第10話 五月の試練と生徒会、ステータスにニラレバ炒めを添えて

 次の日、朝から走っておりますと葵さんが合流して参りました。

 ダイエットには走るのが一番良いと感じております。なぜならば、肺の中の空気を入れ替えると共に、足の筋肉が鍛えられ、カロリーを消費するだけではなく副次的な効果も望めると考えるからです。もっともこれは私の持論ですが。

「実は相談があるんだけど、聞いてもらってもいい?」

 軽く走っておりますと、葵さんが神妙な表情でそう告げて参りました。おっとそれは、それは口説きテクではないでしょうか。わたくしに使う理由がわかりません。よって本当に相談なのでしょう。

「はい、なんでしょう?」

「もし幼馴染が二人いて、二人から好意を持たれていたら、寧々さんはどうする?」


 おっと――これは難しい問題ですね。走りながらでは失礼でしょうか。足並みを緩め、歩みへと変えるわたくしです。振り返り葵さんも止まります。葵さん、整った顔をしていらっしゃいます。所謂イケメンと申すものですね。キラキラしております。

 幼馴染のお二人が恋をするのも頷けると申しますもの。

「前置きとして、私の個人的な考えにございますが、よろしいですか?」

「うん。聞かせてよ」

「では失礼ながら。そうですね。大変難しい質問だと存じます。どちらか一方しか選べませんからね」

「……うーん。うんうん。そうかな? そうなのかなぁ?」

「二股はいけません」

「違うよ‼ 二人以外に好きな人がいる場合だってあるでしょ‼」

「それは失念しておりました。そうですね。その可能性もありますね。それを踏まえた上で、結論から申しまして、お二人共どちらとも付き合いません。これがわたくしの答えにございます」

「それはどうして?」

「片方と付き合えば、片方が潰れます。それは早めに出した方が良い答えなのかもしれません。ですがわたくしはあえて両方ともと付き合わない選択肢を取ると存じます。三人で過ごすうち、二人のどちらかに恋人ができた場合に、もう片方がまだ好きだった場合はもう片方と付き合います」

「そうなの?」

「はい。人の気持ちはそう簡単には変わりません。本当に好きなのであれば、何年でも待つものでしょう。それが本当に好きと存ずる気持ちです。それを踏まえた上で、お二人が気を使わぬようにしっかりと捕まえておくことが大切にございましょう」

「じゃあ、二人がずっと好きだったら?」

「その時は諦めて二人と関係を持ちましょう。これはもうどうしようもありません。三人で幸せになりましょう」

「えー……それでいいの? 二股じゃ……」

「こればかりはどうしようもありません。それに二股とは異なると存じます。双方が双方と睦み合い愛することを、三人で生きて行く事をご納得頂く。それが大事です。それに案外三人でも幸せかもしれません。法律では一夫一妻制ですが、現在は結婚せず傍にいると選択もございます」

「そう言う答えもありなのかもね。ありがとう。参考にするよ」

「はい。参考程度に聞き流して頂けければ幸いです」

「ちなみにだけど……他に好きな人がいる場合はどうする?」

「そうですね。それもまた難しい問題です」

 とりあえず告白してみてはいかがでしょうかと考えたけれど、それはさすがに安易すぎますので告げられませんでした。わたくしが学生の時は、お付き合い等は高校からちらほらと覗けるものにございました。昨今では小中学生からカップルも珍しくはないと存じます。それは時代の流れ。技術同様に時代の流れにございます。乗り越せない人間は取り残されてしまいます。それは仕方のない事なのかもしれませんね。わかります。

「それで?」

「そう……ですね。相手の気持ちを大事にするならば、自分の気持ちを疎かにして良い訳ではございません。そこは自分のお気持ちを大事になさって下さい。相手に遠慮してはいけません。人間関係における複雑な問題です。慎重に考えて行動するのが良いとは存じます」

「ふーん。そうなんだね。考えてくれてありがとう」

「すみません。その質問にはあまり良い答えを申し上げられませんね。誰かを大切にしたいのなら、その人の事だけを考えて、他が傷つくことを容認しなければいけません。非情な判断かと存じますが、それは必要な非情さです」

「そうだね。それも必要かもね。ちゃんと考えてくれて、嬉しいよ。ありがとう」

「ちなみにですがわたくしの母はダメですからね」

「なんで⁉」

「やはりそうなのですか」

「違うよ‼ なんで君のお母さんが好きの選択肢に入っているのかって話‼」

「そっちですか。違うのですか? 母に対して、やぶさかならぬ視線を感じておりましたのでてっきり」

「君が将来大人になったら、お母さんみたいになるのかなって思って見てただけだよ」

「ふふふっ。そうですね。ですがあれほどの魔性にはなれません。さすがに」

「やっぱり魔性なんだ」

「本人に自覚があるのか無いのかは別にございます。あっ妹様に手を出すのでしたら、しっかりと責任は取って下さいね」

「ださないよ⁉ なんでそうなるの⁉」

「妹様は世界一可愛いですからね。葵様が好まれても仕方がございません」

「僕にとっても可愛い妹みたいなものだよ」

「これは……そうですか。ライバルですね」

「なんで⁉」

「同じ妹を愛する者同士、ここは譲れません」

「シスコン過ぎる‼」


 葵さんはとてもおモテになるご様子。身長も私より10cmほど高いように存じます。

 幼馴染お二人の苦難が続きそうです。この様子では告白の一つや二つ等、珍しくはないでしょう。今世においてもソロでいそうなわたくしです。心に冷や汗が参ります。わかります。

