第7話 いかついおっさんか。と思ったら優男だった。
ギルドの客間のソファーでしばし待つ。
数分して、バタバタと足音がして、数名の人間が客間に入ってきた。
「これはこれは、パウル様に勇者様! どうぞどうぞ、こちらにお座りください」
僕は、客だし、相手はギルドマスターらしいお偉いさんだから、ドアに近い下座に座っていたのだが、入ってきた人物は、慌てて自分とパウルを奥の上座に座るように促した。
青い髪の頭の回転が早そうなお兄ちゃん、年のころは30少し過ぎだろうか?受付の親父も、今周りにいる他の人間も、同じデザインの服を着ているので、これがこのギルドの制服なんだろう。
少し軍服を思わせるが、軍服というより、戦士の服といった風合いのものである。
ギルドマスターが対応に困ってるようなので。
「スドウ・タケルといいます。どうぞよろしく」
と僕から名乗った。
「これはこれは、スドウ様。わたくしがこのギルドのギルドマスター、グランド・シーカーと申します。こちらこそよろしくお願いします」
とグランドは丁寧に返してきた。
「受付の者が、勇者様がパウル様を連れてやってこられた。と申しておりますが。スドウ様が、猫の勇者様で間違いありませんか」
「どうやらそのようです、昨日から、猫の勇者やらせてもらってます」
「ほうほう。不躾ですが、勇者様方は、皆、特別な力、といいますか、群を抜いている才能をお持ちなのですが、スドウ様はどのようなお力をお持ちなのですか?」
「ああ。詮索するようで恐れ入りますが、ギルドのマスターとして、皆さまのお力を把握しておく勤めがありまして、、」
「どうやら、僕の才能は、ゲームのスキルを使えることらしいです」
「ゲームのスキル?でございますか?それはいったいどのようなものでしょう」
「実際お見せしたほうが早いですかね」
僕は、言って、『エンジェリカ・サーガ』のマジックライトというあたりを照らす光の魔法スキルを使った。
「なるほどぉ。これは興味深い。これは魔法とはまた違うものなのですか?」
「この世界の魔法がよくわかりませんが、、まぁ、似たようなものです」
「これは、エンジェリカ・サーガというゲームのマジックライトというスキルです」
言ったところで僕自身なぜ僕がこのスキルを使えているか原理がわかってない。まさに神の奇跡だ。
「スドウ様の魔法は、こういった補助系のものが主流ですか?」
「いや。むしろ戦闘スキルがメインです。ただここで使うわけにはいかないので、、」
「なるほど。これは頼もしい!」
「ところで、受付の者に聞きましたが、今回は食料とお金を所望とか?」
「ダメでしょうか?」
「いえいえ、とんでもございません。我々のギルドは、勇者様方、ひいては十三神様あってのものでございます。勇者様方のために出費を惜しんだりいたしません。」
「とりあえずこれをお渡しします」
言って、グランドはファンタジーでよく見るあの硬貨が入った袋を差し出してきた。
「すいません。助かります」
僕はとりあえず、先立つものは何とやらなのでそれを受け取った。これで、ギルドから勇者の仕事を依頼されたら、引き受けなければならない理由ができたな。などと思った。
「ところで、スドウ様は冒険者登録はなさいますか?様々な仕事や仲間を募ることができて便利だと思いますが」
なるほど、そういうこともあって、パウルはここに来させたのか。
「はい。行く当てもないので、しばらくは冒険者として生計を立てていこうと思います」
「勇者様であることは、お隠しになりますか?公言なさいますか?」
僕は少し迷ったが、あまり大っぴらに自分は勇者であるとは言いたくない。
「しばらく伏せておいていただけますか」
「かしこまりました。それでは、簡単な、検査をいたしますので、検査会場にご同行願います。冒険者のランクを決めるための検査でございます」
僕は、ちょっと考えたが。
「検査は受けてもいいですが、一番下のランクからお願いします」
「となるとカッパーでございますが、、」
「カッパーでいいです」
「そうですか。ではカッパーの冒険者証を用意いたします」
「検査は?」
「パウル様のお連れになられた勇者様を疑ってはございませんので」
「なるほど」
僕は、グランドから直接カッパーの冒険者証を受け取ると、今日はこれでということで、裏口から、こっそり、ギルド会館を後にした。
ギルドの口利きのある宿に行き、夕食を食べるとその日は寝た。
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