第4話 ◆◆◆シオンの竜化

◆◆



俺、

結構重いんだ。



◆◆



しかも性格が、

悪すぎる。



渇きが止まらない!!

おかしくなる!! 



高い天井。

大きなベッド。

石造りの美しい部屋。



キリスは、

急患のために、

来られなくなったんだ。 



彼女は医師だ。

来られないのは、

当たり前だ。 



けれども、

早く会いたいーーーーー!!


どったんがっしゃんと、

泣きながら、

ベッドを引きちぎりチェストを蹴った。


喉をかきむしり、

体に爪を立てて、

あたりを、

血まみれにした。



  

止められないんだ。





そして、

ぶつっと、

真っ黒に、

意識が飛び、





記憶がなくなった。









、、、がうー!!!

がうー!!

ううー

うう。


「ええええええーーーー?!!!!」


ナース長もびっくりである。

紫音は、

竜医院のベッドで、

ぷいっと、

むくれてぐうぐう寝ていたうえに、


起きたらおきたで、

ストレスなのか?

まったく、

人語を喋れなくなっていたのであった…。




騒ぎを聞きつけて、

竜預かり所から、アトラスがやってきた。

「どうした!!??」




そして、




ぱあああー、っと喜んでいるのが、

誰が見ても、明らかだった。


なんなら、

小刻みに震えて、

泣いていた。


「辛いよなあ。

俺と契約してるんだから、

先ずは俺を診ろ、だろ?

そうだよなあ。

そうだよなあ。」

と、


ぽんぽんと、

嬉しそうに顔を覗き込んだ。


なぜか、

美しさだけやたら輝きを増した紫音は、



お前に何がわかる!!


と言わんばかりに、

ぼろぼろのシャツ姿のまま、


がぶーっ!!!っと彼に噛みついた。

今のアトラスの姿は、ちび竜である…。

ナース長たちは、あわてて引き剥がした。


そして彼は、

古代語と竜語と人語がごちゃまぜになった、

不思議な言葉を発し、

その美しい響きだけを、届けることになったのである…。



しかし以来、

アトラスは、

「お前、憑き物が、取れたなああああ!!」

シオンに頭を噛みつかれながら、

だらだら血を流して、

満面の笑みで彼をなでて、泣く日々が続いていた。

彼の居る病室には来るなというのに、しつこく来るのである。


そう。

気に入らなければ、

即、爪撃!!

…。


これこそ、竜なのである。


アトラスは、元皇国竜騎士で、

相棒歴二十二年。


いまでこそ、

紫のちび竜の姿ではあるが、


かつての青年と竜の関係性が、

どんなものであったか、

想像に固くなかった…。



そして、

竜医ミルダ(キリス)も似たようなものである。


かっ、

かっ、

…かわいいー!!ぷぷっ。


彼女は、

腕利きの竜医師である。


両手で口を抑えて、

身悶えて、、


アトラスの止血をするのも忘れて、


そのおかしな光景を眺めていた…。

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