「ふふふっ」

 なんでしょう。パーソナルスペースに大幅に食い込んでおられます。近すぎますね。わかりません。お触りはNGです。わたくし、こう窺えましてお高くとまっております。

 お家まで送る旨を告げる葵さんを頑なに断り、お家へと帰ります。


 お家へ帰りましたらシャワーで汗を流し、朝の支度を済ませます。何時も通りをこなします。猫のように母と妹に体を擦り付け覚醒して頂きます。眠そうな眼にございます。お二人の手を取りひたすらにリップ音を響かせます。

「マジきもい‼」

 こう致しますと妹様は飛び起きますので有効打です。お試しあれ。

 身支度朝食を済ませ、学校へ向かう時間にございます。

 たっぷりの栄養と睡眠、それにたっぷりの愛情で華麗に咲いて下さいね。花開く事こそ女性としての誉れだと存じます。ふふーん。

 さて母と妹と腕を組み、学校へと向かうわたくしです。

「あのさ……さすがに恥ずかしいんだけど」

「家族ではないですか?」

 妹様の頬に唇を寄せる私です。

「ちょっと‼」

「妹を愛でるのも姉の役目と存じます」

「存じますじゃないわよ」

「えー? お母さんはー?」

 母の頬にも唇を寄せる私です。

「きもっ。マザコン」

「安心して下さい。シスコンも混ざっております」

「マジきもい‼」

「やーん」

 シスコンでマザコンなわたくしにございます。


 学校へ到着致しますと、なぜだか生徒会へ呼び出しを受けました。放送で呼び出すとは無粋なお方達。ホームルームに食い込んでおりますが生徒会が優先されました。仕方ありません。この学園の生徒会は先生より権力ありますので。

 先生にも行けと顎で指示を受けました。

 なぜだか嫌な予感が致しますね。ふふーん――よろしくてよ。この荒波、乗りこなしてみせましょう。膝が震えますね。わかります。

 生徒会の人物に対して実は寧々はあまり好かれる方ではございません。

 生徒会長及び副生徒会長は、ネームドキャラ、所謂ビッグネームでございます。しかしながら寧々と恋人になれる可能性は皆無です。好感度がマイナス二千ぐらいあります。まず好かれません。友好度が低いわけではありませんので、嫌われているわけではございません。


 他のキャラであってもこのお二方と恋人になるにはかなりの苦行がございます。

 生徒会室に到着しドアをノックする私です。

「どうぞ」

 扉を開けて中へと参りますと真っ先に目を引くのが生徒会長ネフェルト・イヌビス様にございます。

 黒髪、褐色の肌、薄着、胸元からへそが露出しております。猫のような瞳が印象的で、ゲーム内でも大変人気のある方にございます。

 そして離れた席で紅茶を嗜んでおられますのが副生徒会長のマリアンヌ・イヴ様にございます。

 ふわふわクリーム色の髪、おっとりとした垂れ目、白い手袋と、それに違わぬ白い肌をお持ちです。何よりも豊満なバストが瞳を引きます。困りましたね。


 彼女と対自する時、胸元に視線がゆかぬように気を付けなければいけません。それを交渉の材料にしている節もございます。引っ掛かりません。引っ掛かります。わかりません。

「失礼致します。一年F組、月見寧々です」

「あらいらっしゃーい」

「入りなよ」

 実は二人共、婚約者がいらっしゃいます。この二人と生涯を共にしたいと考えた場合、婚約者より簒奪しなければなりません。それが好感度マイナス二千の理由にございます。

 大変難しい苦行にございます。学生時代の積極的な交友はもちろんの事、社会人になってからも積極的な交流を考えなければなりません。

 残念ながらそれ以外の一切の方法がございませんでした。現実になりますと、どうなることやら不安です。


 婚約者は常に優先されますし、婚約者のスペックはかなり高い設定にございました。

 さらに婚約者から簒奪した場合、彼女達は家から勘当されてしまいます。祝福されない結婚に加えて、親からの圧力を受けて貧乏暮らしを強いられます。所謂、結婚式バーンにございます。誓いの口付けの際に扉をバーンします。ガチです。

 それでも愛があれば……と綴られるのがお二人のルートとなっております。

 ちなみにこの二人を同時に攻略するのはゲーム上では不可能でございました。

「急に悪かったね。呼び出して」

「いいえ、こちらこそ、お二人に出会えるなど光栄に存じます。御用とは何でございましょうか」

「ふむ。そうだね。そんなに時間もないし早速本題に入ろうか」

「まぁそう急いてはいけません。紅茶など一杯如何ですか?」


 ゴクリ――私は紅茶には詳しくない女。コーヒー派でございます。

「頂いてもよろしいですか?」

「ではどうぞ」

 ソファーに腰を下ろしカップが差し出されます。実は作法はございます。ですがわたくし、あえて作法は無視します。だってお嬢様ではございませんので。

 コーヒー派です。

 通ぶってアラビカ種よりカネフォラ種が好きだと公言してしまうわたくしです。

 実際はどちらか判別もできません。


 カップを手に取り一口を傾けます。

 コクリと一口。

 余韻を一口。

 淡い吐息を一口。

 鼻に漏れるニオイは香ばしく。

 うーん。紅茶の味ですね。それ以外の感想がございません。

「結構なお手前で」

「ふふふっ。どうです? 美味しいですか?」

「申し訳ございません。わたくし、紅茶の味はご存じではございません。この紅茶が市販の紅茶なのか、それともお高い紅茶なのか、それすら判別しかねます」

「うふふっ。正直なのね。ちなみに市販の紅茶です。あっ別に意地悪しているわけじゃないのよ? 実は私、この国の市販の紅茶が好きなの。実家から贈られるものはどうも独特の癖があってね」

