第2話 片想い

 今日はバンドメンバーと共にライブハウスに出演した。

 アニソン及びメタルのカバーを披露したら観客が喜び、ライブハウスが熱気に包まれる。

 うわぁぁ~、凄いっ!

 めっちゃ盛り上がってる!


 けど今アタシたちが演奏しているのは偉大なアーティストたちの楽曲だ。

 アタシたちは偉人たちの楽曲をカバーしてるだけ。

 オーディエンスが盛り上がりを見せても素直に喜べなかった。


 そして、いよいよ最後はアタシたちが作ったオリジナルソングを披露した。

 オリジナルソングを披露するのは本当に怖かった。

 だってこれを受け入れてもらえなかったら、アタシたちのバンドが否定されたも同然だもん。


 バンドメンバーとたくさん悩んだり相談したりして作成した思い出の一曲。

 アタシたちの手で1から作り出したんだ。これが受け入れられなかったら結構きついね……。

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!」


 アタシたちが作成したオリジナルソングを聴き、観客が盛り上がってくれた。

 よしっ、盛り上がってる!!

 オーディエンスの盛り上がりを見ていると、まるでアタシたちが一流のアーティストになったような気分になる。 

 

 やっぱりライブは最高だねっ。楽しすぎてやめられないよっ。


 終盤になり、ギターソロのパートに突入した。

 アタシは丁寧にギターを奏でていく。

 

 高度なギターテクニックをミスなく披露し、更にライブハウスは盛り上がる。

 今日のためにこのギターソロをたくさん練習した。

 アタシ、ライブの経験が浅いから失敗するかも、と思ってたけど、無事ミスなくギターソロを弾き終えた。

 良かった、ちゃんと練習の成果を発揮できたよ。


 無事ライブが終わり、アタシたちは近くの飲食店で打ち上げをした。

 今日は本当に楽しかったな~。ギター続けてて本当に良かった。


 他のバンド目的でライブハウスに足を運んだ人たちも、アタシたちのライブを見てファンになってくれた。

 SNSのフォロワーもたくさん増えたし、アタシたちのオリジナルソングが入ったCDも売れた。

 

 えへへ、凄く嬉しい。


 欲を言えばライブハウスで活躍してるアタシを、和樹くんに見てもらいたかった。

 アタシのギターテクニックをたくさん褒めてもらいたかったな……。


 実は和樹くんに『今度ライブやるから観に来てよ』と誘ってみたんだけど、

 その日は用事があるから、と断られた。

 残念だな……。



「おい、涼花。ちょっといいか?」


 打ち上げが終わったあと、バンドメンバーの有馬くんに呼び出された。

 有馬くん、アタシに話があるんだって。

 

「なぁ涼花……お前って彼氏いるのか?」

「え? 急になに?」

「いいから答えてくれ。今彼氏いんのか?」

「いや、いないけど」

「なら俺たち付き合わないか?」


 有馬くんの言葉に思わず「え?」と間抜けな声を漏らす。

 これって告白だよね?


 困惑しているアタシを無視して、彼は話を続ける。


「俺さ、前から涼花のこと気になってたんだ。だから俺と付き合ってくれないか?」

「……」


 バンドメンバーの有馬くんに告白された。

 有馬くんはアタシが所属してるバンドのベースを担当してるの。

 

 有馬くんはイケメンで、面白くて、ベースの技術も凄いからSNSで結構人気あるんだよ。

 そんな凄い人に告白されちゃった。

 

 有馬くん、アタシのこと好きだったんだ。

 まぁそんな気はしてたけど。

 有馬くんがアタシのこと好きなのは前から気づいてたんだ。

 この人、結構わかりやすいしね。

 

 けどまさか今日告白してくるとは思わなかったよ。

 

 あっ、もちろん告白自体は凄く嬉しいよ?

