第5話 俺の嫁と、煉獄のレン

俺は、ポーラたちの案内で、

工房の隣のゲストルームを教えてもらった。


短いアプローチだが、

低いポーチライトが灯った。

夜風が鼻に抜けて、

木の葉のようにざわざわと胸を震わせた。


こちらも、

まだ建てて間もないのだろう。


新しい木の匂いが漂っていた。

大きな、両開きの木の扉だ。

文様は蜻蛉(とんぼ)だった。


「こんにちは。」


ぺこりと頭を下げて、

見回すと、

しんと暗かったゲストルームに、

ぱっ!!と光が灯った!


 ぱんっ!!いらっしゃいませーー!!


わあっ!

にこにこと大勢の大人やちび竜が出迎えてくれた。


えっ、 




ど っ き ー ー ん !!っとした。 





だって、

一人だけ真っ白に光り輝いている、

お 姉 さ ま が いるんだもの!!


オーラが見える!!

何か、もふもふした、

でーっかいのを抱えてるんだ。

顎も身体も隠れてる。

すらりとした足だけ見える。

みんなの後ろにいるんだ。


でも、ぜんぜん隠れてない!!


なんか、すっごく前にいる!?

前の人が、みーんな透けちゃったみたいだ。


ヒュウッ、と、

切れ味の鋭い切っ先で、


俺の体がまっぷたつにされた感覚がした。 

青い揚羽蝶。


俺の瞳が、

グググーっと、

開かれていくのが自分でわかる。

まるで、

強く強く、こじ開けられるようだ。

まつげの一本一本まで、

炎が満ちる。

顔が、耳が、真っ赤になるのがわかる。

胸が痛い!!!

苦しい!!!

なにか、

大きなものが

俺にのしかかる。

っかっ、、、、、

汗がぽたぽたする。


これは、

あれだ!!

カッ!!


俺の嫁(どストライク)!!!

これだあっ!!


どどーーーん!!

ひゃーーー!!!

みんなが言ってるのは、

こ、これかああああ。

じたばたするのはかっこわるすぎるので、

俺は、

土下座をしていた。

…目を合わせられる気がしない。

どうしよー。


でもみんな、

俺がすごくすごく疲れたんだと思ってた。

アトラスはすぐ、

俺を担いでくれた。


「レン!!

疲れたんだよな!!

部屋に行こうか。」


俺、連れて行くよ、と、

パタパタ飛んで、

部屋まで連れて行ってくれるようだ。

ぐわりと力強く、体が浮いた。


ポーラが荷物を持ってついてきてるのがわかった。




あ、

あれ?!

 

ここ、

どこだっけ?!



枕元には、

ぶどうサイダー。


あっ!!



紫音さんだ。


俺が起きたのに気づくと、

読んでた本を伏せて、にっこりした。

がうがうーと、優しく言った。


そして、

俺の額に呪い紙をぺたっと貼った。

俺の前髪を優しく書き上げて、

そこに、ふーっと息を吹きかけた。


何だ?!

わ、

わわ!!

赤い竜だった手と身体が、ふわふわと変質していく。

人間の子ども?


あっ、俺?

俺じゃないような??

ああーっ!!もしかして?!


彼はにっこりして、

宝石のたくさんはめ込まれた黒い手鏡を見せてくれた。


わあっ、

誰がどう見たってこれは、


煉獄のレンだーー!!!!


嬉しいいいいいーーー!!!


輝くような金髪。赤い瞳。

なんか、服もおしゃれだ!!

赤字に、金の刺繍が光った。


えーっ!!

なんでサッカーウエア!!

わかったの?

すごいよ、すごいっ!!

そう。俺サッカー少年なんだ。

思い描いてた以上の、煉獄のレンだよ!!


バシッとキメてやるぜ!!PK!


なーんてねっ!!

思わず足を振り上げた。

炎がパチパチっとはね飛んだ。

おもしろっ!!


俺が、

喜びを噛み締めていると、

彼も、にっこりと、

本当に嬉しそうな顔をした。


そっか、

さっきの鎧を作った人なんだ。


すげえな。

天才だ。


大鏡を見るように促して、

部屋を出て、

向こうの部屋にある、

パーティー会場へと身振りで案内してくれた。


俺は、

さっきのお姉さまのことで、

頭がぱんぱんだった。


(続)




















 

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