「そうなのですね」


 歩み来る会長の手にあるものが視界へ入ります。

 ゴトリとテーブルへと置かれたのは何処かで出会った事のあるような無いような品物にございました。動揺が隠せませんね。ふっふふーん。

 七百万で手放したはずの黒曜石の短刀が目の前にございます。

「君がこれを入手した事は知っている」

「そうなのですか」

「我々はここ数日、君が入手したと思われる迷宮で調査を行ったのだが、何も出てこなかった。何もだ」

「そうなのですか」

「君はこれを……これをどうやって入手したのかな?」

「私にはわかりかねます。何かの間違えではないでしょうか?」

 にっこりと笑みを浮かべるわたくしです。シラを切り通します。面倒なので。

「ふーん……誤魔化すんだね」

「何か、勘違いをしていらっしゃるのではないでしょうか?」

「証拠はあるんだけどね」

「それはおかしいですね」

「なぜだい?」

「わたくしでは無いからです」


 証拠があっても関係ございません。引っ掛かりません。機関から裏を取る以外に確かめる方法はございません。そして証拠を提示すればそれは機関が情報を漏洩した事となります。機関はそれを絶対に認めません。認めれば大問題です。ですので生徒会長様がいくら証拠があると申しましても、それを確かめる確かな証拠にはなり得ないのです。

「あくまでシラを切るつもりかい?」

「シラを切るも何もございません。わたくしではございません」

「そうかい。あくまでも自分では無いと言い張るのだね」

「自分ではございません」


 お二人もこれ以上は追及できないはずです。機関員から話を聞いたとおっしゃってしまえば、機関が責を負う事となります。リルさんは懲戒解雇の上、罰金でしょうか。

 機関の信用を損なったと訴えられればそれなりの額を要求されます。

 大事になるのは避けたいはずです。お二人共立場がございますからね。

「そうかい。君とはわかりあえると感じたんだけどね。そうかいそうかい。わかったよ。ありがとう。話はそれだけだ」

 おっとこれは卑怯な台詞ですね。わかります。焦って引き留めたくなるテクニックにございますか。それにしてもこうして近くで眺めますと、可愛すぎませんか。このような方を抱きしめられるのなら、そう妄想せずにはいられません。

「あら、わたくしはまだお話が終わっておりません」


 おっと――今度はマリアンヌさんですか。

 ふふーん。よろしくてよ。何がよろしいのか、わかりませんね。わかります。

「わたくしはそんな野暮な事は申しませんわ。もしあなたがこれと同じようなアイテムを運良く入手しましたのなら、優先的に譲って欲しいのです。もちろんお金はお支払い致しますわ」


 なるほど。マリアンヌ副生徒会長様は刑事で申しますところのバディのようですね。お優しい方を演じていらっしゃるのです。わかります。

「そうですね。もし入手できましたのならぜひにと存じます。先輩方、大変失礼かと存じますが、あえて申し上げます。わたくしを買って下さり誠にありがとうございます。しかし残念ながらわたくしでは力量不足と存じます。わたくしは一年生の……ましてやFクラスの生徒です。偉大な先輩方であるお二方に買って頂けるほどの能力がございません。こうしてお二人とお会いできお話する事ですら恐れ多い事にございます。なにとぞご容赦下さいませ」

「今日は急に呼び立てて申し訳なかった。もう用事は終わった」

「はい。では失礼させて頂きます」

「貴方……寧々さんだったかしら?」

「はい。月見寧々と申します」

「連絡先を交換致しませんか?」

「なに⁉ じゃあオレも」

 これは断れませんね。人として。断ったらさすがにお二人に失礼です。

「できれば……お断りしたいのですが」

 ですが断ります。理由はございます。

「なに⁉」

「なぜなの⁉」

「先ほども申し上げました通り、わたくしは一年生のFクラスに所属しております。お二方は学校のツートップ。トップの中におけるトップの方々に存じます。わたくし如きがおいそれと近づいて良い存在ではございません。どうか、どうか平にご容赦下さい。申し訳ございません。伏して伏して申し上げます」

 大変失礼な事には変わりがございませんので土下座の構えで応戦させて頂きます。一年生でしかもFクラスのわたくしが生徒会のお二人と仲が良い等と噂されれば、袋叩きにされるでしょう。この手に限ります。


 残念ながら好感度はマイナス二千。あの乳の魔力はわたくしであっても耐えがたいものがございます。視線が泳がぬうちに退散するわたくしです。

 教室に戻りますとホームルームは終わっておりました。一時限までの僅かな時間です。姫結良さんが傍へと参りました。なぜ生徒会に呼び出されたのか、根ほり葉ほりと疑問を投げかけられました。言い訳を考えるのがなかなかに辛いですね。

 間違えであった旨を、懇切丁寧に伝えるわたくしです。


 そのうちなぜか姫結良さんの話が脱線してゆきます。恋する乙女のようですね。青い、青いです。一限目が始まりましたので、先生が参りますと同時に解散です。

 サクラの青葉が風に凪、散り逝く初心染め切なさよ。去りし君にと求めては。後を塗るのはただ花ばかり。窓の外では桜が散り始めております。

 皆さん思春期であるご様子。恋の季節ですね。

 ここらでポエムでも嗜むのがよろしいかと存じましたが死にたくなりました。

 ふふっ。目を伏せてしまいます。はじゅかしいです。死にたい。


 姫結良さんも何かお悩みがあるご様子。好きな方がいらっしゃるのかもしれませんね。微笑ましいです。ポエムは忘れて下さい。帰りに大きなポリバケツを買って帰ろうかと考えている私です。

