第3話 そうだ、王都に行こう。と思ったら勝負だとよ。

 僕と、神と名乗る猫は王都につながる街道を歩いている。

 どういうわけか、僕は気持ちも若いイケてる少年になったようで、向こうの世界ならとぼとぼ歩いていたはずなのに、腕を頭の後ろに組んで、余裕をもって意気揚々と歩いていた。


「だいぶ勇者が板についてきたじゃないか」


「そんなつもりはないって」


「そういえば自己紹介がまだだったね。私はこの世界の神。厳密には神々の一柱、猫の神のパウルと言います!」

「人前では猫のフリをするので、パウちゃん、でいいよ!神様をパウちゃん呼ばわりなんて、さすが勇者様!」


「呼ばないし勇者じゃないから」


「あら~。ツレナイなぁ。勇者様は……」


「…………」


「ところで、神々って何人ぐらいいるの?」


「神様は、『にん』じゃなくて『はしら』。まぁ十三柱だね」

「十三柱の十三勇者」


「ふぅ~ん」

「ところで神様なんだから、いきなりワープとか空を飛ぶとか、そういった移動手段はないの?」


「あるにはあるんだけど……」


「だけど?」


「それやっちゃうと味気なくない?」


「おい!」


 てへぺろ。しやがった。

なかなかお茶目な神である。


(まぁ、いいか。この体だと歩くのもなかなか悪くないし)


「僕なんかがいきなり王様に会いに行っても大丈夫なの?」


「私をだれだと思ってるんだね?どこへ行こうというんだね?」


 などとやっていると、向こうからすごい勢いで何かが近づいてくるのを感じた。


「お。感じたか」


「これやばくない?これが『善くないもの』ってやつ?」


「これは大丈夫。まぁ、ある意味よくないけど」


ザザザザザザ。ズシャーーーー。

と音がして、僕の目の前で何かがすごい勢いで停止した。


「おいおい。猫の勇者様って奴はこんなチンケなガキなのか?」


「お言いでないよ。ヨハン。チンケに見えても中身は中年の可能性もあるのだよ?」


「そりゃいい。本物のとっちゃんぼーやって奴か」


 ヨハンと呼ばれたのは、紫の長髪、皮のベストの下は何も来ておらず、逞しい筋肉があらわになっている。が、それより僕が気になったのが腕が四本あることだ。

まるで、神話の阿修羅のような体躯である。


 ヨハンに話しかけた主は。

 どう見ても……パグ?

 かわいい。


 ちょうど噂をしていた十三勇者の、おそらく、犬の勇者なのだろう。そして、あの可愛いのが犬の神。


「ツレが失礼したね。まろの名はミツクニ。そちらの我が勇者の名はヨハン。お察しだと思うが犬の神と犬の勇者であるぞえ」


 あるぞえ。って。パグがあるぞえ。って。ぼくは必死に笑いをこらえた。


「そこもとの名はなんと申す?」


「タケル。といいます」

「……よろしく」

 

「おぅ。タケル。勝負だ!!」

ヨハンと紹介された犬の勇者がいきなり拳を鳴らしてすごんできた。


「は?」

パケモンバトルでも挑んでるのかなぁ?


「勇者の序列はこれが一番手っとりばえぇ」

「俺は落ちこぼれの猫だのなんだの気にしねー」

「男と男。拳を交わせばわかりあえるってもんだ!」


「すまんの。まろの勇者はどうも血の気が多くての」


「ちなみに俺は世界中の格闘技を修めたものだ!!」


「そち。まだ修めておるまい?そちの世界の格闘技『は』あらかた修めたかもしれんがの」


「そうだ!俺は『世界の格闘技を修めるもの』だ!」

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