 けど今のアタシには好きな人がいる。

 好きな人の名前は佐藤和樹。

 お姉ちゃんの彼氏だ。


 アタシは和樹くんのことが好き。

 和樹くんがお姉ちゃんと付き合ってることは知ってるよ? それでも、アタシはあの人のことが大好きなの。

 だから有馬くんの告白に良い返事はできないよ……。


「ごめん、有馬くん……。あなたとは付き合えない」

「っ……」


 アタシがそう言うと、有馬くんはショックを受けていた。

 え? めっちゃショック受けてる。

 もしかして自信あったのかな……?


「なんで俺じゃダメなの?」

「……アタシね、好きな人がいるんだ」

「好きな人? ソイツは俺より良い男なのか?」

「うん、そうだよ」


 そう即答すると有馬くんは「そっか……」と悲しそうに返事した。


「涼花……好きな人いたんだ。なら諦めるよっ」

「ごめんね、有馬くん」

「謝らないでくれ。別に気にしてないから……。こっちこそ急に告白して悪かったな」

「ううん、別にいいよ。告白は凄く嬉しかったから」

「そっか」

「うん」






















 ◇◇◇




 打ち上げが終わり、アタシは自宅に帰ってきた。

 「ただいま」と言ってみたけど返事がない。

 誰も家にいないのかな?


「んっんっ……」


 突如、リビングから女性の甘い声が聞こえてきた。

 その声はお姉ちゃんの声に酷似していた。

 リビングにお姉ちゃんいるのかな?

 何してるんだろう?


 気になったアタシはリビングに移動する。

 そっとリビングの中を覗くと、裸のお姉ちゃんと和樹くんがいた。

 え? なんで二人とも裸なの……?

 意味わかんないんだけど。


 裸のお姉ちゃんは和樹くんの体に跨がり、激しく体を動かしていた。

 お姉ちゃんは恍惚な表情を浮かべ、とても幸せそうだった。

 和樹くんも気持ちよさそうな顔を浮かべていた。

 

「和樹っ……気持ちいい?」

「ああ、最高に気持ちいいよ、優菜っ」

「えへへ、そっか。んっんっ……アタシも凄く気持ちいいよ、和樹ぃ」



 お姉ちゃんと和樹くんの行為を見て、ギュッと胸が締め付けられる。

 嫉妬で狂ってしまいそうだった。


 お姉ちゃん、いつも和樹くんとあんなことしてるんだっ。

 羨ましいっ、羨ましすぎるよっ。


 アタシも和樹くんとああいうことしたいよっ。

 たくさん和樹くんに求められたいよっ。

 

 和樹くんと手を繋ぎたい。

 ハグしたい。

 キスもしたい。

 エッチなこともたくさんしたい。

 『好き』と愛を囁いてもらいたい。

 たくさん和樹くんと思い出を作りたいっ。

 けど和樹くんはお姉ちゃんと付き合ってる。

 どんなに努力しても和樹くんはアタシに振り向いてくれない。

 それが悲しくて、自然と涙が溢れてきてた。

 涙のせいで視界が濁っていく。


 どうしてっ。

 どうしてお姉ちゃんなのっ。

 アタシのこと選んでよっ。

 アタシの方が和樹くんのこと好きなのにっ。

 世界で一番あなたのこと愛してるのにっ。


 アタシはスカートの中に手を突っ込む。

 イチャイチャしている二人を見ながら自分を慰め始める。


「んっんっ……」


 指を動かすと身体中に電流が走る。

 自然と「んっんっ」と蕩けた声が漏れる。


 こんなことしてるのに、お姉ちゃんと和樹くんは全くアタシに気づいてなかった。

 アタシのことなど気にせず、今も二人は激しい行為を楽しんでいる。

 

 そんな二人の行為を見ながら自分を慰め続ける。


 最近、こういうことばっかりしてるような気がする。

 昨日も和樹くんのこと想いながらシちゃったし……。


 これ凄く気持ちいいけど、やっぱり一人でするのは寂しいよっ。

 和樹くんとこういうことしたいのにっ……。


 お姉ちゃん、本当に羨ましいな……。

 

 

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