 また次の休み時間になりますと姫結良さんが参りました。

「知ってっか? AB型の男子って結婚率が低いんだってよ」

 あっ。その話題ですとわたくしは即死です。

 AB型男子月見寧々身長165cm。

「そうなのですね。私はAB型です」

「ふーん。ところでよー身長170無い男子って恋愛対象になりにくいんだってよ」

 だから即死です。やめてください。死んでしまいます。

 来世に期待していたところに存じます。んんんんん。来世でもダメそうなわたくしです。

「男子の好かれない髪型ランキングが」

「それ以上はやめてください死んでしまいます」

 長髪です。決して不潔にはしておりません。断固として申し上げておきます。


 ただ……ただこう申しますのも難ではございますが、わたくしと致しましては鏡を眺めるだけで十分に満足にございます。寧々が可愛いので。とにかく可愛いので。あと体がエッチです。寧々さんは女性と見間違うほどの体型をしております。程よい肉付きです。ついております。エッチです。私が男でも襲いたいレベルにはエッチです。誰にもお見せは致しませんけれども。この肉体を眺めるだけで頬は染まり、深い息が漏れる私です。それに加えましてこの桃の香り。解れればさぞニオイ立つでしょうね。ダメです。許しません。そんなエッチなのは許しません。くんずほぐれつなんて私が許しても天が許しません。


 午後からは迷宮へと参ります。

 今日は【河童】の相手をするわたくしです。

 河辺に参りましたら鏡から棍棒を取り出しエンカウント致します。【赤鬼】さんが使っていらっしゃった厳つい棍棒ですね。わかります。

 モンスター【河童】さんが相手です。頭のお皿が光っております。攻撃は飛びつきです。手の爪で引っ掻いて参ります。服が破けそうですね。困ります。

 固有スキルは【水癒し】、【指水】、【石切】の三つです。皿をポカポカと殴る私です。飛び付き引っ掻きをかわし、ひたすら皿をポカポカ叩きます。


 おっとバックステップしましたね。そのモーションから繰り出されるのは【指水(しすい)】です。わかります。指の間にある幕に水を溜め、投げつけて繰り出す所謂ウォーターボールです。

 飛んでくる【指水】をポカポカ殴り落す私です。若干の圧がありますね。さすがです。

「ぐっぐわあああ‼」

 仲間を呼びましたか。それで駆けつけてくれる仲間がいらっしゃる事に感動を覚えます。私にはおりませんので。悲しくなって参りました。責任を取って下さい。


 新手を【ショットガン:石礫】で吹き飛ばします。

「ぐっぐわわわあああ⁉ ぐわわああ⁉」

 そう混乱なさらないでください。貴方には使いませんので。

 早く【水癒し】を使うのです。ポカポカ殴る私です。

 おっとまた下がりましたね。今度のモーションは【石切】ですか。川底から石を拾うモーションにございます。横から円を描き投げるモーションが様になっておりますね。わかります。放たれた石が水を切り地面を切り迫ります。地面も跳ねます。わかります。地面も切ります。わかりません。

 ジャストミート。棍棒で防げましたが棍棒が折れてしまいました。さすがです。

「ぐわっはっはっ‼」


 モンスター【河童】さん。そんなにお喜びになって。ですが大丈夫です。安心なさって下さい。後四十五本あります。折れた棍棒をほかり、鏡から新たに棍棒を取り出す私です。

「ぐっぐわああああああ⁉」

 そんなの嬉しいのですか。わたくしも嬉しいです。

 まだまだ終わりませんよ。肉薄しポカポカ殴る私です。

 その後【水癒し】を使用致しましたのでお礼を述べ、【ショットガン:石礫】でお吹き飛ばしさせて頂きました。

「ぐぇええええええええ‼」

 可憐な断末魔です。最後まで手を抜かないその姿勢、さすがです。

 残念ながらブラッドストーンは賜り頂けませんでした。

 モンスターブックに情報が記載されて参ります。

 では早速……河童が絶滅するまで絞りましょうか。


 三十六体まで数えていた所――人が参りましたので退避致しますわたくしです。

 残念ながらブラッドストーンは落ちてはございません。この【河童】さんから落ちるブラッドストーンは【石切】のスキルです。複合スキル【ロングレンジ:石切礫】はなかなかにお使えできるスキルにございます。【ショットガン:石切礫】は狭い洞窟などでは無類の強さを誇ります。跳弾致します。ガチです。ちょっつよにございます。

 パーティーが【河童】さんを狩り始めました。今日はもう【河童】さんの相手はできないかもしれません。残念ですね。吹き飛ばし足りません。

 カードを眺め時間を確認する私です。時刻は午後十五時を回っておりました。頃合いかもしれません。母を迎えにゆく時間です。帰りましょう。


 帰りがてらに宝箱を漁る私です。

 三つの宝箱から【アロマピーチ】の小瓶が二つ。【メノウ】を一つ頂戴致しました。

 武器【木の弓】や【ナイフ】も入っておりましたが、高い値段の可能性が微レ存ですので後続の方に御譲り致します。盗賊としての教示ですね。わかります。

 迷宮【コトアマツ】の浅い層には【木葉】と呼ばれるレアな短剣が稀に出土する可能性がございます。低レベル帯に置いて有用な武器となっております。

 スキル【木葉舞】は木葉が舞い散り多段攻撃するスキルにございます。


 ほどほどで迷宮を後にする私です。

 列車に乗りながらカードで競売を眺めポチポチ――【河童】のブラッドストーンは十二万で取引されております。なかなかに高いご様子。強くなるためには即ポチ案件なのですが、十二万はさすがに手が震えてしまいます。なんとか自力で入手できたとして、十二万円を自らに使えるでしょうか。不安です。


