●◯ シオン竜医になる

しかし、

当然のとこながら、

一つの超えなければいけない、

大きな壁があった。


―医師免許試験、である。


研修医としての実習経験。

これはまったく問題なかった。

彼女の医院で雇用すればいい。


実技も余裕だろう。

圧倒的センス。

そもそも彼にはプロの竜鎧屋としてのキャリアがある。

外来を主とするミルダよりも、

腕前は既に、はるか雲の上だった。




問題は、、、

筆記試験である。

ペーパーワーク。



悩みに悩んだが、

仲間に相談することにした。




まず!

元パートナーくんに連絡を取り、

三バカトリオも呼んだ。

そして、

シオン(彼)の手元だけをうつし、

その圧倒的な手技の数々を見せつけたのだ!!

―会場が震えた。


こっ、

これは!!


医療界のスーパードクター!!

超ド級の大型新人になる!!

世界を変える逸材である!!!


次に!


彼に、遠隔で勉強を教えてやってほしいと頼み込んだ。

ものすごーーい変わり者で、

言葉を話せないと正直に伝えた。


彼らは皆、

医療従事者である。

そうかそうか、と、

人並みならぬ苦労を背負うであろう彼を思い、


皆、腕を組み、

心を奮い立たせ、

快く協力を約束してくれた。


彼らは、強気をくじき弱気に優しい、

スーパーヒーローなのである!!


最後に!!


経緯(あれやこれや)をして、 

若干(かなり)の美味しい思いをさせて、

丸めこみ、

こそこそと呪いをかけ、

猛スピードで彼らの〈目を借りた〉のである!!



ここまで3日!!



シオンは、

あまり文字の読めない子だが、

感覚さえ入れば、

直感で解けるのである。





もちろん。



呪いが綻びたあとも、

本を読んだり、

こつこつ勉強を重ねているようだった。




というか。



彼らが気づいてないはずないのだ。

プロなのだから。



手元だけで、

シオンだとわかってただろう。



言えることと、

言えないこと。



新しくなったバルコニーの手すりにもたれて、

海を眺めた。


彼女の白衣が、びゅうっとなびいた。




彼らのことだ。


そんなことより、医学界の発展のためだ!

何かあったら、

自分が身を切ればいい!!


全員が全員、

そう腹をくくっていたんだろう。





だって実は、

みーんな、

お土産を渡したりお茶のふりして、


偶然を装って、

シオンを、

練習に立ち会わせて、


彼がぽろっと、 

何か言わないかな??と、

ちらちら様子を伺うような、

そんな日々が続いてたのだった…。







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