第2話

 僕が走り始めてから一体何分が経っただろう。僕が向きを変えたとき、目的地も変わっていた。公園に行けばいずれは見つかるだろう。ならば駅だ。電車は強いぞ。

 振り返るとさっきまで見えていた母が見えなくなっていた。僕はスピードを落とした。

 曲がり角を曲がるとき、ふと危険を感じて、右端を見た。——母だ。

 母は忍耐強くこのあたりを探していたのだ。少し遠回りになるが、信号を渡った方が安全だろう。

 僕は紫色の信号を渡り始める。

 車が飛び出してくる。僕は避ける。避け続ける。己の力がある限り。僕は走る。走るしか生きる道はないのだ。僕は走る。走る。走るのだ。走れ! 己の力がある限り、走るのだ! 走ろう! 走ろう! ——僕はいつの間にか自分を励ましていた。誰だって命の危機を感じればとりあえず走るものだ。

 走れ! 疲れてもまだ! ……息が上がってきた。呼吸するたび喉が寒い。腹が痛い。喉が寒い。寒い。冷えた。でも止まるな。あ、痛い……。

 僕は止まった。呼吸を整える。1、2、3……。僕はまた走り始めた。


                 *


 武美たけみは探していた。何かって? 行方不明の少年を、だ。武美は事故をロボットと思い込んだ少年を探して、公園へ向かっていた。

「あの子のことだから、公園にいるはず——」

 すると、それはそこにいた。武美が探していたものとは、微妙に違ったが。


「あ、幸平……」

 息子、高垣幸平は公園でうずくまっていた。

「幸平、よかった」

 幸平はまだうずくまっている。幸平は3Dプリンターで作った偽物だった。

「ああ、幸平……」

 武美は泣き崩れた。幸平を探すまでは、終われないと思った。

 武美は走り出した。では、図書館はどうか。図書館で呑気に本を読んでいる——そんなことは、考えられないだろうか。

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ロボット——ある少年の黙示録 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

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