 実は【モンスターテイカー】が得るスキルで合体するには条件がございます。

 ブラッドストーンで獲得したスキルでなければ合成はできません。

 遅かれ早かれ使わなければならない。自分にそう言い聞かせるわたくしです。

 ちなみに短剣【木葉】は百二十万円で最終落札がございました。確率から申し上げればかなり低いと認識しております。これは入手困難かもしれませんね。

 とりあえず、ブラッドストーン【石切】をポチる私です。


 ソロでの活動はなかなかに厳しいもの。仲間を引きつれた方々が、お金目当てにモンスターを乱獲致しますので、狩場を占拠されたり、独占されたりとなかなかに荒れます。

 この先クランなんかも続々と台頭するでしょう。

 私は人と争うのがそれほど好きな方ではございませんので、なるべく避けたい所存にございます。

 早々に十層へ赴き、迷宮【コトアマツ】における初ボス【山本五郎左衛門】と対自するのが良いかもしれませんね。ストレスフリーです。わかります。


 迷宮【イザナギ】を検索――六名ですか。深く息を吐くわたくしです。生徒会の見張りでしょうか。瞳を伏せてしまいますね。観光や見学に訪れる方もいらっしゃいますので一概に見張りとは申せませんけれど、独占できると考えていた自分に嫌気がさします。

 ……実は【裏イザナミ】に入るのには特殊な条件が必要にございます。その条件を満たすのはなかなかに難しいもの。

 その条件とは生き返らせたいと願うほどの身近な者の死にございます。恋人、親、兄弟、親しい方が亡くなっていなければ、【裏イザナミ】へはご入場頂けません。

 生き返らせたいと願うほどの強い願望が無ければ、【裏イザナミ】へはご入場頂けないのです。

 寧々は本来の寧々を身代わりとして失っております。十分に条件を満たしているわけです。寧々は本来の寧々を何時も憂いている設定でございました。サツキ自身も寧々を大切に考えておりましたので。

 私にはそのような気持ちは沸き上がりませんが、サツキの気持ちを鑑みれば、メインストーリーへの関与もやぶさかではありません。母の事もございます。致さなければならないでしょう。悩ましいですね。わかります。


 五月になりましたので最初の試練がございます。

 本日生徒会会長様や副会長様のお二人に提案された問題が沈静化するまではレベル上げに専念するほうが良いのかもしれません。

 もう十分に対応できるレベルですが備えあれば憂いなし、備えあれば憂いがございません。目立たぬように気を付けましょうとも心に誓う、そんなわたくしにございます。


 そう考えていた時期が私にもありました。

 五月に入りましてしばらく――何時の間にか最初の試練が終わっておりました。

 何をおっしゃっているのか理解できないかもしれません。私もできません。終わっておりました。まったくの蚊帳の外。蚊帳の外にございました。

 まず何からご説明致しましょうか。


 まずは三度目の【生贄の夜】がやって参りました。

 今回は【ロングレンジ:石切礫】がありますので、遠くから妨害致します。この複合スキル【ロングレンジ:石切礫】はなんと空気を切ります。空気を切り跳弾致します。命中率に補正が加わり、無数に跳ねながら進みますので弾道が予測されにくいです。やったぜ。つまるところ弾道からこちらの位置が予測致しにくいです。やったぜ。その代わり現在の威力はお察しです。弱いです。

 最後までじっくり嫌がらせをさせて頂きました。最後の方では皆さんどうも怒っていらっしゃるご様子で、どうなさったのでございましょうか。卑怯だの。姿を見せろだの。武器なんか捨ててかかってこいだの。言いたい放題にございました。傷付きました。ひどいです。やめませんけど。

 幸いな事に女の子は無事です。やりましたね。ガッツポーズが盛れる私です。


 さて日も進み次の試練が訪れます。忙しいですね。

 なんとその試練とは、Bクラスに難癖をつけられて調子に乗っていると決闘を申し込まれる試練となっております。初見ですとまず勝てません。団体戦ですので、自分が勝ち得ても他の方が勝てません。負けますとこれでもかと足蹴にされます。ぐぬぬぬと奥歯と唇を噛み耐え抜かなければいけません。

 イベント通りであれば、Eクラスの生徒がBクラスの生徒に絡まれ、その場で暴力等の仕打ちを受けたのち、仲裁が入り改めて決闘と形を変えて進行していくものなのでございますが、絡まれた古午房さんが相手を負かし仲裁後の決闘で姫結良さん、パメラさん、古村崎さんが勝ち星を挙げて終了致しました。

 皆さん容赦のなさ、自重なさらない所、私とは違います。さすがです。

 あれれ。わたくしは……。あれれ。わたくしは一体。眺めているだけで何もできませんでした。びっくりするぐらい何もできませんでした。わたくし必要ですか。必要ではないですか。そうですか。あれれれれ。


 後方有識者面で決闘を眺めておりました所存にございます。

 姫結良さんのモナドは意外ですが魔術系のようでした。【エレスタ(エレメンタルスター)】かもしれません。NPCとしての姫結良さんのモナドは【侍】です。

 モナド【エレメンタルスター】は属性特化の魔術職にございます。

 魔術職における対人の極意は初級魔術と中級魔術がカギを握っております。

 開始の合図と共に魔術の応酬が始まります。わかります。

「ファイアーボム、ウォーターボール、サンダー、ストーンウォール、エレメンタルスタンス」

「ウォーターボール‼ ストーンウォール‼ きゃあっ‼ サッサンダー‼」

 スキル【エレメンタルスタンス】が入りました。

 姫結良さんの圧勝でございますね。

 スキル【エレメンタルスタンス】とは同系統の魔術を連続で発動する場合のデュレイが増える代わりに別系統の初級魔術が即座に発動できるようになります。効果時間は十秒です。


 この【エレメンタルスタンス】における初級魔術の連鎖により正直に申し上げて上級魔術や大魔法を唱えている時間が無くなります。限られた空間、必要最低限で良いのです。

 通常は二系統までを無効化、耐性ならば二系統まで六十%を確保できますので、この辺りを調整し戦略として練り込み戦うものでございます。相手の系統を見極めてからの魔術【エレメンタルチェンジ】により耐性を変化させます。こう窺えましてかなり高度な戦いとなります。呪文は必ず口頭で唱えなければなりません。呪文の応酬の中で無効化する魔術を決め、ダメージを受ける事を前提と致しまして、強力な中級魔術を発動させてごっそりと削り取るのが主流にございます。相手の攻めはころころ変わりますし、無効化や耐性もころころ変わりますので、応酬による応酬となります。

