第6話 仕事しよ。と思ったら客待遇だった。

 僕とパウルは王都に来ていた。


 ヨハンとミツクニは王都近くまで一緒に来たのだが。ヨハンが「面倒なのは嫌いだ」とかなんとか言って、王都近くで別れた。


 王都は流石に人があふれていた。

 正門から大通りに入ったわけだが、門番は、僕一人の旅とみて、大仰にいちゃもんをつけに来たのだが、僕の隣で、パウルが大あくびすると、パウルを見た門番が、ぎょっして青い顔になり、深々と礼をし、いきなりうやうやしい態度になって、あっさり門を通された。

 さすがに王都の門番はパウルを知っていたらしい。

 パウルはとぼけた顔で、僕と目が合うとつまらなさそうに目を背けた。こうしていると毛並みのいい普通の猫にしか見えない。


 王都についたはいいものの、どちらにしろ何日かの滞在になるだろう、宿を探すべきか。路地裏に入って、パウロに聞いてみた。


「どうしよう。お金も食べ物もないよ」

「まずは冒険者ギルドに行こう」

「行ってどうするの?」

「行きゃわかる」



 僕とパウルは冒険者ギルドに訪れた。

ギギギ。と立派な木でできた扉を開ける。


「お邪魔します~」


 僕は、恐る恐る中に入り、あたりを見回した。

 入り口を入ると、大きなホールになっており、立ち話している男たち、何やら飲み食いしながら歓談している男達。いや、正確には女性もいるが。皆あまりお行儀がいいとは言えない、屈強の戦士たちのオーラを醸し出している。


 皆、一瞬扉から入ってきた僕を見たが、すぐに視線をよそにやり、おしゃべりやら食事やらに戻った。中には鼻で笑うような仕草をした者もいた。

 正面のカウンターまで進み。何やら新聞のようなものを読んでいる。腹の大きな親父に声をかけた。


「こんにちは!」


親父は、一瞬僕をねめつけると。


「入会は12歳から。ゴブリンの耳を3対持ってきた者のみ、試験を受ける権利をがある」

と、つまらなそうに言った。


「そんなことより。金と飯を頂戴」


「は?ボウズふざけてんのか?」


親父は呆けた表情で言った。突然のことで頭が回らなかったんだろう。

頭が回らなかったのは僕も同じで


「こら!パウル!何言ってんだ!」


「パウル……様……?」


親父はガバッと立ち上がり。カウンター越しに僕の足元を覗き込んだ。


「…………」


そしてしばらく、声を失って立ち尽くし、いきなり、甲高い声で


「これはこれは……オーナー!いらしてるんでしたら行ってくださればよいのに」

「さささ。こちらへどうぞこちらへどうぞ。これはこれは勇者様も、どうぞ、客間にギルドマスターをお連れしますから。どうぞどうぞ!」


と、何やらまくしたて、僕の背中を押して、僕たちは2回の客間に通された。


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