第8話 仲直りと、半竜人型サービスの開始

ポーラは腕まくりして、


でっかいブラシを持って、

お風呂の床をごしごしした。




…、

そりゃそうだよなあ!

彼女は執事(バトラー)なんだ。

一緒に、

風呂に入るわけないっ。

はっはっはー。

俺は何を慌ててたんだろうなあ。




俺は、

きょろきょろしたけど、

お姉様(俺の嫁)は、

いなかった。

ちえ。


俺たちみんな、

身体の下半分は、

竜だったんだよ。

鱗が、

タンクトップとパンツみたいに、

くっついてんの。


俺は赤。

隣の子は青。

向こうの子は緑。

もう一人の赤いのもいた。

あっ、

例の売店の泥棒はアイツか?!なんて、

思ったりしてさあ。

そしたら、

そいつも、ぷぷっと笑ったから、

あっ、

多分、被害者仲間だなって思った。


この、

半竜人型サービス。

新規導入なんだって!


見間違い防止。すごっ。


さっき、

紫音さんが間に入ったから、

アイディアから実現まで、

めちゃくちゃ早く仕上がったんだってさ。

イエーイ★


変な人だけど、

居てくれると、すごいんだなー。



竜に戻りたければ、

胸に手を当てて、

戻りたい!って思うと、

ぼわわーんって、

トランスフォームするんだ。

これ、すっごい楽しい!


これは呪い紙なしで、

できるんだ。

不思議だ。


でさ、

みんな、

胸にトンボの模様ができていた。

あれって思った。


それで、

ああ、さっきのトンボのバッヂの代わりに、

デザイン仕様変更をしたんだな、

と思った。


みんな意味もなく、

ぼわーんぼわーん、ってやったよ。

ゲラゲラ笑った。


あるあるだよな?


「もうっ。お湯冷めちゃうよ?」

そんなふうに、

ポーラに言われて、

はっとして、

みんなで、ぱたぱたと風呂へ入った。



みんなで、

輪っかになってさ。

背中をごしごししてると、

ほんとーに、

気分が良かった。


後は、

俺がやるからいってこいよ、と、

アトラスに促されて、


なんと。


風呂に、

ポーラも混じってきた。

彼女も、お腹は白い竜だった。

へえー、仲間だったんだ!


お風呂でお背中、流しっこ。

ふかふか布団で、にらめっこ。

ふふふ。


みーんな鼻にあわあわがくっついて、

げらげら笑った。


ついでに、

頭も洗おうって言って、

やってみたけど、

これは、自分でやろうってことになった。

なんか、そのほうが良かった。


みんな、

パジャマに着替えた。

魔法温風機(ドライヤー)

あれ良いな!!

ズゴーーーーーーーーって。

すぐに乾いた。

闇の竜デザインだった。

中二病(ちゅうに)みたいだった。



パジャマはみんな白地だった。

金か銀の縁取りに、

火とか、水とか、葉っぱの刺繍だった。


長ーいふかふかの布団で、

みーんなでごろんごろんして、

一緒に眠った。


意味もなく、

端から端まで、

みんなでゴロゴロした。


一人が始めると、

みんなで始めて。

レースになった。


何人かは、

座ったまま、


おしゃべりしてくすくす眺めた。

ポーラも、ずっとご機嫌だった。


そして、

また明日ね、と言って、

南十字星の居間へ帰っていった。


俺たちもそれぞれのゲストルームへ戻った。



ポーラは、

南十字星に戻って、

日報を書いた。


シオン、

今頃、ミル姉と仲直りしてるかな?


ぱたんと日報を閉じた。


大窓からは、

大きな三日月が見えた。



皇国神殿の地下の大きなベッドでは、

先ほど、光の速さでさらってきたのだろう。


夜勤を終えたミルダが、

マイ枕片手にすやすやと寝ていた。


隣では、

半分だけ竜になったシオンが、

本を読んでいる。


ときどきミルダに、

鼻をこすりつけて、

ぐうぐう、くるくる、と、

満足気に鳴いていた。


ベッドサイドには、

分厚い本が、うず高く積まれていた。







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