 魔術は種類がとにかく多いですし覚えるだけでも一苦労です。

 攻撃魔術と防御魔術の応酬はまさにチェスや詰め将棋の如く、しかも数秒で判断し決めなければなりません。極めた者同士の戦いはまさに芸術の如く。魔術だけが舞います。

 姫結良さんレベルとなりますと、生徒会長レベルでございましょうか。


 次いで古村崎さんです。古村崎さんのモナドは【侍】のようです。

 侍にはいくつか種類がございます。古村崎さんが選んだのはその中でも攻撃に特化した【阿修羅】と呼ばれる【侍】のようですね。さすがです。

 習得方法に癖があるモナド【侍】において、もっとも習得が困難となりますのがこのモナド【阿修羅】です。


 機関構内に存在する特殊空間【古びたお堂】へ辿りつき、堂内にある不動明王像と向き合い座禅し三日瞑想にふける事でモナド【侍】を獲得できます。

 そこからさらに一週間座禅を組み、瞑想し続けることでこの特殊モナド【阿修羅】の習得が可能となっております。苦行です。ゲーム上では楽ですが古村崎さんは実際に行ったご様子でした。中断できません。何を申しているのやらと申しますが中断できません。中断致しますと最初からとなります。苦行です。

 通りでここ最近お見掛けしなかった次第にございます。

 モナド【阿修羅】は攻撃特化で防御スキルが一切ございません。

 自力で攻撃を避け続けなければならない過酷なモナドです。


 その習得を成しえた胆力、胸の奥を熱くせずにはいられません。

 モナド【阿修羅】は刀と拳を使うモナドです。【無明菊一文字】に執着した理由も窺えます。

 スキル【辻斬り一刀】からの【殺撃七連】。これが非常に強力で神を除いて大体のボスをツーパンできます。

 さらに【菊一文字】には裏の顔がございまして、使い込むと【無明一刀】を開花できます。

 この抜刀スキル【無明一刀】がまた強力なスキルにございます。【阿修羅】であれば大体のボスをワンパンで倒せてしまいます。

 相手の方が不憫でなりません。決闘開始直後、顔面にワンパンを入れられ沈んでしまいました。後ろへ倒れると共に体がバウンド致しました。回復班早く癒してあげて。


 パメラさんは【パペットマイスター】のようですね。

 モナド、【パペットマイスター】は所謂人形師にございます。パメラさんはNPCだと回復を担当してくださる僧侶系に所属しているはずでございますが、【パペットマイスター】ですか、素敵ですね。造形に詳しくなければ成し得ないモナドです。


 美酒美麗で可憐な少女が鎮座しております。

 モナド、【パペットマイスター】は人形を自分で造形できます。人型、獣型、何でもありです。そしてパペットは装備ができます。人の代わりに装備し、装備スキルや固有モナドを駆使して戦うモナドとなります。しかしながら自分には戦闘スキルが一切ございません。戦えないわけではありませんので自身が後衛を、パペットを前衛として戦うのが基本となります。


 モナド、【パペットマイスター】の本領は二十歳を越えてから。二十歳を越えてからにございます。銃の免許を習得してからが本番です。

 それでもレベチ(レベルが違う)ですね。

「行け‼ アマリリス‼」

 パペットへのダメージは本体には一切影響がございません。


 装備もそれなりをそろえておられるご様子。さすがです。

 金剛鎧一式にダイヤモンドソード、盾はエリシオンですか……。ヴァルキリースタイルですね。さすがです。ヴァルキリースタイルは剣と盾を主流にした攻防に優れたスタイルにございます。となりますとパペットのモナドは魔装師でしょうか。手堅いですね。


 盾【エリシオン】は迷宮【ルシフェル】五層の徘徊型ボス堕天使エリシオンが所持している盾にございます。ドロップ率がかなり渋いのですが、随分頑張ったご様子。エリシオンであれば、レベル五十までは余裕でいけます。

 物理攻撃カット率95%、衝撃吸収率65%と圧倒的な物理アドバンテージがございます。とは申しましても盾で受けなければカットされません。力+12も付随しております。


 この物語(ゲーム)、実は盾がかなり重要な位置を占めております。その重要性を理解していらっしゃるとは、パメラさん、さすがです。

 盾では力の値と器用の値がかなり重要なステータス位置を占めております。自分で盾を使用するのであればセンスも必要です。

 ゲームAI(人工知能プログラム)における盾使用センスに置きまして、まずミスはございません。つまり盾を持ったAIはベラボーにお強いです。


 古午房さんはモナド【哪吒】のようですね。

 モナド【阿修羅】と双璧を成す攻撃特化職です。さすがです。

 スキル【乾坤圏(けんこんけん)】、【混天綾(こてんりょう)】【火突槍(かせんそう)】、【風火二輪(ふうかにりん)】は強力なスキルにございます。使うまでもないようですが。……なぜブローヴアクスを使用しているのかは不明でございます。

