第2話

「あーきっら、ってまた書いてんの?」

「そうだよ、悪い?」

「うわっ、感じ悪! また行き詰まってんのかよ」


大学の図書室にて、友人である修二は僕の隣に腰かけた。あきらとは僕の名前で、漢字では晃と書く。ポジティブな印象を受ける名らしいのだが、僕は見事に正反対な性格になってしまった。

空きコマの時間を使って僕がしているのはレポートの作成でも、研究でもなく暇を持て余して惰性で書き続けている小説だった。

昔から本が好きだったことも影響し、こういった時間を利用してたまに書く。

別に本を出そうとか、売れようなんて気はなく、ただただ楽しいから書いている程度だった。

それでも物語が進まなければ腹も立つし、むしゃくしゃする。


「こんな感じでいいかな」


迷った挙句半ば諦めに似た気持ちで公開をクリックした。伸びをすると一気に体がほぐれてた。肩が重いし、頭も疲れた。

そんな僕を見て晃は肩に手を置いた。


「まあ元気出せよ、今日も行くんだろ?」

「もちろんだよ。ああ、もう待てない、行こう今から!」

「いやライブの時間まだだし、次の講義が」

「無理無理待てない! 今日はサボろう」

「はあ………」


そうと決まれば僕の足に迷いは無い。図書室を出て、駅まで早足で向かった。



※※※



朝から体調が悪い……

体がだるくて気分が乗らないような、曇り空の天候は余計に気分を下げさせる。


「今日、ライブなのにな」


夕方から始まるライブまでまだ少し時間はあるが、ゆっくりするほどの時間もなく、そろそろ準備をしないといけない。

何か面白いものとかあればいいんだけど。

そう逃げた先はスマートフォンだ。何も考えずに動画をスクロールしている時間が案外落ち着くこともあるし。

そうしてSNSを開いた時に、ピコンッと通知が一件。

私は飛びつくようにそれにタップする。


「やっと上がった」


開いたのはネット小説のページ。

更新順にされた小説の一部にドーナツさんの名前があった。

すぐにベッドから起き上がり、準備も程々にその小説を読んだ。

時間なんて気にも留めないで、ドーナツさんの世界へと飛び込むと、さっきまでのモヤモヤやだるさは一気に吹っ飛び、一気にやる気で満ちてくる。

不思議だ。ドーナツさんの小説には私への栄養素がたくさん入っている。

読み終わった時には既に家を出る時間を過ぎていた。


「やばっ」


さっさと準備を済ませ、冷めたコーヒーを一気に流し込む。

外に出ればまだ空は雲で覆われていて、でも私の気分はとても晴れやかなものだった。

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