第2話 和党山

幸壱こういちがソロ登山を楽しんでるいる頃、登華とうかは幼なじみで親友の三田みたあかね昼梟ひるふくろうと言う喫茶店でお喋りをしていた。



「へぇ。あの山下やました君が独り登山ねぇ。

高校時代の彼からは考えられない行動ね。」


そう話を聞いた茜は少し驚いた声で言う。


「男は日々成長していく生き物なんだよ。茜。」


そう何故かどや顔で登華は答える。


「だったら、その成長は登華のお陰だね。」


「え?」


「だって、山下君を登山に連れ出したのは登華でしょ?」


そう茜が微笑む。


「…ただ私が幸壱君と一緒に見たい景色があっただけだよ。」


そう登華は少し恥ずかしそうに抹茶を飲みながら答える。


「理由なんてどうでもいいでしょ。

結果、山下君は自分が知らなかった素敵な世界を知れて、それを楽しんでるんだから。」


そう茜が紅茶を飲みながら話す。


「それを言うなら、私だって楽しんでるよ。幸壱君との登山。あの山の頂上からの景色は学生時代も何回も見たけど先月、幸壱君と一緒に見たあの景色が1番だったなぁ。景色って凄いよね。

自分の気持ちや誰と見るかでまるで別の世界なんだから。」


そう言いながら登華は幸壱と2人で見た桃色の世界を思い出す。


「そう?景色は景色なんだから、そんなに変わんないでしょ?」


そう茜は怪しんだ目を登華に向ける。


「そう思うなら、茜も彼氏さんと一緒に登ってみなよ。学生時代よりも綺麗に心に映るはずだよ。」


「心に?」


そう疑問に思いながら茜は自分の胸を抑える。



「そうだ。登山の話で思い出したけど、今話題の山知ってる?」


そう茜が尋ねる。


「話題の山?」


そう登華は首を傾げて聞き返す。


「そう。この町にある、“和党山わとうやま”って山。」


「その山がなんで話題なの?」


「それはね~ぇ…」



「山の頂上に和菓子屋がある?!」


そう登華から話を聞いた幸壱は驚く。


「そう。何でも、店長が登山好きの人みたいでね、多くの人に山の魅力を知ってほしいと言う想いから店を山の頂上にてたんだって。」


そう登華が茜から聞いた話を幸壱に話す。


「そんな簡単に建てられるものなのか?」


そう幸壱は疑問に思う。


「まぁ、今の時代。願えば大体の事は叶うんじゃない?」


そう登華が適当な事を言う。


「は~ぁ。進んだ時代ってのは凄いねぇ。」


そう幸壱が感心する。


「そんな時代に生きれている事に感謝だね。」


そう言って登華は目を閉じて手を合わせる。


幸壱も何となく同じ行動をとる。



「つまりは、和菓子好きの君はその和菓子屋に行きたいと言う事ですな?」


そう幸壱が話をまとめる。


「そのと~ぉり!!」


そう登華が元気な声で答える。


「っで。肝心かんじんな事ね。

その山のレベルは?」


そう幸壱は尋ねる。


この国には“登山とざん管理かんり団体だんたい”と言う国に認められた組織が作った山のレベルがある。

1~3は登山素人でも登りやすい山。

4~7は登山に慣れた人にオススメの山。

8~10は登山歴が5年以上の人にオススメの山。そして11以上の山に登るにはプロ免許が必要となる。


「安心して。上竜山じょうりゅうさんよりも低い、レベル1の山だから。」


そう登華が答える。


「よし。なら行くか。」


そう幸壱が言うと登華は強く頷く。


「幸壱君は今日、山登ったばっかりで疲れてるだろうから、3日後の水曜日に行こう。登山で少し疲れた身体に入る、和菓子の甘味はきっと最高だよ。」


そう登華がワクワクした声で話す。


そんな嬉しそうな登華の姿に幸壱も嬉しくなって微笑みがこぼれる。

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