 装備から身元が割れてしまいますよ。

 まぁ……相性はグンバツにございますが。

 モナドに対して皆さんあまり装備がそろっておりませんが、それでも今のAクラスすら圧倒するほどの強さを備えております。さすがです。


 それに引き換えわたくしときたら……私、大丈夫でしょうか。全然物語に絡めておりません。おかしいですね。プレイヤーですのに。

 そうしてイベントが終了し、古午房さん、古村崎さん、パメラさん、姫結良さんは昇級するかDクラスですがクラス皆さんで昇級するか決断を迫られましたみたいです。

 古午房さん、パメラさんはBクラスへ昇級する選択をなさったようですね。英断です。Fクラスは待遇が悪いですからね。わかります。


 古村崎さんと姫結良さんは辞退なさったようです。

 なぜでしょうか。

 古村崎さんは【無明菊一文字】を所持していらっしゃいませんので迷っているのかもしれません。姫結良さんは細かい事は気にしないタイプのようです。


 アイテム【無明菊一文字】は確かに優秀ですが、他にも同列な刀は幾つもございます。

 それほど愛着がある――のでございましょうか。そのあたりを知りたければ、本人に伺うしかございませんね。

 話しは逸れますが古村崎さんを眺めていて感じたのですが、どうも顔色が優れないご様子。あれは貧血の症状とお見受け致します。

 貧血はわたくしにとって友のようなもの。苦しみ分かち合うものですが、あれは少々違うように存じます。


 あの独特の青白い顔。【吸血人形アンニョイちゃん】を所有しているのは古村崎さんなのかもしれません。あれは想像以上に厄介な品物。わたくしでも扱いには少々困りかねます。それを踏まえても破格の性能にございますが。


 皆さん通常では得られないモナドを取得していらっしゃったり、それを惜しげもなく披露なさったり、わたくしには到底できません。感服するばかりにございます。しっかりと自身の固有潜在能力(アビリティ)やステータスについて考慮なさっているようですね。さすがです。


 ところで今日の夕食はレバニラ炒めに致しましょうか。わかります。

 母様、妹様には健康であって欲しいもの。そう願うわたくしです。


 モナド【哪吒】で思い出したのですが、迷宮【蟠桃会(ばんとうえ)】と称されるものがございます。隣の国に鎮座しておりますミラージュパレスにございます。その迷宮ではアイテム【仙桃】が得られます。これが大変貴重な品物となっております。

 隣国でも大変貴重とされ、出土したのは後にも先にも一度きりと設定がございました。

 通常ではこの国で【仙桃】を得られる方法はございません。

 しかしながらさすがは日ノ本の国――あらゆるものを受け入れてきた甲斐がありましたね。なんと迷宮【花果山】が存在致します。分体ではございますが、この日ノ本においても西遊記は大変人気ですからね。その影響とお見受け致します。

 向かうとしたら一年後でしょうか。準備がそろっていなければ普通に亡くなります。マジです。殺されます。桃のように甘くありません。

 今からでも【仙桃】に思いを馳せる――わたくしです。


 ウィヴィーさんとお昼を共にするようになり、はや数日、なぜか姫結良さんが加わり、なぜか古村崎さんもおります。なぜでしょうか。

 姫結良さん――大変人気になっております。

 古村崎さんも生徒会へ声をかけられております。

 お二人の将来は安泰かもしれません。


 そして最底辺であるわたくしは、人気の高いお二人より仲良くされている事情もあり、イジメられるようになりました。悲しいですね。

 学校へ参りますと下駄箱にチョコレートが入っておりました。なぜチョコレートなのでしょうか。隣にいらっしゃるウィヴィーさんを眺めます。

「最近、調子乗ってるかなって思って」

 犯人は隣にいらっしゃるウィヴィーさんのようですね。ひどいです。傷付きました。

「犯人は貴方ですか。いけません。下駄箱にチョコレートなど」

「変な物いれたら傷つくかなって思って」

「ただでさえお金が無いのに、こんな無駄遣いをして」

「正直死活問題だよ‼」

「何をしていらっしゃるのか、ほんとに。お昼分けてあげますから、ちゃんと食べてくださいね」

「うぅー……好き」

 下駄箱にチョコレートを入れられるイジメを受けている私です。

 実際問題ウィヴィーさんが矢面に立ち私にイジメをしている体で他の方からの嫌がらせを防いでいらっしゃるらしいです。本人が語っておりました。

 自作自演ではない――と信じたいわたくしです。


 五月になるまでにわたくしのスキルは以下の通りになりました。

 まず【河童】のブラッドストーン【石切】はご存じの通り買いました。値段のつり上がりにより約二十万の出費でしたが時間と費用対効果を考えれば妥当と存じます。

 次に五層へ渡り【絡新婦】と【馬骨】をモンスターブックにコンプリート。

 モンスター【絡新婦】のスキル【切花】は切断効果のある糸を飛ばしたり設置したりする有能なスキルです。ブラッドストーンを獲得できれば良いのですがそんなわけには参りませんでした。【馬骨】さんは特に特出して述べるスキルがございません……。ごめんなさい【馬骨】さん。


 主要攻撃スキルのレベルは以下の通り。

 スキル【ガンズ:石切礫】Lv13中3

 スキル【ショットガン:石切礫】Lv13中13。

 スキル【ロングレンジ:石切礫】Lv13中11。

 モナド【モンスターテイカー】のレベルは17です。

 ベースレベルは21となりました。

 モンスター【赤鬼】さんと【河童】さんを絞った甲斐がありましたね。わかります。


 筋力11。器用21。速度30。精神力31+8=39。知能21。運53。魅力88+12=100。

 現在のわたくしのステータスはこの通りです。この後の全てのステータスポイントは精神力へと振らせて頂きます。初期割り振りは44でしたね。例に漏れません。

 本来は魅力に振るつもりはございませんでしたが、リリスの瞳を使ってしまった手前、利用しないわけにはいきません。仕方がありませんね。えぇ、仕方がございません。

 これにより――筋力11+40=51。器用21+40=61。速度30+40=70。精神力39。知能21。運53。魅力100+150=250。になっております。ステータスだけはかなりおつおいですね。わかります。【リリスの瞳】が如何にチートなのかが窺えます。


