリバリではいれんよ。」


そう言うと幸壱はベンチに座る。


登華も幸壱の横に腰を落とす。


「朝日までまだ30分ぐらいあるね。」


そう登華が腕時計を見ながら言う。


「まぁ、のんびり待とうぜ。」


そう言って幸壱は身体を伸ばす。


そんな幸壱の様子に登華は優しく微笑む。


「どうだった?」


「なにが?」


そう幸壱が登華に目線を向けて聞き返す。


「初めてのソロ登山。」


そう言われて幸壱は少し考える。


「1人は1人で楽しかったよ。

でもまぁ、登華と一緒の方がオレは好きだったな。」


そう幸壱は答える。


その言葉が嬉しくて登華は想いっきり幸壱に抱きつく。


「な、何だよ急に。」


そう幸壱は驚いた声を上げる。


「べ~つに~。で?1人で何してたの?」


そう幸壱を抱きしめたまま顔を上げて登華は尋ねる。


「何って、そうだなぁ。読書して、散歩かな。…っあ、そうだ。登華って力の岩って知ってる?」


「力の岩?なんぞや?それは。」


そう初めて聞く名前に登華は聞き返す。


そんな登華に幸壱は静香しずかから教えてもらった事を話す。


「へぇ。そんな不思議な岩があの山にあったんだ。何回も登ってるけど、知らなかった。」


そう幸壱に抱きつくのをやめた登華は驚く。


「あの感触は本物だったよ。

マジで神様の力ってあるんだなって感じたね。」


そう幸壱は深く数回頷きながら話す。


「へぇ。そんなに凄いなら、私も1度体験してみたいなぁ。」


そう登華が興味をもつ。


「そんな気軽な感じで触ろうとすると、バチが当たるぞ。」


「だったら、幸壱君にもバチ当たらない?」


そう登華に言われて幸壱の動きが止まる。


「・・・それは…嫌だなぁ。」


「神様に謝ったほうがいいんじゃない?」


「神様~ぁ!!軽い気持ちで触ろうとして、すいませんでした~ぁ!!

どうか、お許しくださ~ぁい!!」


そう幸壱は全力で謝罪する。



バカみたいな会話を2人がしていると優しい黄金の光が2人を照らす。


「おっ。朝日だ。」


そう言って登華が目の前の大きな山から顔を出す朝日を見つめる。


「ここでの朝日も何回も見てるけど、いつ見ても感動するよねぇ。何でだろ?」


そう登華が朝日を見つめながら疑問を投げる。


「それもまた、自然の不思議な力ってやつなんじゃないか?」


そう幸壱が話す。


「なるほどね。」


そう登華は納得すると少し間を空けて言葉を続ける。


「これからも、一緒に味わおうね。」


「え?」


そういきなりの言葉に幸壱は聞き返す。


「自然の不思議。」


そう登華が明るい声で答える。


「でも、まずは明後日の和菓子の味を一緒に味わおう!!」


そう登華がテンションの高い声をげる。


その声に合わせて幸壱も「おぉ~。」と声を挙げる。

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