第8話 仲直りと、半竜人型サービスの開始
ポーラは腕まくりして、
でっかいブラシを持って、
お風呂の床をごしごしした。
…、
そりゃそうだよなあ!
彼女は執事(バトラー)なんだ。
一緒に、
風呂に入るわけないっ。
はっはっはー。
俺は何を慌ててたんだろうなあ。
◇
俺は、
きょろきょろしたけど、
お姉様(俺の嫁)は、
いなかった。
ちえ。
俺たちみんな、
身体の下半分は、
竜だったんだよ。
鱗が、
タンクトップとパンツみたいに、
くっついてんの。
俺は赤。
隣の子は青。
向こうの子は緑。
もう一人の赤いのもいた。
あっ、
例の売店の泥棒はアイツか?!なんて、
思ったりしてさあ。
そしたら、
そいつも、ぷぷっと笑ったから、
あっ、
多分、被害者仲間だなって思った。
この、
半竜人型サービス。
新規導入なんだって!
見間違い防止。すごっ。
さっき、
紫音さんが間に入ったから、
アイディアから実現まで、
めちゃくちゃ早く仕上がったんだってさ。
イエーイ★
変な人だけど、
居てくれると、すごいんだなー。
◇
竜に戻りたければ、
胸に手を当てて、
戻りたい!って思うと、
ぼわわーんって、
トランスフォームするんだ。
これ、すっごい楽しい!
これは呪い紙なしで、
できるんだ。
不思議だ。
でさ、
みんな、
胸にトンボの模様ができていた。
あれって思った。
それで、
ああ、さっきのトンボのバッヂの代わりに、
デザイン仕様変更をしたんだな、
と思った。
みんな意味もなく、
ぼわーんぼわーん、ってやったよ。
ゲラゲラ笑った。
あるあるだよな?
「もうっ。お湯冷めちゃうよ?」
そんなふうに、
ポーラに言われて、
はっとして、
みんなで、ぱたぱたと風呂へ入った。
◇
みんなで、
輪っかになってさ。
背中をごしごししてると、
ほんとーに、
気分が良かった。
後は、
俺がやるからいってこいよ、と、
アトラスに促されて、
なんと。
風呂に、
ポーラも混じってきた。
彼女も、お腹は白い竜だった。
へえー、仲間だったんだ!
お風呂でお背中、流しっこ。
ふかふか布団で、にらめっこ。
ふふふ。
みーんな鼻にあわあわがくっついて、
げらげら笑った。
ついでに、
頭も洗おうって言って、
やってみたけど、
これは、自分でやろうってことになった。
なんか、そのほうが良かった。
みんな、
パジャマに着替えた。
魔法温風機(ドライヤー)
あれ良いな!!
ズゴーーーーーーーーって。
すぐに乾いた。
闇の竜デザインだった。
中二病(ちゅうに)みたいだった。
◇
パジャマはみんな白地だった。
金か銀の縁取りに、
火とか、水とか、葉っぱの刺繍だった。
長ーいふかふかの布団で、
みーんなでごろんごろんして、
一緒に眠った。
意味もなく、
端から端まで、
みんなでゴロゴロした。
一人が始めると、
みんなで始めて。
レースになった。
何人かは、
座ったまま、
おしゃべりしてくすくす眺めた。
ポーラも、ずっとご機嫌だった。
そして、
また明日ね、と言って、
南十字星の居間へ帰っていった。
俺たちもそれぞれのゲストルームへ戻った。
◇
ポーラは、
南十字星に戻って、
日報を書いた。
シオン、
今頃、ミル姉と仲直りしてるかな?
ぱたんと日報を閉じた。
大窓からは、
大きな三日月が見えた。
◆
皇国神殿の地下の大きなベッドでは、
先ほど、光の速さでさらってきたのだろう。
夜勤を終えたミルダが、
マイ枕片手にすやすやと寝ていた。
隣では、
半分だけ竜になったシオンが、
本を読んでいる。
ときどきミルダに、
鼻をこすりつけて、
ぐうぐう、くるくる、と、
満足気に鳴いていた。
ベッドサイドには、
分厚い本が、うず高く積まれていた。
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