 力等は99が上限ですが、クオリティブレイクをすれば150までは上昇できます。

 クオリティブレイクは所謂限界突破です。

 例えレベルをカンストさせても全ての素のステータスをカンストすることは実質的にはほぼ不可能となります。それは本人の肉体的資質によるものです。

 例えば寧々であれば力は67が上限です。99まで上昇できません。上限解放込みでこの数値です。


 他各キャラクターにも限界が存在致します。

 例えば古村崎さんなら87まで上昇できますし、古午房さんなら150まで上昇できます。この差は相手にとってはかなりアドバンテージ、こちらにとってはディスアドバンテージとなります。その代わりに古村崎さんは速さをカンストできますし、古午房さんは器用さが極端に低いです。


 寧々の場合、体格が恵まれておりませんから、こればかりはどうにもなりません。その他にも速さや器用さにも大幅な制限が設定されております。

 その代わりに寧々は【人間強度マイナス五℃】と呼ばれる精神力に特殊な構造を有し無限に精神力を増大させられます。この【人間強度マイナス五℃】があるおかげで精神力に限り上限がございません。

 200だろうが300だろうが永久に上昇できます。9999まで上昇します。もしかしたらそれ以上もありえるかもしれませんね。私は8796までしか確認しておりません。

 ちなみにステータスに限界は生じてもレベルに限界はございません。レベルはいくつでも上昇できます。9999ぐらいまでは上昇するのではないでしょうか。そこまでレベルを上昇させるのには天文学的な経験値が必要ですのでまず無理ですが。

 正直に申し上げてこれらはゲームデーターをぶっこ抜いて細かく精査しなければ確認できない情報です。ご存じの方は早々おられません。おられるとしたら同じくデーターをぶっこ抜いた方か、原作者の方のみです。

 このような情報をネット等で開示すれば訴えられまし情報はすぐに削除されます。

 それゆえにまず出回りません。


 モナドステータス、装備による付加ステータスに上限はございません。加算されてゆきます。HPの類は一切ございません。

 他のステータスに関しては加算されるほどに人間から逸脱した動きができるようになります。

 スキルによるMPのような消費ポイントも一切表示がございませんでした。私が感じていないだけで本来は存在するのかもしれませんね。要検証だと存じます。

 体感と致しましては、攻撃を受けると徐々に体が重くなって参ります。そしてスキルを使用しておりますと、体の中が軽くなるような感覚が致します。

 もしかしたら魔術とは異なるのかもしれませんね。


 体が軽く、お腹辺りと集中力がずっしりと重い。これが健康な状態にございます。

 体が重く、お腹の辺りと集中力が軽く散漫である。これが体力の無い、魔力等の無い状態だと存じます。

 自己治癒能力が存在し、MPこと仮にEP(エーテルポイントと呼びます)の二つは時間経過と共に回復するようでございます。


 そしてこれが一番重要なのでございますが、モナドステータスは通常、迷宮以外では付与されません。つまりモナドによるステータス加算やスキルを迷宮外で使用する事はできません。

 しかしながら――ベースレベル、そしてステータス、又装備等の効果は迷宮外でも適応されます。

 困りましたね。そのため機関は装備に関して厳しい規定を設けていらっしゃるようです。わかります。力を手に入れた人間は何でも自分の思い通りにしようとします。海外ではすでにそのような犯罪者集団は存在しており、日ノ本でも発生なさるでしょう。

 サブストーリーで存在致します。

 わたくしも低層の敵であるならば【ショットガン:石切礫】で大体吹き飛ばせますし、ぅわっようじょつおい状態にございます。私は幼女ではございませんが。それがどれだけ人間から逸脱しているのか、ひしひしと肌で感じるわたくしにございます。


 さて全てを話し終えた所で今日の夕食です。

 ニラレバ炒めでございます。

 わたくし、レバーにはなかなかうるさい女。ではございませんが、誠心誠意作らせて頂きました。レバーで大切なのは下ごしらえにございます。下味をしっかりと添えて、片栗粉で閉じ込めます。レバーだけでは無くハラミ等も加えます。

 レバーを炒める際は火の通しすぎを避け、味は特性の甘辛ダレに七味唐辛子とニンニクをコレでもかとか投入致します。

 付け合わせはモヤシとニラ、ミョウガを少々。

 最後に人類共通の敵、胡麻油をタラリと一回し致します。

 わたくし特製のレバニラ炒めにございます。


 レバーは独特の臭みだけではなく、食感も忌諱される問題にございます。ハラミ等を加える事により、箸を向けるのを躊躇わせない工夫をしております。

 くくくっ。抗えまい。このスタミナ満天料理に。

 おっと失礼致しました。

 ふふーん。よくってよ。このスタミナ満天料理に抗っても。

 そして母様と妹様がお腹いっぱいになる様子を眺めるわたくしです。

 白米が進みますね。

「ほらっほっぺについていらっしゃいますよ」

 ペロリと妹様の頬を舐める私です。

「ちょっと‼ やめてよ‼」

 可愛いですね。最高です。

「はい、お母さんあーん」

「あーん」

 母に手ずから料理を差し出す私です。

「うーん……おいひいわ。うーん白米が足りない」

 はーい。おかわりお持ちします。


 くくくっ。これで五月からも頑張るがよい。

 おっと失礼致しました。

 ふふふっ。これで五月からも頑張ってよろしくてよ。

「五月も家族で乗り切りましょうね」

 妹様のほっぺに唇を寄せる私です。

「お姉ちゃん‼ やめてよ‼ ほんとに‼」

 もー……恥ずかしがっちゃって。そうは語りつつ避けない妹様が可愛くて仕方がありません。ついでに母の頬にも唇を寄せる私です。

「お姉ちゃん‼ もうほんとそれもやめて‼ おかーさん‼ この人マジキモイ‼」

「お姉ちゃんにこの人とは何ですか? それにお母さんは何時でもウェルカムよ‼」

「ダメだこの母親……私がしっかりしないと」

 はぁ……仲良し三姉妹(?)。これからも頑張ります。

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